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メディアグランプリ

「恐怖!耳からアレが抜けなくなった話」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:kotokoto(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
まずい。
これはもしかしたら本当に、まずいかもしれない……
 
右耳の違和感は、どんどん強くなっていく。
 
今日は祝日、病院はどこもお休みだ。
救急外来にかかるべき?
いやいや、こんなことで行ったら迷惑だし、第一恥ずかしい!
 
とにかく、
まずは汗を流すためにシャワーを浴びたい。
でも耳にアレが入った状態でシャワーをしたら、余計酷いことになる?
 
あと1時間で私は、シャワーを浴び、着替えメイクをして、夕飯を作り子供達を迎えに行かなければならない。1分も無駄にできないのに……
私は半ば放心状態で、その場に座り込んだ。
 
その日、私は実家の母に子供達を預け、自転車でジムに向かった。
AmazonMusicで適当に選んだ(だけど最高の選曲だった)阿部真央ちゃんのベストを聴きながら、軽快に自転車を漕いでいった。
 
耳にイヤホンをしながら自転車を漕ぐことはいけないことなのかもしれない。
普段自転車を乗る時というのは、子供を前後に乗せている状態なので、音楽を聴きながら自転車に乗るなどということは、まずない。
けれどもこの日は珍しく1人で30分程の移動距離、加えて小春日和のお天気でなんだか気分が良くて、音楽を聴きながらサイクリングを楽しみたい気持ちになったのだ。
片耳だったら許されるかな? よく分からない正当化をして、ワイヤレスのイヤホンを、左耳にだけつけた。
 
実際、とても爽快だった。
音楽を聴きながら自転車を漕いでいると、どこまでも行けるような気がした。
 
その後のジムでも、いつもより余計に汗をかき、本当にさっぱりとした気持ちだった。
この後起こる不幸を全く予想していない私は、もう最高にご機嫌で鼻歌なんか歌っていた。
 
さぁ帰ろう。行きは左耳だったので帰りは右耳にイヤホンを装着して帰りも軽快に自転車を漕いでいこう。
 
ワイヤレスイヤホンというのは、慣れていても、時々耳の形にうまく装着できないことがある。落ち着いてやればスポッと、シンデレラフィットするのだけれど、ちょっと雑にやったり、急いでつけようとしたりすると、角度が悪く上手くフィットしない。
 
この日、最高に調子に乗っていた私は、自転車を運転しながら右耳に雑にイヤホンを押し込んだ。
しっくりこなくて、ぐりぐりぐりぐりイヤホンをフィットさせようとしていた。
 
これがいけなかった。
 
なかなかフィットしないので、一旦耳から外してみると、なんとイヤホンの先に付いているイヤーピースがない!
 
このイヤーピースとは、イヤホンに付属していたシリコン製のもので、3種類の大きさがあり、フィット感や聞こえ具合を調整するものである。
取り外し可能なものなのだが、それがひょいっと耳から外す瞬間に、取れてしまったのだ。
 
しまった。落としたか……。
 
わざわざ自転車で来た道を戻りながら、あの小さなシリコン製の黒いパーツを道路上に探すのは非常に困難。それにとっても面倒。
 
あきらめよう……
なくしちゃったこのサイズが、一番自分の耳に合っていたのにな。
残念だけど、まぁ、これからは一つ上のサイズを使うしかないか……
などと、ショックを受けつつ考えていた。
 
ところが、その後5分ほど自転車を走らせていると
 
なんか耳が変。
 
右耳の違和感に気づき始めた。
 
なんか詰まってる気がする。
 
なんか小さいものが私の耳の中にある気がする。
 
もしかして、イヤーピース?
嫌だ、耳の中に入ってたの!?
落としたんじゃなかった!! いやーん、良かったぁ。
 
「良かった」のんきな私は、真っ先にそう思ったのだ。
あまりに鈍感な自分に苦笑しながら、信号で止まった時、人差し指を耳に突っ込んで取ろうとした。
 
……いやいやいや、無理無理。
人差し指は耳の中に入りません。
 
今度は小指を入れてみた。
 
もそっという音がして、違和感が余計にひどくなった。
嫌な予感。
こ、小指じゃ無理だ。早く耳かきを!
 
そこから約25分、定期的に頭をブンブン振りながら自転車を走らせた。
振動でポロっと出てくることを期待して。
通り過ぎる人のぎょっとした視線もお構いなしに、とにかく頭を振りながらハイパワーで自転車を漕いだ。もう心臓はバックバクである。
 
家に着くと真っ先に耳かきを取り出し、耳に突っ込む。
 
私は自称「耳かき名人」というほど耳かき好きで、これの扱いには相当慣れているつもり。
 
ゴソッ
ギュイッ
 
またまた嫌な予感。これはもしや……さらに押し込んだ!?
 
運動の爽やかな汗は、すっかり冷や汗に変わってしまった。
身体が冷えたのか緊張のせいか、がくがく震えてきた。
 
え、ちょっと待ってうそでしょ。鏡!
洗面所に耳を映そうとするも、角度が悪く見えない。
手鏡を使って合わせ鏡にして見た。
暗くて全く見えないーーーー。
どうしよう。
 
そうだ! Google先生っ!
出てくる出てくる検索結果。結構多い事例なのね。
そしてだいたい書いてあることはほぼ同じで要約すると
 
自分で耳かきなどで取ろうとすると余計に押し込んでしまうので、やらずに、耳鼻科に行きましょう。
 
あぁ……私のことだ。
やっちまった。
これは本当にまずいやつかもしれない。もうパニックである。
だけど、今日は祝日で病院は休み、明日は仕事休めないし、というかこれから友人のバレエの公演を観に行くのだから、もういますぐ何とかしなくちゃいけない!
 
またしても往生際悪く、何度も自分で耳かきチャレンジをすること5分後
 
私はようやく負けを認めた。自分じゃ無理……。
 
すぐに母に電話し、事情を説明すると、賑やかな子供たちと共に救世主のようにやってきてくれた。
 
5歳の娘に、スマホのライトで耳の穴を照らすよう指示をしながら母の調査が始まる。
 
「あぁ、あったわ!」
 
一筋の希望の光。
 
「とれるかしら? あら? よい。よっ。おっとっと」
 
そこへ、いろんな意味で怖くて震えている私の心に、さらに追い打ちをかける悪魔の声。
 
「Kちゃんも! Kちゃんもやーりーたいー!」
ピンセットをよこせと駄々をこねはじめる3歳次女。
 
「ちょちょちょちょっと待っててね。今ちょっと集中してるからね」
「やだー、KちゃんもKちゃんもー。ばぁば、ずるいー。うぇーーーん」
 
泣き叫ぶ次女にも負けず、母は耳の中の小さなものと戦っていた。
やっぱりこういう時に頼りになるのは母親だな。母、強し。と思いながら、祈るだけの弱い母親である私。
 
「取れたっ」
 
母の手に、コロンと小さな黒いイヤーピース。
 
どうにかこうにかピンセットで、救出成功!!
よ、よかったぁ~。
 
「みせて、みーせーてー!」
「Kちゃんも! Kちゃんも~!」
 
うむ。ちゃんと聞こえる。
もうこんなことはこりごり。
「これからは絶対に優しく挿入しよう。」
そう心に誓った休日だった。
 
 
 
 
***
 
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2020-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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