女性にとっての本当の働きやすさとは
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:中村未希(ライティング・ゼミ特講)
「妊娠していますね」
そう産婦人科医に告げられた。
頭の中が真っ白になった。
何も考えられなかった。
当時私はIT関連の上場企業で営業の仕事をしていた。
朝は7時に出社し、メールチェックや資料作成をこなし、就業時間中は顧客との打ち合わせを行い、終礼が終わった後は終電近くまでデータの分析を行うといった毎日を過ごしていた。
同僚や上司もすごくいい人ばかりで、仕事が好きだった私はとても楽しく働いていた。
同時に大好きな彼氏もいた。
当時私は福岡、彼氏は東京で遠距離恋愛をしていたのだが、私の帰宅と同時にテレビ電話をし、寝るまで話をするというのが日課だった。
月1は飛行機でお互いのマンションに遊びに行ったりして、とてもいい関係を保っていた。
そして入籍しようと婚約指輪を買ったつい2週間後に妊娠が発覚したというわけだ。
妊娠を告げられた私はひどく動揺した。
親にも彼のことは伝えてあったし、何より私はこの人と結婚するんだと心に決めていた。
順番は違えど、とても幸福なことなのに、私の頭の中はひたすら真っ白になっていた。
「もう仕事ができなくなる」
私の頭の中は赤ちゃんを宿した喜びよりも先に、仕事ができなくなる恐怖を感じてしまっていたのだ。
実際つわりがひどかった私は、そのまま休職せざるを得ず、出産と同時に育休へと入った。
上場企業は制度もしっかりしていて、金銭的な面でも不自由なく生活することができた。
子供は可愛かった。マンションの周りには多くのママ友もできて、たくさんの人に囲まれながらこれ以上ないくらいに楽しい育児休暇を過ごした。
そんな中でも仕事がしたいという思いは日に日に強まるばかりだった。
育休期間も終え、旦那の住む東京本社で復職をすることになった。部署も比較的働きやすい部署に変えてもらい、また仕事をできることに喜びを感じていた。
でも以前のようにはいかなかった。
働く時間も時短勤務にしていたので、部署から1人だけ早く帰る私はいつも肩身の狭い思いでいた。朝出勤しても「昨日みんなでご飯を食べに行った」という同僚の話を聞いたりして疎外感を感じていた。
仕事内容も部署が変わったことで以前の好きだった業務が恋しかった。
いつしか転職を考え始めていた。
そうこうしているうちに、2人目を妊娠した。
兄弟ができる喜びを感じながらも、仕事と家庭を両立するなら、別の働き方を考えようと心に決めた。2人目の産休中にオンラインのウェブ制作の講座を受講し、そこで身につけたスキルを生かして転職した。在宅も認められていて、「子育てをしながら働く人を応援したい」と話してくれた子沢山の社長が経営する中小企業で働くことにした。
だが結果から言えば、そのウェブの制作会社には子育てしながらも働きやすい環境は整備されていなかった。子育て中の女性社員は私だけで、マネージメントも行き届いていないおらず、社員は残業続きの毎日を送っていた。体を壊す社員も多く、私自身も活き活き働くこととは程遠く、日々疲れ切っていた。
そんな時に旦那の起業の話が出たのだ。
「手伝って欲しい。」と言われた私は、2つ返事で承諾し、ウェブの制作会社もやめ、旦那の会社で働くことを決めた。事務作業ははじめてだったが、会社の登記から社会保険等の登録、税理士探しなど、経験のないものごとを進めて行くのは楽しかった。簿記の資格も取り、いくつかの会計ソフトを使いながら経理の仕事をこなしていった。自分の「できること」が毎日増えて行くことが実感でき、自信がついていくのがわかった。
子育てをしながら働いていると、仕事での達成感を感じることが難しかったり、キャリアに悩んだり、時間との戦いがストレスだったり、といった悩みが出てきがちである。ただ私は旦那の会社のバックオフィスの業務をこなすことで、やっと子育てと仕事を両立しながら楽しく働くことということを実現したのだ。
今はより会社経営に役立つ知識を身に付けたいと思い、旦那の会社も手伝いつつ、税理士事務所に働きに行っている。週3日、パートとしてお手伝いさせもらっているのだが、毎日新しい知識を得ることができ、また前職で培ったウェブの知識も事務所内で活かすことができ、充実した毎日を送っている。子育て社員も多く、人事の社員の方が素晴らしくマネージメントが行き届いていて、社員みんなが活き活きと働いているとても素晴らしい事務所だ。
4社で働いた経験を通して、真の働きやすさとは、「達成感の得られる業務やキャリアアップができること」「社員にとっての働きやすい環境作りやマネージメントが適切に行われていること」「社内の人間関係が良好なこと」の3つが兼ね備わってはじめて実現するのだと思う。
今後も子供の成長や会社経営を続けて行く中で、働く環境も変わって行くと思う。しかし、自分にとってその時何が一番重要かという優先順位を把握し、学び続ける姿勢を持ち続ければ、働きやすい環境も子育てと仕事の両立も立派にこなしていけると思う。泣いたり悔しい思いをしたりと試行錯誤しながらも、自分らしく生きていけるよう努力し続けた自分を、今は誇りに思っている。
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