【冷やしコタツ誕生秘話】この暑いのにコタツをだしている本屋があるらしい。 ー話題の冷やしコタツこうして生まれたー《スタッフ山中のつぶやき》
「あ、ないんですね」
はじめキラキラとしていた彼女の瞳は、そのとたん少し曇ったようだった
「ま。そりゃあそうですよね。」
そう、そりゃあそうなのである。
ただでさえ変なことばかりしているこの書店でも、さすがにそこまで非常識ではない。
だって、外をみれば太陽がこれでもかとギラギラと輝いているし
室内にずっといる私たちスタッフでさえ少し汗ばむくらいなのだ
アイスコーヒーはいくら作ってもいつの間にかなくなってしまうし
しまいには店内の氷も底をついて、近くのミニストップまで買いに行かなくてはいけないほどである
そう、季節は夏。2014年。天狼院にとって初めて向かえる暑い季節。
インテリアの配置をちょくちょくかえている天狼院ではあるが、
その時の店内には明らかに”あいつ”が欠けていた
「冬になったらまた出す予定なので、楽しみにされてください」
もう何回こうお客様に説明したことだろう。だって、しょうがないじゃないか。
今は夏なのだから。
”あいつ”がいたはずのスペースには3畳分の畳が敷かれ、
その上にはあの結構な存在感の堕落するソファ(通称 人をダメにするソファ)が2つも置かれていた。
冷静に考えればこの様子だって、本屋ではあり得ない状況である。
しかし、それ以上に ”あいつ” がいないことが店内をどことなく物足りない雰囲気にさせていた
確かに、天狼院は”あいつ”のおかげで有名になった。これはまぎれもない事実である。
オープン当初はこれが大きな話題となり、”あいつ”目的で天狼院を訪れるお客様がほとんどであったという
「え!本屋に!なんで!」という意外性
「実家にいるみたい」という安心感
イベントなど様々な新しいことに挑戦していく一方で、書店としてお客様にゆっくりしてほしいという天狼院の2つの思いの象徴として、多くの方に愛されていた”あいつ”
でも、しょうがない。
今は夏なのだから。”あいつ”を出したとこで活躍できる訳が無い。
しかし、そうは言っても来店するお客様は次々にこうたずねてくる
「”コタツ”って本当にあるんですか?」
いやいや、ちょっとまってくれ。
気温は裕に30度を超えている。
この暑い日が連日続いているというのに”コタツ”を出す?
いくら「コタツのある書店」で有名な天狼院と言えど、そこまではできない。
お客様がこの暑いのにコタツにはいって体調を崩されたら大変だし
コタツのために店内の温度をクーラーで下げてしまっては他の方が凍えてしまうではないか
「たぶん10月とか、少し涼しくなったら出す予定です」
せっかく来ていただいたのに申し訳ないな という気持ちを持ちつつも、
お客様に対してはこう答えるより他なかった。そんな2014年7月、8月天狼院は
夏 という大きなカベにぶつかっていた。
しかし、9月に入り、店主の三浦はいきなりこう切り出した
「9月って、あれだよね、秋だよね。ということはコタツの季節だ!コタツ出そう!こたつ!」
その場にいた誰もが 「はい?」と耳を疑った。
素直というか。単純というか。確かに9月と言えば秋の初まりのように聞こえる。
しかし、実際はまだまだあっつい、あっつい時期である。実際私もその時ノースリーブを着ていたし。三浦自身だって、半袖のポロシャツを着て、額に汗をにじませていた。
「出すって言ったって、この暑いのに誰が入るんですか」
「いいよ!なんかいつもお客さんに聞かれるんだもん!とりあえず出しちゃおう!」
と、なんだかんだ言っても店主の言うことには従わなくては。そんなわけでコタツは復活することとなった。
しかし、復活から3日。
あれほど、お問い合わせがあったのにも関わらず、やはり利用する人はいない。
逆に訪れた人たちもその季節外れな様子に驚き「この暑いのにコタツがあるんですね~」と遠目から眺める始末。もはやコタツ展示場状態。
コタツの所に人が行かない分、店内の利用できる席数が少なくなってしまっていた。
さてさてどうしたものか。
「やっぱり、しまった方がいいんじゃないですか?」
こたつ復活から4日目、三浦に私はこう切り出してみた。しかし
三浦「だめだよー。今日確かテレビの取材くるもん。きっとこたつがあった方が喜ぶよ」
あぁまたこのパターンだ。テレビの取材?聞いてない!
おかげさまで天狼院は様々なメディアに取り上げていただいているのだが、店主の三浦はこの取材日程をスタッフにあまり教えてくれない。決して秘密にされているわけではなく、ただただ、忙しくてスタッフに伝えることを忘れてしまうらしいのだ。もうこんなサプライズは慣れっこである。
「えー!そうなんですか!」
「そう、◯◯テレビ!あのアナウンサーの人も来るみたいだよ!すごいよねー!」
と、さらっと某有名局の名前と、某有名アナウンサーの名前をいってのける。
確かに、これは多くの方が見てくれそうである。
「それはこたつがあった方が話題性もあって良いだろうけど…」
「うーん。こたつが冷やせればなぁ」
ん?冷やす?
もうあと10分ほどで取材が来るという中、私たちはレジのあるカウンターを一斉に覗き込んだ。
そこには、冷やしの秘密が隠れていたのである。
「こいつだ!!」
カウンターの中には、一台のサーキュレーター(扇風機)が置かれていた。
窓を開けても風があまりこないカウンター周りは、温度が高くなりやすい。サーキュレーター(扇風機)通常そこで多くの作業をするスタッフのために夏の初めに置かれたものだった。
「これを中に入れればいいんじゃない?」
「確かに!無いよりは、あった方が良さそう!とりあえず取材の間だけでも入れときましょう!」
取材開始5分前
”冷やしコタツ”が誕生した瞬間だった。
ー2時間後ー
無事取材を終え、一安心。しかし、冷やしコタツに2時間はいっていた三浦は
どこか様子がおかしい。
「どうしよう、凄い冷えた。寒いくらい。」
最初は多忙すぎて、ついに風邪でもひいたのかと思った。しかし、どうも違うらしい。
「冷やしコタツ凄いよ!なっちゃんもはいってみな!」
いやいや、扇風機がコタツの中でまわったところでそこまで?大げさだなぁ。
しかし、その顔は嘘はついているようには見えない。というか三浦は「僕、嘘はつかないから」が口癖であるほどに。嘘はつかない。冗談も言わない。
半信半疑、おそるおそる冷やしコタツを初体験してみる。
「わ!」おもわず声が漏れた。
なんだこれ、涼しい!
コタツの中でサーキュレーター(扇風機)をつけただけのそれは、なんとも言えない心地よい涼しさであった。
ちょっとした思いつきで生まれた冷やしコタツ。どうやら結構な発明であるらしい。
風が外に出て行かずなかでぐるぐるとまわることで心地よい涼しさが全体に広がる。
たしかにこれに2時間も入っていたら凍えてしまうのもわかる。冷やしコタツ恐るべし!!
「いちよう冷やしてるし、”冷やしコタツ” ってことでいいかな?」
この日から
”冷やし中華はじめました”さながらに
”冷やしコタツ”が天狼院の新たなサービスとしてはじまったのであった。
やってみて初めてわかる。挑戦することで新たな発見がある。
ひょんなことから開発された冷やしコタツ。
今年も大活躍の予感である。
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