メディアグランプリ

ガチャ集めに見るハンカチ落としの原理


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Yuki (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
小さい頃、町中にあるガチャガチャに魅せられて親におねだりしたことがある人は多いと思う。
かくいう私も、貴重なお小遣いを使い、よくお目当てのガチャガチャを回していた。
他にもお小遣いの使いどころはいくらでもあったはずなのに、何が出るかも分からないものによく大金を叩いたもんだ。
 
当時の自分にとって、ガチャガチャを楽しむ要素は2つあった。
先ずはスロットマシーンと同様に、運試しの要素があること。
何が出るか分からないけど、欲しいものは決まっている。そしてお小遣いにも限界がある。
限られた回数で自分の求めていたモノが手に入るか?
この博打の様なスリルに小学生ながらもワクワクしたものだ。
 
そしてもう1つは、シリーズをコレクションする要素。
中身はたいしたことないものでも収集癖に火がつくと是が非でも集めたくなり、想像以上に百円玉を投入する。
自制心が問われる中で歯止めがきかず、気が付けば同じフィギュアを2つも3つも持って帰るのも、特に珍しいことではないと思う。
 
そんな子供時代から20年ほど経った今、以前にも増してガチャガチャブームが来ているように見受けられる。
もはやガチャガチャは子供の遊びではなくなり、大人の娯楽にもなりつつある。
ふとした瞬間、自分自身もそんな大人の仲間入りを果たした。
2013年より、電通テックとタカラトミーアーツがタッグを組み、パンダの穴というカプセルトイブランドを開発した。
このブランドのラインアップは実に独特な世界観を持ち、本来であれば企画段階で消えて行きそうなほど奇抜なアイディアを具現化している。
「考える人」をパロディーにした「考えない人」シリーズ、世界の山脈を亀の甲羅で表現した「マウンテンタートルズ」シリーズ等、とにかくクスっと笑ってしまうようなものばかりなのだ。
中でも自分自身が集め始めたのは、最近巷でも話題のシャクレルプラネット。
このシリーズ、動物のアゴがシャクレている事以外は何の変哲もないフィギュアであるものの、見れば見るほどクセになるフォルム。
星のカービィや貞子ともコラボしていて、メインの動物シリーズも第5弾まで出ている人気商品だ。
私が最初にシャクレルプラネットに出会ったのは約3年前、まだ第二弾が出始めた頃だった。
そして数か月に1回見かけてはガチャを回す日々を続けていた。
 
のんびりガチャ集めをしていた中、半年ほど前に私は転職をした。
以前はフリーアドレスだった会社のデスクも 現職では一人一人にデスクがあてがわれ、折角だから自分らしさを出そうと装飾を始めた。
そこでコツコツ集めていたシャクレルプラネットのフィギュアを、試しに置いてみた。
すると、今までは怖くてなかなか話が続かなかった他部署のマネージャーが、デスクに遊びに来てフィギュアをいじり倒して帰って行ったのだ。
これは「もしかしたら使えるかも?」と思い、更にコレクションを積極的に増やし始めた。
 
当初ガチャガチャを集め出した時は、ただの自己満足の為であった。
独特な世界観を持ったガチャガチャを、もっと見て行きたいと思ってコツコツ集めていただけ。
しかし今はそれだけでなく、町中でハンカチを落とすのと同じ効果を期待するようになった。
本来ハンカチを落とすという行為は、気になる人の前でさりげなくハンカチを落とすことで目を引き、話のキッカケを作る恋愛手法である。
私の場合はハンカチではなくガチャガチャのフィギュアをデスクに置くことで目を引き、普段かかわらない会社の人達とのちょっとした会話のキッカケを作っている。
 
さて、次第にデスクの上のコレクションが増えることで、強面マネージャー以外の人からも声が掛かるようになった。
業務以外で話したことがなかった人も、デスクに寄ったついでにシャクレルフィギュアのシュールさに突っ込んでから自席に帰るように。
更には自分の趣味やコレクションについて話しに来る人まで出てくるようになった。
 
一番衝撃だったのは、先日ふとコレクションを見てみたら見覚えのないフィギュアが1体増えていたこと。
たまたま自分の持っていないものを持っていた人が、親切心で置いて行ってくれていたのだ。
この時は自ら色んな人に聞き回って犯人(という名の寄付者)を探した為、一気に数名と話す機会を作り出せた。
もはやただハンカチを落とすより、遥かにキッカケ作りの効果が表れていると思う。
 
今後も不愛想なあの人や一度話してみたいこの人も、増えたガチャガチャに気付いて話し掛けてくれたら……。
そんな期待を抱き、今日もガチャガチャと言う名の“ハンカチ”は落としたまま。
 
 
 
 
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2020-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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