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メディアグランプリ

猫の下僕


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:生駒 希(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「猫ちゃんいるよ」
 
私の母はなにかと衝動的に物事を決めて、後追いで報告してくることが多い。流石に何の相談もなしにマンションを衝動買いしてきたときには驚いたけど、家を衝動買いされてしまったらちょっとやそっとのことでは驚かなくなってしまっていた。三年前。その当時、私は徒歩圏内だけど実家を離れて別の場所で暮らしていた。夏の暑い日。職場のひとたちとバーベキューに勤しんでいるときに突然LINEがきた。今でもハッキリ覚えている。冒頭の文章だ。
 
「……猫ちゃん?」
 
頭にクエスチョンマークを浮かべて画面を見ていると、次に送られてきたのは子猫の写真。サバトラ柄の猫と、黒猫の写真。
 
「可愛いね! どこ?」
 
なにかの台の上に乗っているらしい、可愛い子猫たち。我々家族は、たまに外歩きの最中に散歩中の猫や、集会中の猫たちを見かけては写真を撮っては送り合い、猫カフェに行けば奇跡の一枚を狙って沢山写真を撮るのだ。
 
そう、失念していた。我々家族はとても猫が好きなのだ。
 
「家の猫たちです」
 
思わず、職場のバーベキュー中にも関わらず、母に電話をかけてしまっていた。「どういうこと!」と、ウキウキを隠せない声でそう聞いていた。
この二匹の猫たちは、近所の動物病院に保護された、産まれてすぐの野良猫の兄妹とのこと。乗っていた台は、病院の診察台だったらしい。たまたま里親募集のチラシを見て、フラっと会いに行ってみたら、あとはいつも通り、母は勢いよく連れて帰ることを決意したそうだった。
幸い、元々母はとても動物が好きで、猫も飼ったことがある。ペットのトリマーの資格も持っている。破天荒な割には責任感もある。衝動的に猫たちを家族にお迎えすることを決めても、資質には問題ないように思えた。不安要素は少ない。
 
バーベキューが終わると、自宅まで送ってくれるといった先輩に頼み込んで、実家まで送ってもらった。既に動物病院からお預かりしたらしい、彼らが今まで使っていた猫用トイレとご飯のトレーがリビングに置いてある。色々準備するものがあるだろうと母に確認すると、Amazonお急ぎ便でキャットタワーやおもちゃを含む必要な道具は買い揃えているとのことだった。流石だ。ぬかりない。
 
猫たちは無理矢理連れてこられた知らない場所に怯えて、ソファの下に隠れているとのことだった。
 
猫はヒトの隠れた行動力を呼び覚ますパワーを持っている。連れて帰ろうとすることは勿論、Amazonをポチる指も、バーベキュー終わりに会いに行くのも全て猫たちに突き動かされていた。既に家の中心は猫たちだ。
 
妹がサバトラの男の子をマル、黒い女の子のほうをウタと名付けた。その当時、近い将来歌丸師匠がお亡くなりになっても淋しくないように……と、円楽師匠のネタのようなことを言っていた。どこまで本気か、どこまでがネタなのかわからない。
 
猫は太陽。ヒトは恒星のように猫の周りをぐるぐる回っていた。こんなに温かくて柔らかい存在を、私は他に知らない。
 
玄関を開ける度に廊下の影から玄関を覗き込んで、玄関が開くとダッシュでリビングに逃げる遊びは、私以外にもやっていることがわかった。てっきり私の顔を見てから逃げているのかと思って地味に傷付いていた。
猫界の合法ドラックこと、液状おやつ・ちゅ~る片手に足しげく通ったおかげか、私はしばらくすると顔見知り程度の存在に昇格したらしく、母と妹に遅れること数ヶ月。実家に帰ってリビングにいると、猫たちが顔を見に来るようになった。幸せってこれか。いつも私は猫撫で声で猫たちに挨拶をする。
 
猫を飼っている、いや、飼わせて頂いている猫の下僕たちもきっと多いと思う。気まぐれに撫でで欲しいと掌の下に頭を入れてくる、なのにヒトが撫でようとすると素っ気ない態度でキャットタワーに逃げていく。ベッドの上では布団を占領。パソコンに向かっているとキーボードの上に乗ってくる。そんなツンデレな態度に堪らない気持ちになる。最近は犬派より猫派のほうが多数派とも聞く。
そんな中で、我が家の猫たちのように屋外で生まれていた野良猫、多頭飼育崩壊してしまい里親に出される猫、一人暮らしで猫を飼い始めたけど忙しくてお世話が出来ない、はたまた思っていたのと違う、なんてことも。ヒトの都合で悲しい思いをする猫たちも多いようだ。家に猫たちが来るまで、動物病院の里親募集の貼り紙や、ネットの保護猫の投稿なんて、目には入れていたようだけどキチンと読んではいなかった。彼らを飼うようになって初めて、自分ごととして意識するようになった。自分ごととして意識しなければ、周囲で起こっている事件もただ右から左へと過ぎ去っていってしまうことが良くわかった。
 
ヒトは猫の、猫だけじゃなくて全ての愛玩・愛護動物の下僕くらいでちょうど良い。私はそう思う。一緒に生きている、生きていく家族だってことを忘れないでいて欲しい。私も猫と一緒に暮らしたい。キチンと責任が負えるようになったら。
 
全ての猫たちが幸せに暮らせますように。
 
 
 
 
***
 
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2019-11-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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