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べんぴねこ


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記事:加藤なお美(ライティング・ゼミ平日コース)
 
カチーン。コロコロコロ。
 
冷え込みがきつかった2月始め。2日連続でゴハンを食べなくなった飼い猫オヒゲニャー(オス15歳)をお世話になっている獣医さんのもとへ、慌てて担ぎ込んだ。
 
「便秘ですね……お腹がカチカチです」
「えっ」
「こう尻尾が丸くなっている猫ちゃんに多いのですが、腸が正常の形では無い事が多いんです。排便する時に滞留しやすくて、無理していきむ、腸が袋状に伸びる、また滞留という悪循環になってしまうんです」
 
「腸の形が……」
 
聞いただけでも、深刻な状態だとわかった。ネコもこんなにひどい便秘になるなんて初めて知った。オヒゲは幾つになったんだっけ。じゅう……15歳。人間だったら73歳。
73歳のおじいちゃんが、ひどい便秘に苦しんでいるなんて……。
 
「ニャアー〜ッニャ〜ッ」
 
オヒゲは、ゴム手袋をはめた先生の手で、カチカチの便を30分かけてかき出して貰い(摘便という)、途中、便が床に落ちた時、小石が転がる様な音がした。
 
カチーン。コロコロコロ。
 
「ウンチが転がる音じゃないよ、オヒゲ〜」
 
先生は笑っておられたが、あり得ない音に私は冷や汗が出た。オヒゲはヨードチンキで色変わりした尻尾をタオルで優しく拭きとられ、グッタリしていた。オヒゲの体を撫でながら先生の言葉を聞いた。
 
「食事は排便しやすくなるフードに切り替えていきましょう。後は……様子を見ていきましょう」
 
様子を見る。よくお医者さんに言われる言葉だ。現状は手の出しようが無いので、また来てくださいね、という意味だ。どうしよう。
 
今まで沢山の猫と暮らしてきたけれど、便秘で苦しむ猫は、初めてだった。
15年前、オヒゲは、もう子猫とは言えない大きさの時にウチにやって来た。獣医さんの所で引き取り手が見つからずに売れ残っていた子猫だった。
初日から他の猫と全く馴染めず、距離を置き、離れた所でひとりで眠る、ひと言も鳴かない置き物みたいな猫だった。3年を過ぎたあたりからようやく鳴いたり、オモチャを持って走ってきたりするようになった、とても我慢強い、つましい猫なのだ。そんな子が苦しい思いをしていると思うと、悲しかった。
 
家に着いてオヒゲは、ほんの少し水を飲み、フラフラと寝室へ消えていった。
オヒゲの為にも一刻も早く何とかしてあげたい。とにかく情報収集を試みようとネットで調べてみて驚いた。
世の中に便秘で苦しんでいる猫はとても多かった。飼い主さんたちも、お腹をマッサージしたり、飲み水に気を使ったり苦心しているようだった。
オヒゲは尻尾が短い。ボブテイル、尾巻き猫といわれる種で、白黒の日本猫である。尻尾が短い猫は便が滞留しやすく、加えて10歳以上の高齢猫だ。高齢猫は筋力が弱くなり、腹筋を使って排便の構えが出来なくなったりする。排便出来ないので、お腹が空かない。ゴハンを食べないので貧血を起こす猫もいるらしい。気に入らないトイレだと排泄をしなくなることもあるという。
 
ザッザッザッ……
 
廊下から、トイレに入って砂をかく音がする。シーン。出なかったみたいだ。
 
1、排便時の猫の様子をチェックし、大声で鳴いて排便している様なら、便秘中。
2、出た便をチェックして、コロコロと水分が無い小さな便なら便秘中。大きくて艶のある便なら違う。
3、トイレに行っても、使われた形跡が無い。
まだまだあるのだが、重要ポイントはこの3つだ。
たかが便秘と言っても、腸内の腫瘍がつかえて出ない場合などもあるので、これらの症状があるなら直ちに獣医師の診察を受けるべきなのだ。
 
数日間、水、乳酸菌、猫用オリゴ糖などを与えてみたけれど、サッパリで、オヒゲの便秘はかなり深刻だった。何がなんでも出してさっぱりしてもらいたい。
最終手段で人間用の腸にいいものを試してみようと、あるビフィズス菌に目を付けた。甘いヨーグルトは猫の腎臓を壊してしまうので与える事は出来ない。
そうだ、サプリならと思い、見つけたのだ。森永乳業が作っているBABY FLORAというビフィズス菌300億以上入っているというスゴイ物を発見した。獣医の先生にも確認をし、オーケーが出たので、投入を開始した。
ヨーグルト風味の粉状の物が2gスティック状になって個別包装されている。
 
薬を飲む為の小さなシリンジ(注射器)で、ほんのひとつまみのビフィズス菌300億を5㎖の水に溶かして数回飲ませたのだ。食物繊維と一緒に摂ると、ビフィズス菌が最大限の仕事をすると聞き、食後に投入を始めて、2日目にソレはやってきた。
こんな小さなお腹の中に、こんなに入っていたのかと思うほど、立派なのが出てきた。オヒゲもようやく目が輝いてスッキリした表情だった。そして数日ぶりにゴハンを食べ始めた。
 
2月22日は猫の日。トイレ覗きで排便健康チェックをお勧めする。猫に嫌がられても、是非とも覗いて見て欲しい。飼い主の愛のある覗き見行為を猫ちゃんと共に、楽しんで頂けたらと思う。
 
 
 
 
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2020-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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