冷えたビールと足の裏の微妙な関係
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:柴垣有世(ライティング・ゼミ特講)
「足の裏が起き上がって一歩目がめちゃくちゃ痛いんですけど、そちらでなんとかなりますか」
そう言って電話をくれたのは、トレイルランニングを趣味にしてるAさんだった。
以前マラソンの練習で膝を痛め、それ以来なにか体の不調があるとうちの整骨院に来てくれるようになった。
「足の裏が、痛むんですね。わかりました。○日○時ならご予約承れます」
「わかりました。それでお願いします」
といって電話を切った。
当日、話を伺うと、朝起きてベッドから立ち上がる際の一歩目に激痛が走り、その後しばらくするとだんだん痛みが収まって、普通に歩けるようになる。しかし、仕事中に長時間座った姿勢から立ち上がる際の一歩目も激痛が走ることがあり、困っているのでなんとかしてほしい、とのこと。
最近トレイルランニングのレースで50キロほど走り、そのせいで痛めたのではないかという話だった。
いわゆる足底筋膜炎と言われる症状で、歩くと足の裏に痛みがあり、ひどい場合足をつくのも痛く歩けなくなることもある。
このまま放置していたのでは、次のレースにも参加できなくなる。
Aさんは焦っているようだった。
いくつか全身の検査をしたあと患部をみると、外観からは特に異常は見られない、腫れて熱感があるわけでもなく、患部自体の問題はなさそうだった。
レース後のリカバリーも非常に大切なので、ストレッチをきちんと行ったかどうかを聞いてみた。
「いや~、お恥ずかしい話、あまり大したストレッチはしていないです。やっぱりそいうのをきちんとしないといけないですよね~」
と言いながら笑っていた。
なのではじめは、ふくらはぎの筋肉が突っ張ってしまって足底に痛みを出しているのだろう、と高を括って施術を始めた。
しかし、ふくらはぎの筋肉を緩めても、いっこうに足底の痛みが楽にならない。
ガーン。
やばいぞ、施術の時間はすでに半分を過ぎていた。
内心の焦りを悟らせないように、
「どうも、ふくらはぎの筋肉の問題じゃないみたいですね。これは、内臓のもんだかもしれませんね」
などと言いながら、別の問題がないか探っていた。
「Aさん、レースのあとに飲み会とか出られました?」
と聞くと、
「ああ、あったよ。今週は飲み会続きで、2連チャンだったんだよ~」
と嬉しそうに答えてくれた。
「その時、やっぱり、冷えたビールとか飲まれますよね?」
「ビール飲んだよ。5杯くらいかな。その後、ハイボールに変えて3杯ほど。だいたいいつもそんなパターンかな」
「それが2連チャンですか?」
「そうそう、2日続けて行くことになっちゃったんだよね。それが、なにか悪かった?」
そう、これが大問題なのだ。
その話を聞いて、慌てて内臓の状態を探ってみた。
ああ、やっぱり。
原因は、冷えたビールや冷たいハイボールだったのだ。
冷えたビール?
いや、ビールは冷えているものだろう?
まさしくそのとおりで、ビールは冷えている方が旨い。
しかし、この場合は、ビールの旨いまずいの話ではなく、純粋にその温度が体に問題なのである。
どういうことか?
居酒屋で出されるビールの温度は、だいたい4~6度程度に冷やされているのが一般的だ。
となると、この冷えた液体が一気に体内へと注がれるのである。
飲んでる方の気分としては最高だろうが、体にとって見れば迷惑この上ない話なのである。
人間の体というのは、常にほぼ36.5度の体温を保つよう維持されている。
そこに冷たい液体を流し込み、一気に体内を冷やしてしまうと、どうなるか?
まず、胃が冷たくなってしまう。
そうすると、胃は、十分に消化活動を行うことができなくなり、そしてその冷たさは、周りの臓器もどんどん冷やしてしまうのである。
腎臓や小腸、大腸と言った胃の近くにある臓器が冷やされて、正常な働きができなくなってしまうのだ。
その影響で、腹筋や背筋、インナーマッスルの大腰筋や腸骨筋と言った筋肉も硬くなってしまうのである。
そうなのだ、今回のAさんの足の裏の痛みの元は、内臓の機能低下だったのである。
機能低下を起こした内臓が筋肉をこわばらせ、そのこわばりが、足の裏まで引っ張ってしまっていたのが原因だったのだ。
だから、ふくらはぎの筋肉をいくらほぐしても、足の裏の痛みは楽にならなかったのだ。
ようやく原因を見つけた私は、残り時間を気にしながら、急いで内臓の施術に取り掛かった。
そして、問題の箇所を施術したあと、件の足の裏の痛みの部分を触ってみると、
「ほとんど痛くない!」
「さっきまであれほど痛かったのに。不思議だな~」
と首をひねりつつ、Aさんは喜んでいた。
また冷たいものを飲むと痛むかもしれない、と注意事項をドヤ顔で話しながら、内心冷や汗をかいていた。
ふう、今回もどうにかなった。
ヒヤヒヤものだ。
私もこれ以上肝を冷やさないように、もとい、体のために今夜はぬるいビールにしておこう。
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