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着物で普通に暮らすということ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:瓜生 とも子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
令和はじめてのお正月、着物で過ごした人はどれぐらいいるだろうか。
 
私が元旦の初詣に行った関西某所の神社は、地元の人たちのみ集まる小さな神社だが、それでも鳥居の外には長い列ができ、本殿まで15分ほど並んだ。その間見かけた着物姿の参拝者は、小さな女の子数人だけ。大人で着物を着ていたのは私たち夫婦だけだった。
 
お正月過ぎても着物を着るのは、さらに少数派。私もその中のひとりだ。
 
何のイベントもない日にひとり着物でウロウロしていると、知らない人には二度見される。知っている人には理由をきかれる。「これからお茶会ですか?」「お着物関係のお仕事?」
 
お茶も踊りも習ってないし、仕事も着物とは関係ない。好きだから、着る。着たいから、着る。朝起きて、さあ今日は何着ようか。その選択肢に、洋服と着物の両方がある。
 
実は着物にも、洋服と同じように、礼装や晴れ着とは別のカジュアルな普段着がある。お正月でなくても、習い事をしてなくても、改まったお出かけじゃなくても、気軽に楽しめる着物がある。でも世間一般の「着物=特別」なイメージは根強い。
 
「あら、今日はお着物なんですね」。いやいや、その「お」、いりません。ただの着物です。着る、物。
 
ちょっと指が触れたからって、ビビらんといて。家で洗濯機で丸洗いできるし。あなたが着ているその洋服と同じ、木綿やウールですよ。
 
一緒に步くとき、そんなにゆっくり歩いてくれなくても大丈夫。着物っていうだけで要介護認定せんといて。この格好でもスタスタ早足で行ける。
 
そういえば、昔テレビ番組に米倉涼子が豪華な着物で現れたとき。某男性アイドルに「その格好じゃトイレ行けないでしょ?」とからかわれ「行けますよ、何言ってんですか!」て即答してた。一瞬も恥じらうことなくピシャリと返した初代『黒革の手帖』グッジョブ。
 
銀座ママの高級な着物だって大丈夫なんだから、庶民の普段の着物に、トイレの問題なんて、もちろんない。上から割烹着かぶって家事もするし、裾をクリップで留めて自転車にも乗るし、マクドナルドにも行くし、たまに小学生の息子とキャッチボールなんかもする。着物に羽織でプロ野球観戦に行ったこともある。ガンガン生ビール飲みながら応援した。
 
値段だって誤解されている。リサイクルなら、時にはファストファッション並の価格で着物が手に入ることは、もっと知られていい。普段の日にすごいものを着ていると思われるのもいやなので、きかれてもいないのに「古着でたった500円」などと余計なカミングアウトをしてしまうことがある。その後決まって後悔する。
 
「自分で着るの? 京都らしいわねえ」とのお声をいただくこともある。そんなことおっしゃるあなたは、賭けてもいいが、京都人ではないですね。あら奇遇、私も3年前に来たばかりの、よそもんですわ。京都に住んでいるのも、京都に着物が似合うのも事実なので、あえて否定はしないけれども。
 
京都の街で着物姿を見かけたら、カラフルなレンタル着物の観光客か、芸妓さん舞妓さんか、そのほか伝統産業やサービス業にかかわる方々がほとんど。単なる住民で普段から着物を着ている人はとても少ない。よそものの私が、よそから来た方々の求める「京都らしさ」の期待に応えてしまうことへの、このやるせないモヤモヤ感。
 
着物に関わる仕事でなくても、勤務中に着物を着たいというのは変だろうか。以前、大きな組織でフルタイム事務スタッフとして働いていたとき、着物での出勤をひそかに計画した。ドレスコードはオフィスカジュアル。カットソーやデニムのボトムがOKなら、着物も問題ないだろうと思ったのだ。結局、非正規雇用という自分の立場のことなども考え、断念した。
 
その仕事を辞めて自営業となった今、ようやく堂々と平日の昼間でも着物でいられるようになった。どんな仕事をしているかというと、経理、事務全般、ときどき広報。会社の事業内容はIT関連技術の研究開発。着物は扱わない。
 
着物を通じてのこのような経験から、思い出したことがある。
 
80年代のバラエティ番組『笑っていいとも!』で、当時ブームになっていたニューハーフが登場する人気コーナーがあった。「男なのに女らしい」の過剰な演出だったこと以外はほとんど忘れてしまったが、ある日、真面目にスピーチしたニューハーフさんのことははっきり覚えている。
 
「私たちの仕事が水商売に限られるのは納得いかない。普通の事務とかしたい」。それを見て田舎の高校生だった私の反応は「だってしょうがないじゃん、ニューハーフなんだし」。ああもう、何て無知、何て残酷だったんだろう。
 
その後、田舎を出て、色んな人と出会い色んなことを学び、そんな偏見も持たなくなっていったのに、何十年も経った今になって思い出すのは、なぜか。
 
「着物着てるってことは、そういう人なんでしょ」のはるか先に、「ニューハーフなんだから、しょうがないじゃん」が、うっすら見えちゃうからなんだろうな。
 
今の私は、どうかな。目に見える情報と少ない知識だけで、誰かをジャッジしてないかな。そんなことのないように、キュッと帯を締めて、ビシッと背筋伸ばしていよう。
 
 
 
 
***
 
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2020-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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