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ネット社会の今、新しく本屋をつくる意味ってなんだろう?~池袋駅前店潜入レポート~


本屋は街から消えてしまうのだろか?


「君の街から、本屋が消えたら大変だ!」

そう書かれた雑誌が先月、本屋に並びました。みなさんご覧になりましたか?

『Popeye 2017年9月号(マガジンハウス)』です。

 

私は京都・祇園の小さな書店で働いています。

本屋が直面している状況を雑誌で大きく特集されるのは、注目してもらえると嬉しい反面、中身を見ると少しがっかりました。

だって、本屋が悲惨なのは避けられないと思ったから

紙面では、著名人がお気に入りや想い出の本屋を紹介したり個性的な本屋を紹介したりしているほかに、街の本屋の存続に向けた様々な取り組みが載っていました。子どもをターゲットにした本屋で読み聞かせをしたり、企業とタッグを組んで本屋を復活させたり。

でも、その本屋を支えているのは、低賃金アルバイトだったりボランティアだったり、いわゆる奉仕の心で成り立っていたんです!

裏を返せば、本屋はビジネスとして破綻しているということ。収入が少なくてもやりたいことをする生活を選ぶ人は最近増えていると思うし、そうやって本屋を開店してくれるならば本好きとしてはめちゃくちゃ嬉しいのだけど、これは永続的でないと思いました。

儲からない本屋を、誰が新しく作るんでしょう?

「お金なんていらない! 本に囲まれているだけで私の人生は幸せなんだ!」っていう、本と結婚する意志がないと無理な気がします(そういう人生に憧れたりする自分はいますが……)。

たとえ雑誌で本屋の現状を伝えて、読者の認識が変わったとしても、それは一時的なもので「本屋がつぶれる」という運命を変えるには、本屋や出版業界の努力が必要かと思います。

 

 

本で儲けるのはムズカシイ


『Popeye』を読んだ時の気持ちは、ずーーーっと私の中でくすぶっていました。

「なんで私は大好きな本たちを救えないの!?」「ネットも生活に欠かせないけど、本だってこんなに素敵な出会いがあるんだよっ!」「でも電気書籍もAmazonもついつい使っちゃうもんなあ」などと、街の本屋を元気にしたい想いと社会の流れに抗うことのできない無力さに茫然としました。

 

本屋のビジネスって考えれば考えるほど、問題だらけでした。

まず、本の粗利って、驚くほど低いんですよね。だから、相当な数を売らないと儲けにならない。とは言いつつも、この粗利のおかげで全国津々浦々にいろいろな本が出回るようになったので、一概に悪いとも言えないんですが、でも本屋さんとしてはやはり厳しい。

そして、ネットの台頭で、書籍を読むにしても本屋で買う人が減りました。いつでもどこでも買えるっていうのは、誰がどう考えても便利ですよね。

日本の人口も減っています。本は一家に一冊だから、人口が減っちゃうと必然的に本を買う人も減ると思います。

 

そう、本屋の未来は八方塞がりなんです。

ここまで悲惨な状況だと、本屋が消えるのは当たり前のことで、本屋をオープンするほうが頭がオカシイ

 

そんなことを考えている私のもとに、東京・池袋に新しく本屋がオープンするとの情報を得ました。

私が働いている本屋の第4店舗目でした。その名も、天狼院書店・池袋駅前店。

新店舗オープンの話を聞いて、素直に気になりました。「消えゆく書店業界で、なぜ本屋を新しくつくるのだろう?」と。そして、「東京天狼院がある池袋になぜつくったのか」と。

 

オープンから1か月を過ぎてもやっぱり、私はその理由が気になってしまったので、東京天狼院・池袋駅前店を訪れて、実際に働いてみました!

実際に働いてみると、天狼院店主・三浦とはまた違った視点で、書店の在り方を見直すことができたんです。

いわゆる、新しいビジネスモデルというものでしょうか。

天狼院店主目線の池袋駅前店の様子は、こちらからご覧ください。

【解答編】天狼院書店「池袋駅前店」店長に任命された川代 紗生は、どこに立っているのか? 8月26日にオープンを控えた彼女の職場は、いったい、どこなのか?

 

池袋駅前店は、一見すると普通の店舗だった!?


池袋駅前店は、池袋駅から徒歩2分ほど。開業3年を迎えた駅前商業施設「WACCA池袋」の2階にあります。

東京天狼院にたどり着くまでに迷った身からすると、なんと駅近なのかと感動!!!

 

WACCA入口エスカレーターを上がると、どどんっ! 天狼院書店・池袋駅前店の登場です!

木の温かみが感じられる、木目を基調とした雰囲気の店舗です。

 

蔵書数は天狼院系列では一番多いのではないでしょうか。

とはいえ、大型書店さんの足元にも及ばない限られたスペースなので、基本的には書店員のオススメ本が置いてあります

書店員さんに「この本に出合ったから書店員になった」なんて言われたら、気にななっちゃってその本を買うしかないですよねー。(わたしはまんまと買ってしまいましたっ! そして、その本はめちゃくちゃ面白かった!!!)

天狼院ならではの、読んだ際の効用を元に本をお勧めする「よみぐすり」やタイトル・内容は秘密で面白さは自信を持って保証する「秘本」、書店がつくる新しい雑誌「READING LIFE」なども、もちろん置いてありますよ~。

「よみぐすり」は店舗で少し違いがあるので、他の店舗を訪れたことのある人はその違いを楽しむのも一興かなあと思います!

さてさて、池袋駅前店と京都天狼院との違いを発見してニヤニヤするばかりでなく、ちゃんと仕事もしますよ。入荷したての本を並べたり、お客様に本をご紹介したり、ポップを書いたり。

(店舗に急に訪れたのに対応してくださった、川代店長には頭が上がりません……。ありがたや~~)

 

でも、この店舗の様子ってふっつーの書店なんですよね。どこにでもある一般的な書店と何ら変わらない。

書店員のおすすめ本が多いとか、秘本があるとか、ポップが多めとか、他の書店と小さな違いはあれども、画期的な販促活動をやっているわけではありませんでした。

 

では、何故新しい店舗をオープンしたのでしょうか?

先ほど述べたように、平凡な本屋をオープンさせても消えるのが運命ですからね。何か秘策がないと意味がない。

そして、その秘策を知るには、どうやら店頭だけを見ていても意味はないようです。

 

 

“つながる”本屋という一手


池袋駅前店をよくよく観察していると、他の書店と比べて圧倒的に「つながる」本屋ということが分かってきました。

そもそも天狼院書店は、本の先にある体験(READING LIFE)までも提供する書店として、本を通して様々なイベントを行っているのですが、他の天狼院書店以上に「つながり」を感じたんです。

んんっ? お客様が何とつながるのか?

紐解いていきましょう。

 

お客様と本のつながり

店頭に訪れて綺麗に並べられた本から、気になる本を取り、自由に眺めるという行為は、本屋の特権だと思います。ネットの世界では出合えない本に間違いなく合えます。

池袋駅前店の書店員さんのポップは、パンチがあったり味があったりしていて、読んでいて面白かったです!

きっとこれは、書店員さんがたくさんの本を死に物狂いで読んで、その中でも本当に面白いと思ったものだけを並べているからだと思います。

お客様に面白い本に出合ってほしい、自分が読んだときの感動を伝えたい、その一点だけだと思います。

自分が面白いと思ったものって、全力で恥を捨ててまで人に勧めたくなりますもんね。

圧倒的に本が読みたくなる、知らない世界に触れられる、池袋駅前店はそんな場所です。

 

お客様同士あるいはスタッフとのつながり

天狼院書店は、店頭でスタッフがお客様とお話したり、多種多様なイベントを開催しています。

そういうことがあって、イベントを通してお客様のつながりができたり、スタッフとの距離が近いんですよね。天狼院に行くだけで、どんどんと新しいつながりが出来ていくんです。

職場や学校以外で、見ず知らずの人とつながる機会って貴重だと思いませんか?

さらに池袋駅前店は、東京2店舗目で横断的なイベントが開催できると思います。東京天狼院と連携したイベントや、商業施設に入ったことで生まれる本にとどまらないイベントなどです。

また従来の店舗は、天狼院主催のイベントを店内で行っています。しかし、池袋駅前店は、WACCA内にあるイベントスペースを使用しており、天狼院だけではなくWACCAに寄った方に、天狼院のことを知ってもらえ、興味を持ってもらえ、そうして天狼院を軸にした輪が広がっていくのです。

 

 

お客様と作家さんのつながり

作家さんって、すんごい雲の上の存在だって思いませんか?

私もそう思っていたし、実際に私はまだまだ足元に及ばないのですが、でも池袋駅前店を体験すると、お会いすることって意外とできるんだなあと思いました。

池袋駅前店は、間違いなく作家さんとのつながりが大きいんです!

 

まずはこれを見てください、じゃん!

これ、作家さんの直筆ポップなんです。こういうのが、書店員のポップに紛れて置かれているのが、池袋駅前店です。

すごすぎっ! めっちゃ贅沢!

作家さん自らの押しポイントが書かれていて、「作家さんはこういうことを考えているんだなあ」と本以外のことが知れるんですよね。「こんな字を書くんだあ」と思ったりも。

 

池袋駅前店オープン記念パーティには、作家さんや編集者さんが多数ご参加くださったようです。

あっ、これ、非公式のパーティじゃないですよ。お客様も参加できるパーティだったんです。

ってことは、ホンモノに会えるやん、ひえぇ。

 

そして、右上に見える透明の小部屋。

なんとこれ、〆切部屋といって、締め切り前の作家さんをカンヅメにするための部屋らしい。

なんじゃこれ~! 本当に外から丸見え! 好き放題作家さんを眺められる!!!

頑張っている作家さんの姿を見たり、将来手元の本の原稿がここで書かれたのかと思うと、なんだかワクワクしませんか?

作家さんとの出会いが未来までつながっていくんですよね!

 

極めつけは、作家さんのご来店~!

私が伺った日に、某ベストセラー作家さんがご来店し、本を購入していただきました。

トークショーとかじゃないですよ? Tシャツでふらーっと気軽に作家さんがいらっしゃったんです!

まっまじで、何者なんだ、池袋駅前店!!!!

こういうことが起こるのも、池袋駅前店ならではなんじゃないでしょうか?

 

いろんなところで、いろんな人とつながれる本屋、なんてすごいんだ……。

ありきたりの本屋じゃ絶対にありえない体験だ……。

 

この「つながる」という体験はなにものにも代えがたく、この付加価値が天狼院の躍進を支えているのだと思います。

ネット社会では、情報につながることはできても、リアルな体験としてのつながりは皆無ですもんねっ!

いやあ、この技は本屋にしかできねぇわ。

 


実際に訪れてこそ分かってきた、池袋駅前店が開店した意味。

本を愛し、本に助けられた人だからこそ考えられる、本を中心としたサービスをより多くの人に体験してもらうために、新店舗を開店したのかなあと思いました。

そして、そこには本を売るだけでないREADING LIFEや、そこから派生した「つながり」をサービスとして付与することで、本屋や出版業界に一石を投じていると思いました。

家でのんびり読書してるだけじゃもったいない! 引きこもってると機会損失がデカすぎ!

 

みなさまも是非、天狼院・池袋駅前店に足をお運びください!

ほんと、本屋って楽しいですよ~~~!

 

文責:飛田弥咲(京都天狼院スタッフ)

 

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2017-10-07 | Posted in お知らせ, 体験記, 記事

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