メディアグランプリ

42.195kmが私にくれたもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:氏野祥太(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「4時間25分か…こんなもんやろ…」
 
2年前のフルマラソン完走後の感想である。
 
10km地点までは快調だったものの、15km地点からみるみる失速し、26km地点では歩いてしまった。
歩いてしまえば、この記録も無理はない。なんとなく走った感覚はあったものの、疲れた程度にしか感じていなかった。
 
あれから2年、ランニングが趣味だった私は、ふとこう思った。
「ランニングが趣味なのに、フルマラソンで4時間を切られへんってなんかダサいなぁ。」と。
フルマラソンはきつい。体中のあちこちがぼろぼろになる。お金を払ってまで、あんなにも辛い思いはできないと考えていた。
 
そんなある日、会社主催のフルマラソンの応募があり、会社の先輩から「一緒に出てみいひんか?」と誘われ、ダメ元で応募してみた。当たるかはわからない。正直当たらなくても良い。
 
それから2か月後の結果発表日、メールで当落結果が分かる。
それらしきメールを開いて見えた「当選」の2文字。
嬉しい反面、覚悟と不安に襲われたのが本音である。
 
それからというもの、4時間を切るために練習の日々が続いた。
まずは、練習法から見直す。全て走り切れないのは、まず「走る筋力」がないからだと、徹底して走りこむ。
月間55kmだった走行距離は70、100、130kmと伸ばしていった。
もちろん目標タイムに合わせたペース管理した練習が重要。10km走る程度なら、楽なペースも、それ以上の距離では辛くなってくる。一度に走る距離も伸びた。今までは最長10kmだったものの、毎週土曜日の朝は20kmを走った。
久しぶりに実家に帰ると、私の脚を見て母は驚きを隠せなかった。「あんた、太腿裏に何か詰めてるんか?」と。
 
そして周りの人に目標宣言。
「4時間切ります!」と会社の方々、友人、妻にも公言して本番まで自分を奮い立たせた。SNSにも投稿。
切れなかった時は、本当にダサい。
 
迎えた本番。生憎の雨。気温は予想に反して低め。
ただ、そんなことは言い訳にしない。自分の力を出し切るだけ。
 
スタートから2km。
周囲のランナーが邪魔で思い通りのペースで走れない。ただ、我慢。集団がいなくなれば、ペースを上げればよい。
 
8km地点。
持病の踝痛が発症。
ただ、想定内。ポケットには、妻からもらったロキソニンを6錠…ない!!
鞄に入れたまま大会運営者に渡してしまっていた。誤算。どうにも対処できない。
 
15km地点までは起伏の激しい道のり。踝の痛みと闘いつつも、集団から抜け出せたため、ペースアップ。
 
22km地点、会社の方々が応援に来てくださっているポイント。「うじのー!頑張れー!ターミネーターみたいな走りを最後までー!」悪口ではないか?
と思いつつも、応援の力はありがたい。鈍い脚の動きを、応援の力が前に進めてくれる。
 
30km地点。河川敷の砂の上を走る。雨のせいで、ぬかるんでいる。でも、止まると体に堪える。ゆっくりでも走って前に進む。
 
32km地点では妻が応援してくれていた。もうほぼ動かない脚がゼンマイを巻かれたオルゴールのように動き始める。
 
35km地点。太腿裏がつる一歩手前の状況。でも止まったらきっと再生不能。走りながら太腿裏が伸びるような走り方を模索する。そして水分補給。脚がつるのは水分不足ということを聞いていた私は、とにかく走りながら水分補給。
 
38km地点。最後の上り坂。明らかにスピードが落ち、このままのペースでは4時間を切ることは微妙なところ。ただ、歩かない。
 
40km地点。上った後の下り坂。脚がつらないよう、残る力を振り絞り、38km地点からは見違えるほどのペースで飛ばす。
 
42km地点からは「最後飛ばしていれば…」とならぬよう、全力疾走。
 
そしてゴール!
 
手元の時計では達成しているものの、何が起こるかわからない計測競技。ゴールの安堵と達成状況が分からない不安を抱えつつ、個人結果の確認に向かう。
結果は…
 
3時間58分37秒。
 
やった!やったで!!
目標達成や!!前回から27分短縮や!
 
心地よい疲労に代わり、妻とも抱き合った。
今までの苦労が報われた! しんどい練習をしてきてよかった!
 
台風の後の空のような気持ちで、充実感を覚えた。
 
興奮冷めやらぬまま、帰りの新幹線の中で、今回の目標達成について冷静に分析してみた。
 
大きかったことは三つかもしれない。
一つ目は、何よりも「準備」。課題だった後半のペースダウンを、いかに抑えるかを周囲の人に聞いて回り、4時間を切るための練習を情報収集。そして、何より練習量。仕事後、休日の早朝も練習に費やした。妻には家事という面でも迷惑をかけたかもしれない。目標達成のための質と量を追求した準備を徹底できたことが大きかったと思う。
 
二つ目は、応援の力。辛い時、前を向ける応援の力は大きい。何より、誰かもわからないランナーのために家から沿道に出て応援して下さる方には感謝だ。鍋の蓋と泡だて器を楽器のように鳴らして応援してくださっていた高齢の女性を、私は一生忘れないかもしれない。
 
三つ目は、想いの熱量。一つ目と重なるが、ここまで練習してきた自負と、約束した皆様にダサい結果は見せられないという気持ちが、35km地点からの7km強を支えてくれた。格好をつけるということは大事だった。
 
目標達成に向けて、全てに当てはまるかはわからないが、「目標を見据えた努力の質と量」「外からのモチベーション」「達成する想いの熱量」が重要だったと教えてくれた42.195kmに感謝したい。
 
 
 
 
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2020-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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