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ボランティアでキャバ嬢をやるハメになる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:伊藤 千里(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
どういうわけか、よくボランティアでキャバ嬢をやるハメになります。
 
ボランティアでキャバ嬢をやるまでの過程はいつもだいたい同じです。
 
私はよく、イベントやカフェで男性から声をかけられます。私は決して、美人だとか、話がそれほど上手というわけではありません。私の何が良くて声をかけようと思ったのかいつも不思議なのですが、特に年上の男性から声をかけてもらうことが多いです。
 
その後、飲みや食事に誘われ、LINEで日々のちょっとしたことのやりとりをするようになります。
 
問題はここからです。
それは、何度かお会いした後やラインでのやりとりが続くようになると必ず発生するのです。
 
まず、びっくりするくらい大量にメッセージや写真が届くようになります。さらに、そのメッセージに内容がほとんどないのです。
 
「今日は、○○というお店に行って、ジャンボパフェを食べました」
「会社の飲み会で飲みすぎたー。いまから帰宅」
「さっき電車で寝落ちして、最寄り駅を乗り過ごしちゃった」
 
過去に一度、ご自宅で焼きそばを作っている過程をワンカットずつ写真で送ってこられた方もいらっしゃいました。
私を、インスタか何かと勘違いされているのでしょうか?
 
また、何度か食事に行くと、みんな申し合わせたように同じ行動をとるようになります。
最初は、私の知らない世界や仕事の話をするのですが、それは聞いていてすごく楽しいです。
でも、何度も会っていると、仕事のグチや社会情勢に対する批判など、聞いていて面白くない、内容のない話ばかりを延々と聞くことになります。
 
そして、どうせ内容のない話しかしないのに、びっくりするくらい頻繁に私を誘ってくるのです。
 
「明日、飲みにいこうよ。え!? だめなの? じゃあ今月の空いている日を教えて」
「うちの店にくるお客さんでさぁ、こういうバカがいるんだよぉ」
「○○っていう政策、意味ないよね」
 
相手がこうした行動をとりはじめると、私は「あぁ。また、ボランティアでキャバ嬢をやるハメになったな」と思うのです。
 
そしてそこまでの過程も相手の行動も、いつも申し合わせたように同じだということに最近気がつきました。
もしかして世の中には私の知らないうちに、「ボランティアのキャバ嬢を認定する会」なるものが発足していたのでしょうか?
会員はみんな、この会のマニュアルに従って行動しているから、いつも同じ行動をするのでしょうか?
 
どうして、私が出会う人はみんな「ボランティアのキャバ嬢を認定する会」の会員ばかりなのでしょう。
どうしてだか、いつもボランティアでキャバ嬢をやるハメになるんです。
 
さて……
ここまでの中に、私が「ボランティアのキャバ嬢を認定する会」から目をつけられる原因が書いてあります。
それは、どこでしょう?
 
ここです。
 
『私は決して、美人だとか、話がそれほど上手というわけではありません。私の何が良くて声をかけようと思ったのかいつも不思議なのですが……』
 
わかりましたか?
 
『私の何が良くて』
 
つまり、自己評価がおっそろしく低いんです。
 
私みたいな女に声をかけてくれた。
こんな私なんかに、声をかけてくれた。
……だから、それに応えなければ。
 
「応えなければ」……つまり、相手にサービスしなければと思っていたのです。
 
最初から、相手に対する私の在り方が「キャバ嬢」だったのです。
そんな在り方で相手に接するから、私の態度がおのずと「キャバ嬢」っぽくなっていたのです。
 
それは私の八方美人な態度。
自分の心に嘘をついてとった行動。
嫌われたくなくて、相手に合わせまくった結果。
 
だから相手の方が、「この子はボランティアでキャバ嬢をやっているんだな」と思っても仕方ありません。
なんたって私自身が「ボランティアでキャバ嬢をやる会」の会長をしていたのですから。
 
今まで声をかけてくださった方々。
 
私は自分からキャバ嬢っぽい行動をとっていました。
それなのに、私をボランティアのキャバ嬢扱いしてくるあなたのことを勝手に嫌がっていました。また、内心バカにしてもいました。
誤解されるような態度や行動をとって、本当に申し訳ありませんでした。
 
これからは、あなたに嫌われないために自分を殺すのをやめます。
思ってもいないことであなたを褒めたりしません。
内容がない話に付き合うのは時間の無駄なので、帰らせていただきます。
めんどくさいLINEには返事をしません。
翌日が早番のときは「もう一軒!」と言われても、きちんとお断りします。
写真を大量に送られるのは迷惑なので、「迷惑です」と正直にお伝えすることにします。聞き入れていただけないときは、スルーしますので予めご了承ください。
 
なにより、「私なんか」と自分を卑下するのをやめることにします。
私は黙って座っていても男性から声をかけられるような、素晴らしい価値のある女なのですから。
 
私は以上を宣言し、「ボランティアでキャバ嬢をやる会」会長を辞すことといたします。
 
 
 
 
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2019-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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