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犬はかすがい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:神保あゆ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「どの仔がいい?」
子犬たちがヨチヨチと走り回るリビングに家族でおじゃましていた。
 
友達夫婦がミニチュアダックスのブリーダーを始めたのだった。
初めて子犬が産まれ、2ヶ月が過ぎた頃だった。
「あゆさん、ワンコ飼われませんか?」
と声をかけられた。
 
犬は好きだ。
子どもの頃から犬を飼っていた。
物心ついたときには、真っ白なスピッツが我が家にいた。
随分と長生きしたが、16才で老衰で亡くなった。
 
その後、1年も経たないうちに、私が捨て犬を拾ってきた。
小学校3年生の時の話だ。
下校時、道路の脇の空き地に、車から子犬を捨てる光景に遭遇してしまった。
車はさっさと立ち去り、私はすぐさま駆け寄り自宅に連れ帰った。
それ以降、私はずっと、その犬と過ごしてきた。
 
躾もさほどしなかったので、「おすわり」しかできなかったが、子ども時代の私の秘密を一番知っているのは愛犬、タローだ。
 
小学校時代、給食を食べるのが遅かった私は、パンを持ち帰り、タローに食べてもらった。
 
中学校時代、部活の朝練で早朝出発する私を、毎朝見送ってくれたのも、タローだ。
 
高校時代、彼氏が遊びに来たとき、自宅に入ってもらう前に庭で「ワンクッション」おいて彼氏の緊張をほぐしてくれたのも、タローだ。
 
タローには随分お世話になってきた。
 
そんな私も結婚をして子育て真っ最中の時代は、犬を飼う心の余裕、時間の余裕もなく、
「犬を飼う」
ということ自体、思いつきもしなかった。
 
長男が小学校4年生の時。
仕事中に学校から電話がかかってきた。
俗に言う「問題行動」があり、私は関係各署に頭を下げて廻る日々。
 
「どうしてあんなことしたん?」
と、長男に問いただすと
「寂しかった」
と、まるで昼ドラの台詞のような答えが返ってきた。
 
マジか……
 
私が仕事ばかりしていて、長男は寂しかったというのだ。
 
寂しさが軽減されるのであれば、動物好きの長男のために、犬でも飼ってあげようか、と考えていたところ、ブリーダー業を始めたばかりの友達から
「あゆさん、ワンコ飼われませんか?」
のお声がけをいただいたのだった。
 
このタイミングの良さは、きっと「飼いなさい」という神様からのお告げだったと、今でも理解している。
 
動物好きの長男と、動物超苦手な娘たちを連れて、子犬たちが走り回るリビングにおじゃましたのが、11年前。
そこではしゃいでいる息子は放置して。
犬の恐怖におびえていた娘たちの側に「ひょこひょこ」と近づいてきたのが、今のうちの子、ラムちゃん。
 
犬を飼い始めると、長男は落ち着き、問題行動もなくなり、娘たちも動物嫌いから、「犬大好き」に。
180度かわってしまった。
 
犬の力は偉大である。
「子はかすがい」
と言うけれど、犬だって「かすがい」だ。
 
夫婦げんかで家庭内に不穏な空気が流れると、今まで聞いたことのないような声で鳴き始め、私と夫との間を行ったり来たりする。
 
長男をを叱り飛ばしているときは、長男をかばうようにする。
 
子どもたちは何か辛いことがあると、ラムちゃんを抱えて自室で泣いたりしていた。
 
私も「人生のどん底だ」と思っていた時代は、ラムちゃんを抱えて悩み事を打ち明けていた。
 
家族みんなのハッピーもアンハッピーも、全部全部その小さな身体で受け止めて、今日も涼しいお顔でリビングでくつろぐ子。
 
ラムちゃんがいなければ、とっくの昔に家庭崩壊である。
 
大切なラムちゃんのストレスになることは、できるだけ避けたい。
大事に大事に育てている。
 
今日もラムちゃんに語りかける。
「ママの側にいてくれてありがとう。大好きよ。ラムちゃんはママの宝物よ」
「ママと一緒に寝ようね。朝までゆっくり温々しようね」
 
犬は賢い。
自分の役割をきっと知っている。
 
家族をつなぎ止めるという、小さな身体には重荷になるくらいの大きな役割も、喜んで引き受けてくれた。
 
今年12才になるラムちゃん。
人間でいうとシニアの仲間入りだ。
 
一日でも長生きしてもらいたいので、今日も激甘に、甘やかしている。
今夜も私と同じお布団で、あたたかいお布団で、朝まで二人で寝るのだ。
 
おやすみなさい。
 
 
 
 
***
 
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2020-02-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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