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メディアグランプリ

「目を閉じる行為は贅沢だ」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:更谷重之(ライティング・ゼミ 冬休み集中コース)
 
 
出来る大人の嗜みとして、今や定番と言っても過言ではない、ランニング。
私も、ランニングが大好きだ。
毎日とはいかないが、かれこれ15年ほど、アマチュアにしては多い頻度で走っている。
何しろ、私の住む町神戸には、海岸がある。このロケーションは、走る上でも最高だ。
海岸線に沈む夕日の景色は、もちろん素晴らしい。
夜の海原に月影が映る景色は、昼以上に輝いて見える。
唯一聞こえる音が、打ち寄せる波の音。これも心地いい。
淡路島への架け橋、明石海峡大橋、吊り橋としては世界最長を誇るそのシルエットは、全長3,911 メートル。毎日見ても、飽きないほどだ。
潮風が運ぶ海の空気は、季節によって匂いが違っていて、面白い。
これだけで十分お腹いっぱいになりそうなのだが、もう一つ、私には密かなランニングの楽しみ方がある。
 
 
それは、目を閉じて走ることだ。
どこかのランニング教本を見て学んだわけではない。というより、一般道路ではあまりに危険すぎるので、そんなクレイジーな走り方など誰も推奨するわけがない。だから、書く価値があるのだ。実際、身体にとって良い影響があるのか悪い影響があるのかは、分からない。多分健康そのものには無関係だろう。我ながら、随分無責任な記事ではある。
ただ、私は昔から、走っている最中にふと目を瞑りたくなる瞬間がある。
 
 
目を閉じるタイミングは、ランニングを開始してからおよそ20分経過したくらい、といったところだろうか。
「ランニングしている」という事実を受け入れ、身体が走ることを喜びだす、ちょうど気持ちの良い時間帯だ。
意識をしなくても腕は引かれ、自動的に肩甲骨が上下する。
上半身の動きが、背骨を通してお尻の骨盤に響いてくる。
骨盤の動きにつられて、腿が自然と前に振り出される。
着地した足裏が感じる、地面からの反発。この力が、身体を前へ前へと推進させていく。
走り始めの時間帯と異なり、身体は十分に温まって動きが滑らかになっている。
そう感じられてきたら、頃合いだ。
 
 
ふと目を瞑ってみる。
そういえば、走っている間、脳が何も考えていなかったことに気づく。
今日は一日何があったっけ。
そうそう、職場で少し嫌なことがあったんだ。
あの言葉は、最悪だったな。
もっと良い対応の仕方があったのにな。
もう少し時間があったら良かったのに惜しかったな。
明日は、しくじらないようにしたいな。
帰ったら、届出の書類をもう一度チェックしとかなきゃ。
あ、そうだ、玉ねぎが冷蔵庫に残ってた。そろそろ使いきらなきゃ勿体ない。
あれ、今日の風はちょうど涼しくて、いい気持ちだな。
言語化すると、大体こんな程度の、ひどく他愛もないイメージ。
時間にして、約5~10秒のわずかなひと時。(わずかにしておかないと、色々危ない)
ただ、これらを考えるのではなくてただ感じる。意識は真っ暗。
だから、宇宙をふらふら漂っている錯覚に襲われるのだ。
その間、身体は機械のようにただただ走り続けている。
魂が、肉体という乗り物に乗って、ただ揺られている感覚。
 
 
目を開けるタイミングにも、慣れたものだ。
静かに視界が開けてきたら、ほぼ確実に目の前までフェンスが迫って来ている。はいはい、いつものやつ。
慌てるでもなく、足首をくるっと面舵一杯。涼しい表情である。
もちろん、私も世間的には立派な成人と目される年齢なので、他の歩行者の方々に迷惑をかけては絶対にいけない。
その点、海岸は都合が良い。見晴らしが良いから10秒~20秒先の光景は予測しやすいし、歩行客も連れているペットも、見逃すことは決してない。何より、無慈悲なダンプカーに弾き飛ばされる心配もない。あり得るとすれば、件のフェンスへ激突するか、自転車侵入防止ゲートに股間をぶつけるか、踏みたくないものを踏んでしまうか、潮騒の調べに身を委ねて海中へ誘われるか、ぐらいだろう。それらは、すなわち自業自得である。
周囲には、変態ランナーと恐れられているに違いない。
 
 
私と異なり、極めて正常な神経の持ち主でも、何故かふっと目を瞑る瞬間がある。
怖いものを見た時などは、「ふっと」とは言いづらいので、ここでは除かせて頂きたい。
例えば、神社でお願い事をするとき。
上品なお吸い物を目にしたとき。
厳しい登山に挑戦して、見事山頂へたどり着いたとき。
ソファの隙間に落ちた貴重品を必死に取り出そうとする時まで。
なぜか人は目を閉じる。
何のために?
きっと「意識を集中したい」と無意識に願うからではないだろうか。
そう、目を閉じれば、残りの感覚が冴え亘る。
思考が途切れ、求めるイメージだけをシンプルに感じ取ることができる。
「敢えて見ない」なんと、贅沢な時間だろう。
 
 
連綿と続く日常へのささやかなスパイスとして、ぜひお勧めしたい。
おっと、もし私と同じようにランニングで目を瞑る場合は、海岸やそれに近い安全な場所で行ってくださいね。
くれぐれも身の回りには、細心のご用心を。
だったら、わざわざ勧めるな?
いやいや、これが病みつきになるのです。

 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-01-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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