ロザリーのインスタントポット
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:加藤なお美(ライティング・ゼミ平日コース)
「ムムッ! 今までのものとは次元が違う!」
出来上がったお鍋の中身を見て、思わず唸ってしまった。
先に購入したのは、TVショッピング通の姉だった。
「このお赤飯、何分で炊けたと思う?」
「わからないけど。30分くらい?」
「お赤飯だよ! ふつうは1時間かかるものなの。フフフッ……何分だと思う?」
不敵な笑顔で、しつこく聞かれた。
「13分! 13分なのよ!! お赤飯が!」
お赤飯好きの姉が力説する。
「ふーん、早いんだ」
「ふーんじゃないでしょ。早いどころか、めちゃ美味しく炊けたから食べて!」
姉のドヤ顔を見た日から、100のレシピ集が付いているのにもかかわらず、美味しいお赤飯が連日のように届いた。
姉をドハマりさせた電気圧力鍋。その名は、インスタントポット。ネーミングの残念な感じは置いておいて、1台7役、マルチ電気圧力鍋デュオミニ3リットルタイプ。カナダ発祥の革新的電気ブランド製。日本では2019年9月から発売されたばかりの新人さんだ。
インスタントポット。その名の通り、材料を鍋に入れてセット、スイッチオン。圧力鍋と保温の連続調理。ほんの数十分ほったらかしで、美味しい料理が出来上がって来るという、最近流行の電気調理器具だ。
ミニという割に32センチの高さがある。圧力鍋なのに、形は昭和を感じさせる炊飯ジャー型。うち鍋はステンレススチール。カッコイイ。科学コーティング無し。良いではないか、ノーコーティング。1年もしたら剝がれてくるコーティングなんて、ノーサンキューだ。
姉の楽しそうな、お赤飯づくしを見ていて、自分も使って
みたいと思い始めていた。
ある夜、テレビから魅惑的なコメントが聞こえてきた。
「最近流行っていますよね、電気圧力鍋」
「ハイ。みなさん、電気圧力鍋は色々出ていますよね、加熱調理が出来てこのお値段」
「しかも、ヨーグルトメーカーまで付いているんです。ヨーグルト、甘酒も自家製で作れますよ」
「豆もね、むずかしいですよね、これはシワもなくて美味しいなあ」
つけっぱなしにしていたテレビから聞こえてきた声に、掃除をしていた私の動きは止まった。夢遊病者のようにテレビの前に吸い寄せられる。
「蒸し物ができて、焼くことも出来ます。カレーもね、他のお鍋だと、一度フライパンで炒めなきゃならないところを、この鍋はこのままで加熱調理、スロークックボタンで煮込み調理も出来るので、コレは優れものなんです」
「焼いて煮込める、茶碗蒸しも出来ますよ」
「サムゲタンとかね、鳥も丸ごと入ります。ごはんも炊き込みご飯、雑穀米も予約機能でお好きな時間に作っていただけます」
「レシピもね、合計100種類付いてきます」
あまり料理が得意でない私が、こんなお鍋を買ってもいいのものか、迷った。使いこなせないままホコリをかぶってしまうかもしれない。でも。
作ってみたい。
ピンポーン!
Amazonから大型の箱が届いた。
満を持して、マルチな電気圧力鍋が、うちのキッチンにやって来た。圧力鍋が電気で動くなんて、ちょっと想像がつかなくて、逆にワクワクしてしまう。果たして火力は足りるのだろうか? ブレーカーが落ちたりしないだろうか。
なるほど、コンパクトサイズだと言っていたのは、うそではなかった。梱包箱から出してみて納得した。小さいけれど、期待の大型新人だ。落とさないようにテーブルに載せる。
届いたら、いちばん最初に作ってみたかったもの。ぜんざいを作ってみたかった。
スーパーで買ってきた少しだけ高めの小豆の袋を破いて調理開始。
うち鍋に30分水につけておいた小豆400グラムと水をセット。沸騰したら一度ゆで汁を捨てる。
小豆を煮るときは、ほったらかしじゃダメなのね。
小豆をうち鍋に戻して水1リットル。豆料理/中モードで、12分加熱。砂糖200グラムと塩少々を加えて出来上がり。
少し加熱すると、つやが出た。美味しそうだ。木べらで味見をする。
やわらかい。美味しい。完璧だ。
木べらを口に入れたまま、笑ってしまった。
マルチクッカー全米シェアナンバーワンは、伊達じゃない。
1時間で小豆が美味しいぜんざいになった。
今日は鏡開き。焼き餅ではなく、ひと手間かけて、餅は茹でて柔らかくしたものを用意する。
いただきます。
美味しいいぃ。しあわせ。
豆料理は最終奥義みたいなもので、普段は食べないのに、おせち料理の中でもかなり主張してくる、ラスボス的な存在だった。
それが、こんなに、あっけなく。
やっつけてしまった。
時間が短くて済む。5時間かかるような煮込み料理が20分で出来るなんて最強だ。
最強の武器。インスタントポット。あまり強そうな名前ではないが、ロトのつるぎに匹敵する破壊力を持っているのは間違いない。いや、料理を食べることで、とてつもなく癒されるので、ロザリーのインスタントポットを手に入れた! と言っておこう。
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