踊ってきた。
記事:西澤譲(ライティング・ラボ)
「当選のご連絡」
帰宅途中、スマホにこんなメールが届いていた。すぐに心当たりはなく、いつもの迷惑メールの類かと思いつつ開いてみた。イベント参加の当選通知だった。
動画サイトに素人による「踊ってみた」というジャンルがある。10代20代の女性が、1人で自宅にカメラをセットして、リズムよく踊って、投稿している。それを小さな液晶画面で見ているだけで、うれしい。
最近、思春期の娘をぼけっと見るだけで、「ナニっ?」って怒られる位なのだから、安心して一人で癒されている。
その踊り手さんの中に昔からファンの人がいる。踊りにブレがなく、情感もある。月並みな表現だが上手なのだ。
抽選ながら参加費無料で、彼女たちが出演して振付けを教えてくれて、みんなで踊ろうという企画らしい。
「直接見られる!」
ただそれだけの理由で、僕は参加に応募した。
当たるとは期待していなかったし、正直、その日の朝も前日のお酒が残っていたので、家でゴロゴロしてようかとさえ思った。
開場30分前に、豊洲PITに着くと、事前にメールに書いてあった整理番号別に2百名ほどが並んでいた。
予想はしていたが、みんな若い。自分の子どもくらいの年齢層が大半なのではないかと錯覚してしまう。ドイツからまた来たという女性もいる。同世代と思しき一人の男性は、茶髪でサーファー風。年齢的には不詳ながら、コスプレイヤーも目を引く。
抽選で集まったはずなのに、会話が盛り上がっているグループがそこかしこに。
「ここは、本当に踊りが好きな人たちのお祭りなのだ!」
若干、自分に場違い感を覚えつつも、これから5時間ほど居ることになる涼しい会場に入った。
ステージには、自分がファンのその踊り手さんの他、その動画サイトで有名な方たちが10名ほど並ばれ、5メートルくらいの至近距離から直接お目にかかることができた。写真はダメとのことでそれは少し残念だが、そもそもいつでも動画で見られるのだ。今日の一部始終もそう。初期の目的は果たされた。よし。
課題曲以外にも、8曲ほど順番に曲が紹介され、中央に集まり踊った。みんなすごいね。
でも、感動は、思いがけないところから湧いてきた。
課題曲は、初音ミクの「神曲」。一通り振付けを教わり、みんなで踊る前に、全員おそろいの黄色いTシャツが配られ、文字通り会場は黄色一色になった。
「さあ、ステージを背にして、後ろのカメラで撮りますよ。映る範囲から外れてしまうので、この角度の中にもっと集まって!」
わずか数回のリハーサルだ。
「右、右、左、左、クルっ!」
♪私はこんなもので救われるの、で・す・か・ら!♪
「ごめんなさい!アタシ間違っちゃうので、あんまり参考にしないでください。」
3,4人前の多分高校生の女の子が、周りの人に謝っている。
「いいのに…」と思わずにいられない。
秀才君風の男の子の踊りもキレがハンパない。
となりのメタボさんも、動きを外していない。
あれれ、周りのみんな、ちゃんと曲に体がシンクロしている!!
その踊り手さん見たさにポチっと参加した安易な私だったが、その時は自分の置かれた状況に無我夢中だった。こんなハズではなかった。
手を挙げる時は挙げ、回るときは回る!
微妙にテンポは遅れつつも必死になった。
「2回を1回しかくるっとしなかった。」
「そこは右手だったぁ」
「あ’’-、何か阿波踊りになっている、、、!?」
「はい、終了です!」
4百人が心を一つにした動画の撮影が完了した。
その中にボクもいた。
周りの人みんなの顔が輝いている。
振り返ってステージの上の、伝説の踊り手さんみんなの顔も、とても眩しい。
これは、当選という偶然がくれたギフト。
次に、もし当選できたら、一曲でもしっかり覚えて、みんなと踊りたい!!!
とさえ思ってしまった。
感動は、待っているだけでは来てくれない。
天狼院の年間パスポートが先日届いた。
自分の意志で「買ってみた。」
***
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