喧嘩ばかりしていたカップルを救った、たった1つの言葉
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記事:みみずく図書(ライティングゼミ冬休み集中コース)
「この前、約束したじゃん!」部屋の空気がピリつく。
「仕事から早く帰ってきたら、夜ご飯の準備進めておくって約束したのに、なんでご飯のひとつも炊いてないの?」
私たちは同棲を始めたばかりのカップル。7年間の遠距離恋愛のすえ、ようやく一緒に住み始めることができた。
遠距離恋愛が長かったぶん、一緒に生活できることが楽しみで仕方なかった。まだ知らない彼の一面や、お互いの生活スタイルの不一致は多少なりともあるかもしれないと思っていたけど、7年も付き合っていれば上手くいくだろうと思っていた。
でも、それは違った。
「今やろうとしてたのに。そんないちいち怒るのやめてくれる?」と彼氏が眉間にしわを寄せながら言い返す。
怒るつもりはなかった。ふたりで話し合って決めた約束は守ってね、お互い支え合おうよ、と言いたかっただけなのに。ついつい強めの口調で言ってしまう。残業続きでヘトヘトだったせいもあり、定時で帰宅した彼を少し妬んでいたのかもしれない。
同棲をして2ヶ月。少しずつ、喧嘩の頻度が増えていくのを実感していた。
「こんな喧嘩ばっかりなら、耐えられないね。お互い別れたほうが幸せかもね?」ついに言われた。この言葉だけは聞きたくなった。7年も遠距離恋愛を続けてきたのに、同棲を始めて2ヶ月であっさりお別れ?私たちはそのくらいの絆しかなかったの?
悲しくてひたすら泣いた。どうして分かり合えないのか、どうして喧嘩ばかりなのか、と。もっと私のこと理解してくれていると思っていたのに。料理も好きって言ってたし、一緒に住んだら掃除も頑張るって言ってたよね。どうして守ってくれないの?
悩みながらも、仲が良い時は喧嘩のことなんて忘れて笑い合う。毎日会えて幸せ、いつでも触れ合えて幸せ。
でもすぐに心地の悪い時間は訪れる。
「トイレの電気ちゃんと消して」
「ティッシュ無くなったら新しいのだして」
「はやく洗い物してよ」
「わかった。気を付けるね」「うん。すぐにやるよ」と言えば済むのに。こんな小さなことさえ、いちいち喧嘩に育て上げてしまう。
私たち、もうダメなのかな…。少しずつ不穏な気持ちを感じるようになっていた。
ある時、彼氏がTwitterでバズっている猫の動画を見せてきた。「見て見て。これめちゃくちゃ可愛いから」
私たちは猫好きという共通点がある。ことあるごとに彼氏はニヤニヤしながら猫の動画や写真を見せてくる。私も負けず劣らず猫好きなので、ついつい見入って話が盛り上がる。
すると突然、頭に隕石でも落ちてきたかのように彼氏が言った。「いいこと思いついた!」
え? どういうこと? 私の目が丸くなる。
「いつも言い方が強くて喧嘩になること多いから、語尾に『にゃん』って付けて会話しよう!」
そう、私は少し口調が強いところがある。自分ではそんなつもりないが、よく怒っていると勘違いされる。治したくてもなかなか人の癖というものは治らないもので、それが無意味な喧嘩を生み出している一因でもあった。
「これから、なにかお願いしたり注意するときは『にゃん』付け話してね」
「え……わ、わかった」なぜか私は承諾してしまった。
翌日、さっそくその瞬間は訪れた。「スマホいじる前に食器片付けてよ」いつものように言う。
「あれ、語尾のニャンは?」
「……食器片付けてにゃん」正直、小っ恥ずかしかった。
普段は周りからサバサバしてる、男っぽい性格と言われる私がぶりっ子のように『にゃん』を使っている。嫌だ、こんなの続けられない! ていうか気持ち悪い! 無理無理無理無理。ひとりもがいている私をよそ目に彼氏が言う。
「すごくいい! 怒ってるように聞こえない!」彼氏は目を輝かせて褒めてくれた。
それからというもの事あるごとに語尾に『にゃん』を付けて会話するようになり、私たちの喧嘩は嘘のように無くなった。
しかも彼氏は能動的に家事を手伝ってくれるようになった。『にゃん』ひとつでこんなに変わるなんて。
同時に気づいたことがある。今までの私は、彼氏に価値観を一方的に押しつけていた。洗濯物の干し方、野菜の切り方、掃除の仕方まで口を出していた。ただの小姑になっていた。
今までは彼が私のことを分かってくれないと思っていたが、逆だった。私が彼のことを理解していなかった。彼には彼のペースがあるし、彼のやり方がある。そこを尊重しないとうまくいくはずない。
喧嘩ばかりだった私たちの生活は嘘のように楽しい毎日になった。お互いが協力的で、お互いに感謝するようにもなった。
破局寸前だった私たちを救ってくれたのは『にゃん』というたった一つの魔法の言葉。
もしいま上手くいってないカップルがいたら試してほしい。馬鹿馬鹿しいと侮ることなかれ。
騙されたと思って試してみる……にゃん!
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