ライティング・ゼミで再会した同級生
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:サカ モト(ライティング・ゼミ平日コース)
「洋服の下に、まだパジャマ着ているの?」
私はものぐさだ。
特に朝は少しでも無駄な動きはしたくない。
身支度なども最低限に抑えて、1秒でも長く寝ていたい。
だから学生時代、私は朝、起きると、パジャマを脱ぐことなく、その上にブラウスを着て、スカートを穿き、そしてブレザーを着込んで登校していた。
それをいまだに同級生たちは覚えている。久しぶりに再会した友だちは、必ず「まだパジャマ着ているの?」と聞かれる。
うちの高校は女子高で、おかしな校則が多く、しかもとても厳しかった。
たとえば「下校途中の寄り道は禁止」という校則がある。しかし高校生は放課後、お腹がすくと相場が決まっている。そしてガマンできず、パン屋で買い食いをする。私的には、これは正しい高校生の姿だと思うのだが、店を出た瞬間、建物の陰に隠れていた先生が「ヌー」と現れて即確保。その後、親まで呼び出され、こっぴどく怒られる。
たかだかパン一個で犯罪者になるのは、ジャンバルジャンか、うちの学校だけだと私は思っていた。が、その頃、私は「校則がおかしい」と意を唱える術を知らない子供だった。だからただ黙ってガマンするしかなかった。
そんな私の3年間は地獄だった。
いつも心の中で“この学校の常識は、社会の非常識”だと呟いていた。そして世の中にはまだまだ違う価値観があるはずだと信じて、図書館で本を借り、読みまくっていた。
私は社会を斜に見る作家が好きだった。サリンジャーや、太宰治はほぼ全部読んだ。
学校の図書館は本を借りる時、貸出カードに名前と返却日を書いて、持ち帰るシステムになっていた。私が貸出カードに名前を書く時、必ずその上に見覚えのある同級生の名前があった。
その彼女とは、貸出カードの中ではよくバッティングするが、リアルな学校生活では特に親しく話したりする仲ではなかった。ただうちの学校は、1学年100人前後しかいないので、当然顔は知っていたいし、世間話ぐらいはした。
しかしいつ頃からか、同じ本を読んでいるという勝手な連帯感を一方的にもった私は、ひそかに彼女をマークしていた。
すると面白いことがわかったのだ。クラスメートがくだらないことで「キャーキャー」騒いでいるとき、彼女はその集団から少し離れた位置にいて、みんなが注目している視線の、斜め45度ぐらいを見つめている。事件が起きているところを直視すると、見えなかったものも少し離れると、視野が広くなり、見えるものが違ってくる。しかも少し視線をズラすると、さらに思わぬものが見えたりする。
彼女はこれを見ていたのだ!
そんな彼女と最近、再会した。
場所は天狼院の「ライティング・ゼミ」。
初めて課題を投稿した後、私は他の受講者の作品を読んでいた。そのなかに「うん?」と思う1本があった。
名前に見覚えがある。しかし同姓同名かも知れない。でも原稿を読んでいくうちに、確信した。この引いた位置からの斜め45度で物事をみる視点、これは間違いなく彼女だ! 確信をもって、次の講義に臨んた。
当日はたまたま彼女の隣の席をキープした。おお、この話し方、声のトーン、間違えなく彼女だ!
私は勇気を出し名乗ってみた。
それから隔週、私は彼女と講義で会い、帰りの電車で色々な話をした。
課題の話もしたが、主に「もうネタがない。書くことがない」と愚痴だった。
「かけない」という彼女だが、毎週、課題をきちんと提出する。
私は何度もくじけそうになるのだが、彼女につられるように月曜のギリギリに、なんとかテーマを絞り出し、やっと1本完成させてきた。
そんな4カ月も終わりに近づいている。
そして彼女のおかげで気が付けば講義も無遅刻、無欠席。課題もなんとかすべて出している。
きっとみんなは言うだろう。
「天狼院のライティング・ゼミで同級生と再会するなんてすごい偶然!」と。
でもそれは違う。彼女とは出会うべきして、出会ったのだ。
学生時代、多感な時期を閉鎖された特殊な環境で過ごし、そのなかで同じような本を読み漁った私たち。そろそろ人生のゴールがチラホラ見え始めてきた頃。ずうっと抱えていた爆弾が、破裂寸前のパンパンに膨らんでいることに気が付いてしまったのだ。しかも同時に。でもそれは偶然ではなく、当然のこと、だって私たち同級生なんだから。
そして表現したい欲求がマックスになった今、私たちは天狼院で再会した。
そんな彼女も再会した夜、「まだ洋服の下にパジャマを着ているの?」と聞いてきた。私は笑ってごまかしたが、もちろんその日も、洋服の下にはしっかりパジャマを着込んでいた。
が、はたして彼女はそのことに気が付いているのだろうか。
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