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 移住者の私が、地域の重鎮と言い合いをしたら


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:坂下佳奈(ライティング・ゼミ 冬休み集中コース)
 
 
「若い人のエネルギーを感じられて楽しかった!」
移住者の私が、70代の男性、地域の重鎮とも言える人と言い合いになったあと、彼が書き記した一言だ。
 
 
言い合いが勃発したのは、地域で行われたワークショップでのことだった。
某大学の生徒の研究の一環として「地域における地元住民と移住者とのコミュニケーション」を題材に開催されたワークショップに参加した。私は移住者の1人として、70代の男性は地元住民の1人として出席していた。私たちは初対面ではなく、今までにも何度か顔を合わせ、お酒の席も一緒にしたことがあった。
 
 
ワークショップは、1グループ5人程度で行われ、大学院生の方から5つほどの質問が投げかけられた。それぞれの質問に対して、1人ずつ意見を出し合いながら、気になるところを深掘りしていく形式でワークショップは進められた。
 
 
彼とのアツいバトルが繰り広げられたのは、最後の質問のときだったと思う。質問の内容は、「移住者が、地元の住民に対して困っていることは何か」だった。私は、これといっていいネタがあまり浮かばなかったのであるが、強いて言うならと「定住するのか?早く結婚しないのか?といった類の質問が困る」と答えた。
 
 
質問されて困るというよりモヤモヤした気持ちになるという方が正しい気がする。
私が、人口1万人の小さな町に移住したのは1年以上前のことだ。
正直この手のことを質問されることにも、答えることにも慣れた。
この質問をする人たちの気持ちが分からなくもない。
嫌味ではなく、心配しているからこそ出てくる一言なのだと思う。
ただ移住者や若者に対するこういった質問が余計なプレッシャーになり、地域での生きずらさを助長してしまうのではないかという懸念を私は持っている。
 
 
そんなことを話す中で、「何で結婚しないのか」ということに話題がうつっていった。
私のグループには移住者として、20代の私と30代の女性が1人いた。2人とも未婚だ。
それぞれに結婚をしたくない訳ではないが、結婚願望は薄く、人生の目的の主要な部分を占めていない、今は他にしたいことがあるというのを理由に挙げたと思う。
彼はそんな私たちに「わがままだ!」と言い切った。
 
 
彼の意見からすると、結婚をして地域に定住し、パートナーと一緒に未来をつくっていく事が大切であるというのだ。そもそも私たちからすると「別に結婚してなくても良いのでは?結婚がスタートラインなの?定住しないとダメなの?」となる。
 
 
彼から見たときに、結婚せずに自由に生きていきたいというのが1種の甘えであるというのは、私自身も理解しないこともない。ただ、結婚しない生き方を否定される筋合いはないし、そこに目的意識を置かない自分たちがおかしいとも思わない。
 
 
彼と私たちとでは生きてきた時代が違いすぎる。
50年前の結婚に対する価値観と今の結婚への価値観は大きく変わっている。
現在は、独身の人も多く、事実婚やパートナーと生きる方法もある。そんなことを前のめりになりながらアツい口調で説明しているうちに、ワークショップは時間切れとなってしまった。「結婚」に関する会話は、ほぼ平行線のまま終わってしまったのだ。
 
 
そのワークショップの最後に彼が書いた感想が、冒頭の一言だ。
「若い人のエネルギーを感じられて楽しかった!」とアンケートに記入していたのだ。
 
 
正直すこし心配になっていた。
まだまだ半人前の20代。
彼から見れば生きてきた年数は半世紀ほど違う。
そんな若造が、知った口を叩いて反論をして怒ったのではないかと。
その心配を見事に裏切り、彼は笑顔で「ありがとう!」と言って立ち去っていった。
アンケートに、達筆でエネルギー溢れる言葉を残して。
 
 
考え方の違いや、すべての価値観をすんなりと受け入れることは難しい。
同じ日本に暮らしていても、生きてきた時代も背景も全く違う。だからこそ、私たちは言葉にして話さないといけないし、相手のことを知ろうとし、自分のことを知ってもらおうとしないといけない。
 
 
平田オリザさんの本に「わかりあえないことから」というものがある。
私はこの本がすごく好きで、よく読み返したり、本の内容を思い浮かべて頭の中で反芻したりしている。私たち人間はすべてを分かり合えることなどない。どんなに同じ言葉を話していても、同じ文化の中で生きていても、分かり合えるわけではないのだ。本の紹介をここでは深くしないが、ぜひ読んでほしい一冊である。
 
 
どんなに意見が食い違っていようとも、相手のことを知ろう、自分の意見を伝えようとしないと何も始まらないのである。私は、言い合いになりながらも、彼が同じ地域に生きる人間として私たちの意見をしっかりと聞いてくれたことが嬉しかった。彼が私たちと話をする事を拒否せずに、最後には嫌な顔ひとつせず「ありがとう!」といってくれたことが嬉しかった。私たちのコミュニケーションは「わかりあえないことから」スタートする。
 
 
彼と結婚について話しをする中でわかったこともあった。彼も私たちも「10年後、20年後に、自分たちが暮らしたい未来を作っていく。」という意見では一致していたのだ。
 
 
今でも彼とは、仲良くお酒を飲み交わしている。
ときには意見がぶつかりあいながらも、彼はいつも楽しそうに立ち去っていく。
 
 
 
 
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2020-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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