メディアグランプリ

『女が1人でいるのは不幸ではないんです』


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松永 恵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「死なないですよね?」
あるとても晴れたの日の朝、19歳の女性は警官にそう声をかけられました。
 
年中曇りがちな地方都市で、奇跡的に晴れた冬の日の、午前9時。
自転車に乗った若い警官に呼び掛けられられた女性は、別の人のことかと思い辺りを見回しますが、どうやら間違いなく自分に声をかけていると気づきます。
とても気持ちのいい朝だったので、学校に行く前に海でも眺めて行くかと海岸に立ち寄っただけなのですが、そんなに死にそうに見えたのでしょうか。
 
それはあれですか。
女が1人で、冬の荒れる日本海を見ているからですか。
ぼんやり薄く笑いながら、海を見ているだけなのですが、思い詰めたように見えるのですか。
あ、ひょっとして体育座りだったからですかね。
 
冒頭の女性はもちろん私自身、若かりし頃のことです。
その後、近所の学生であること、これから授業があること、将来の夢のことを聞かれてもいないのに、身振り手振りで説明しました。
しかし信じてはもらえず、職務質問へ突入。
女性、海、1人、という謎のメモを手帳に書かれ、住所と氏名、電話番号を控えられ、解放されることとなります。
 
何故、女1人で海を見ていただけで職務質問を受けるのでしょうか。
気持ちよく海を見ていた未来ある19歳の若者に、死なないよね、なんて声をかけるものでしょうか。
 
女が1人でいるのは、不幸であるかのように捉えられる、そんな経験されたことはありませんでしょうか。
私はあります。
 
もともと1人行動が好きな私は、その手のエピソードに事欠きません。
 
例1
久しぶりの休みが取れて、1人でのんびりしようと急遽宿泊を決めた温泉旅館。
女将と思われる方が丁重に対応してくれ、お部屋で給仕もかいがいしくしていただき、最後には「こちら料理長からサービスでございます」とやたらと豪華なデザートが付いてきました。
 
ラッキーだなあ、素敵な旅館だなあ、とニコニコとしていたのですが、ふと感じたのです。
(これは、失恋旅行か傷心旅行かと思われているような……)
確か食堂でのご飯だったはずが、いつの間にかお部屋食に代わっていたような。
1人旅ですか、どうしてこの時期に、など色々女将さんに聞かれたような。
 
雪深い温泉旅館に女1人で宿泊されると、心配になるものですかね?
一応家庭はあるんです。
あ、ひょっとして指輪をしてないからですかね?
数年前に失くしただけなんですが……。
 
例2
出張へ行き、仕事が終わると現地で1人旅を楽しみます。
去年は京都で2泊3日の1人旅をし、羽根を伸ばしました。
鴨川沿いを散歩し、お酒を飲みたくなった私は、ふらっとバーに入ります。
海外の方や旅行客でごった返しているにも関わらず、川の見える特等席を案内されました。
そして、頼んだ覚えのないおつまみが差し出されます。
「こちら、サービスです」と……。
 
違うんです、喉が渇いていただけなんです。
1人で川や海を眺める女は、珍しいんでしょうか。
あ、ひょっとして昼間から飲んでいるからですかね?
 
例1、例2とも、私の行動にもひょっとしたら問題があるように感じてきましたが、どちらも実例です。
日々楽しく生きているつもりですが、どちらの例も私に対して何かしら寂しさや何かを感じるものがあってこそ、サービスいただいたのだと思われます。
何かこの人を元気づけたい、笑顔にしてあげたい、という意思の元、サービスいただいたのではないかと思うのです。
それは、女が1人でいることが「不幸」や「寂しそう」に見えるという風潮があるからではないか、と考えてしまうのです。
 
女が1人でいる理由が必ずしも不幸でないことを声を大にして叫びたいのですが、何かしらの固定概念でもあるのか、かなりの確率で哀れまれることもあります。
 
固定概念とは恐ろしいもので、1人になっているシチュエーションによっては様々なイメージをかき立てます。
この人、恋人と別れて1人なんだろうな、とか。
この人、家庭が上手くいってなくて別居中なんだろうな、とか。
でもそう考える前に、ちょっと待ってください。
好きで1人でいる女もいるのです。
恋人がいようがいまいが、家族があろうがなかろうが、1人でいる時間も大切です。
 
男性が1人旅となると、ロマンとかカッコいいとかになるのでしょうか。
これもまた固定概念ですね。
 
1人の時間、それは究極に自由な時間だと思います。
人との関わりあいに縛られることなく、自分の意思で行く先も食べたいものも決めていい時間です。
女が1人で行動する、ということはひょっとしたら勇気がいるかもしれません。
でも固定概念を持っている方こそ、自信を持ってその時間を楽しんでいただきたいです。
 
周囲の方は、これらの例から女が1人でいる理由を汲み取っていただき、1人で行動しているのを遠くから、温かい目で見守っていただければと思います。
 
きっと本人は、川や海をただ眺めたり、ただぼーっとしているだけだったりしますので。
 
 
 
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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