メディアグランプリ

行動しよう! そして、〇〇〇〇れ!

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:tosi(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
「バッターボックスに立て!」
これは、一人の上司の口癖だ。
仕事という試合の中でバットを振らせてもらえるチャンス。
成果を出すには行動し、チャンスをものにするしかない。
少なくとも当時の私はそう理解していた。
 
「今度の新規プロジェクトなんだけど、参加してもらえる?」
唐突に上司から話を振られた。
中途入社1年目で、子会社勤務の私にとって、寝耳に水だった。
新規プロジェクトといっても、本社のOJTの一環のようなもので8年~10年目くらいのプロジェクトリーダーの先輩が主体となって業務改善を行うというものだったからだ。
「これで君もバッターボックスに立てたな」
上司が言う。
行動して、チャンスをつかんで来いということだろうか。
……何させられるんだろう。
「……残業したくねえ……」
つい、声に出ているほどに憂鬱だった。
 
その声は、運悪く先輩に届いてしまった。
……あーやってしまった
これからしばらくこの人と仕事をする必要があるのに、最初の印象は最悪だった。
先輩は気にした様子もせず、私にこういった。
「巻き込んだ形になって申し訳ない。今研修を受けていて、現場実践を課題として言い渡されているんだ。それの協力をお願いしたい」
「やってほしいことは、自分が日頃仕事の中で問題に感じていることをたくさん出して欲しい」
 
私の仕事は、感じたままにしゃべることのようだった。
その時は、チャンスだと感じた。
「感じたままにしゃべるだけ。アイデアを出すだけ」これなら私でもできる。
むしろ簡単だ。
できる自分をアピールできる。あまつさえ先輩よりいいアイデアを出してやろうなんて本気で思っていた。
 
だから、先輩主催の会議では誰よりも声を上げてやった。
「分担がダメ、スケジュールがダメ、倉庫汚すぎ、このソフトよりあのソフトの方がいい、あの上司はダメ、あの依頼はひどい」
本当に言いたい放題で終わったと思う。
けれど、みんな話を聞いてくれた。
 
そして、研修の実践が終わり、フィードバックの日。
先輩は私に尋ねてきた。
「あなたは今日までやってみて、どんなことが学べた?」
ん、学び? 学びってなんだろう?
私は当時を思い返してみたが、学びなんて見つかるわけもなかった。
やりたいことをやっていただけなのだから。
私は、正直に答えてみた。
「たくさん喋れて良かったかなってくらいですけど。あと、みんなすごいなって思いました」
完全に子どもの感想になってしまった私の回答を聞き、先輩はこう言った。
「行動することが意味を持つのは、後から振り返ることが前提だよ。動くだけじゃ何の意味もない。上司が1年目の中途社員をバッターボックスに立たせた意味って考えてみた? 成果をあげることや誰かに勝つよりも、行動することで成長をして欲しい。動いたことから何を学んだか言葉にしてみて欲しい。それがないならチャンスは徒労といえるかもね。私は、あなたにはこれから子会社の中でリーダーをやっていけるべき素質があると思ってる。今回やったこと、振り返ってみて」」
 
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
先輩は私のことを考えてくれていた。
私は、会議で目立つことしか考えてなかったのに。
助言に従って、うまくいったことや、もっとうまくやれたことを振り返ってみる。
私のいう「うまくやる」というのは、マウントを取るということだった。と、一つ分かった。
 
「みんなすごいなって思った」なんて子どもの感想のような自分の発言を真剣に考えてみた。
どこがすごいと思ったのか。
彼らのすごさは、先輩と一緒に会議を進めようとしていたことだった。
 
目立てたのは何でだろう? ということも真剣に考えた。
目立てたわけではなかった。単にみんなが聞いてくれていただけだった。
1時間しかない会議だったのに話が長いから、目立っていただけだと感じた。
 
冷静に振り返ってみると、1時間の会議の中で、好きなことを言うだけ言って、建設的な話もできず、意見の一つも取り上げられないというのが私の成果だった。
 
振り返りを終えた私は、上司に話をしに行った。
今回の顛末と、気づいたことを特に詳細に。
「ひどくて最高の空振り三振だったな~」
上司は笑う。
「また次もバッターボックスに立ってみるか?」
なぜかチャンスが繋がった。
 
次のチャンスは会議の場ではなかったが、私は一緒に仕事をする人を強く意識した。
発言前には「恐縮ですが」などとクッション言葉を挟んだ。
話したいことをまとめる時間をたくさん取り、短い時間で発言できるように心がけた。
結果、私の話を踏まえて議論が進むことがあった。
なんとか、貢献できたかな……1人、ホッとした。
 
上司の言う「バッターボックスに立て!」というのは、「行動しよう! そして振り返れ!」ということだった。
 
行動をすることは簡単でも、振り返ることは難しい。
けれど、振り返ることがなければ行動した意味は全くない。
振り返ることで、次の行動が見えてくる。
次の行動が見えれば、また行動できる。
 
失敗と向き合い、期待外れと向き合い、ズレた取り組みと向き合う。
振り返りは辛く、苦しい作業になる。
そんな時は、周りの言葉を頼ってみるのが良いかもしれない。
 
失敗を経て経験を重ねた私も、今は振り返りを一緒にする立場にいる。
「やってみてどうだった?」
今日の振り返りの時間も、絶対ニコニコして帰ってもらおう。
そう決めて、一緒に振り返りの時間を共にするのだった。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/event/103274
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2020-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事