メディアグランプリ

宮下草薙の宮下に自分を重ねてしまう話


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記事:いのししさん(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
『世間から、宮下草薙に宮下はいらないと思われている』
 
これは、とあるテレビのトークバラエティ番組での、若手お笑いコンビ「宮下草薙」のツッコミ・宮下兼史鷹(けんしょう)の発言である。
 
ご存じの方も多いかもしれないが、宮下草薙は昨年から人気に火が付き、テレビへの出演も多くなった売れっ子芸人で、特に、ボケの草薙にいたっては、挙動不審でネガティブなキャラクターが世間の好評を博し、ピンでも多くのテレビ番組に出ている。
 
しかし、今回私の心を動かしたのは、そんな人気者の草薙の陰に隠れた、宮下の存在である。
 
番組の中では、今年が芸能界で生き残れるかどうか勝負の一年になるという芸人たちが、今の悩みや不満を打ち明けていた。
それぞれのコンビが、今抱えている問題を話していく中で、宮下草薙は、草薙の人気上昇に伴って生じた、コンビ間の気持ちの変化に触れていた。
 
どうやら、売れる前は宮下が草薙に厳しくお笑いの指導をし、草薙がピンで出演する番組の想定シミュレーションを二人で行うなど、宮下が草薙に教える立場だったようだ。しかし、草薙のテレビ出演が増え、場数を踏むことでどんどんバラエティに順応していく姿を見て、「自分のシミュレーションなどお笑いマニアの戯言に過ぎなかった」と、自信を失い、草薙以上にネガティブになってしまったというのだ。冒頭の発言はその流れの中での一言である。この話題の間、終始苦悶を浮かべる宮下の表情をカメラが捉えていた。
 
TVショーにしては少し深刻過ぎる悩みである気もしたが、先輩人気芸人の千鳥やMCの蛍原が、「そんなことないよ!」と明るく笑いに変えてフォローし、番組自体は何事もなく進行していた。
 
しかし、私の中には、何か引っかかるものを感じた。
「自分も同じような気持ちになったことがある」という思いであった。
 
私は社会人3年目のサラリーマンであるが、入社当時は、同期の誰よりも早く成果を残して、優秀なビジネスマンになるんだ! と意気込んでいた。
しかし、ふたを開けてみると、確実に結果を残していく同期の一方で、初歩的なミスでチームの足を引っ張り、ミスの火消しで残業を積み重ねる自分。当初のイメージとは程遠い現実の力不足の自分。周囲を気にしすぎるところのある私は、有能な仲間の活躍を横目に、過剰な劣等感に悩まされていた。
「自分はこの会社にいるべき人材ではない」と、本気で感じていた時期もあった。
だから、テレビで苦悶の表情を浮かべる宮下を見て、他人事のようには思えなかったのだ。
 
おそらく、私以外にも、職場や学校や色々なコミュニティで、同じような悩みを持った人はたくさんいると思う。自分が思い描いていた理想と、びっくりするほど冴えない現実とのギャップに悩み、病み気味になっている人が。
 
そう思えてくると、なんだか宮下に自分を重ねて、「がんばれ!」と応援したくなってくる。
 
本来、テレビバラエティとは、その道のプロフェッショナル達が、あの手この手を使って視聴者を笑わせ、束の間の娯楽を提供してくれる、そんなエンターテインメントなのかもしれない。宮下だって、そうやって人々を笑わせ、元気づけるようなことがしたくて芸人になってのではないだろうか。
けれども、自分と同世代の芸人が、テレビの中で、実力不足や劣等感に苦しみ、もがきながら戦っている姿も、胸を打つものがあって、それはそれで一つのエンターテインメントなのではないかと思う。
 
私自身、職場で自らのミスを詫び、上司に怒られている姿を周囲に見られるだけでも、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなるのに、自分の実力不足が全国のお茶の間に流れてしまうテレビの世界は、想像を絶する恐怖があるだろう。
 
番組を見終わってから、私は宮下に注目するようになり、Youtubeで宮下草薙の漫才やテレビ出演時の動画を見るようになった。
その中で、彼らがこの1月からスタートしたラジオの冠番組を発見した。聞いてみると、宮下が軽快にトークを回し、草薙のエピソードトークで爆笑を取っていた。他にも、宮下はピン芸の漫談ネタを200本も持っており、ピン芸日本一決定戦の「R-1グランプリ」にも何度も挑戦しているようである。私が思っていた以上に、彼は一人の芸人としてしっかりとした実力もあり、また、ピンでも舞台に立てるよう努力も積み重ねているようだ。
 
テレビのトークバラエティ番組では、大勢のタレントが出演する中で、限られた持ち時間の中で結果を残さなくてはならない。そうしたシステムでは、キャラクターの強い人間が脚光を浴び、地味な人間はインパクトも残せず、「じゃない方芸人」のレッテルを貼られてしまうことも多い。
 
けれども、漫才やラジオ番組など、自分のホームグラウンドでは、しっかりと実力通りの力が出せているのである。きっとまだ、アウェイでの戦い方に慣れていないだけなのだろう。
 
そんなところも、会社という組織の中で、予測できないしがらみに悪戦苦闘する自分に重ねてしまう。
 
以上、つらつらと述べてきたが、結局何が言いたいかというと、お笑いコンビ「宮下草薙」の宮下は、別段面白いわけではないが、どこか気になる存在だ、ということである。
 
芸能界という荒波に飲まれ、もがきながらも戦っている姿を見て、自分もがんばろうと思えた。優秀なビジネスマンになれなくても、「じゃない方芸人」でも、生き残っていく術を見つけなくてはならない。
 
俺も、がんばる。宮下も、がんばれ。
 
 
 
 
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2020-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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