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メディアグランプリ

恩師の稲妻に打たれた、ある晴れた日の出来事


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:相内 洋輔(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あなたはいま、自分の人生を自分で捨てようとしています。気づいていますか? あとは自分で考えてください。」
 
そう言って先生は教室から足早に出て行かれました。コンクリートを打ちっぱなした、殺風景な部屋に一人残されたぼくは、先生が伝えてくださった言葉の重みで、その場から全く動くことができませんでした。18歳にして、このままだとぼくの未来には希望がないと宣告されたのです。背筋にひんやりと寒気を感じたのは、4月の冷たい風のせいだけではなかったと思います。
 
「青天の霹靂」という、晴れ渡った空に突如として現れる鮮烈な稲妻のように、予想もしていない出来事が起こることを現わす言葉がありますが、まさにあの日の先生の一言は、ぼくにとって青天の霹靂でした。
 
ぼくは中学時代からの念願が叶って、仙台第一高等学校という、県下でトップクラスの進学校に入学することができました。所属していた硬式野球部では、1年生の秋からベンチ入り。充実した高校生活を満喫しながら、未来は明るい! と信じて疑っていませんでした。
 
そうした日々が暗転したのは、高校2年生になった頃でした。我が家には、祖父がバブルの時期に建設し売れ残っていたマンションの借金が億円単位で残っていたのですが、それらを一括で返済するよう、突然銀行から通告されたのです。一族で自営業を行っていた我が家に激震が走りました。そんな額のお金は手元にありませんでした。
 
この非情な通告によって、円満だった親族どうしや、父と母の関係は一転。口を開けばお互いを罵倒しあう関係へと変わってしまうまで、そう時間はかかりませんでした。罪をなすりつけあい、少しでも自分のポジションを保とうとする大人同士の争いは、当時のぼくには理解することができませんでした。
 
(人間とはなんて醜いものなのだろう)
 
仲が良かった親族どうしの関係が修復できないほどに壊れていく日々は、思春期真っ盛りだったぼくの心を蝕みました。
 
だから家で過ごす時間も嫌だったのですが、学校に行けば行ったで、「きのうお母さんと出かけて、新しいジャージを買ってもらったんだ!」という具合に、とても平和な会話が聞こえてきます。友人たちの幸せそうな空気感は、自分が今いる世界とかけ離れ過ぎているように感じられ、人の輪の中にいることが苦しくなりました。
 
(この世界のどこにも居場所がない)
 
それからのぼくは、幸せそうなオーラを出来るだけ避けて、一人コソコソとカビ臭い部室でご飯を食べ、たった一つの小さな窓から、ぼんやり空を眺めていました。
 
(ぼくが頑張ったって借金は返せないし、壊れた人間関係も元には戻せないんだから、もう努力したってしょうがない。人生って罰ゲームなのかな? なんでここまで真面目に頑張ってきたのに、こんな仕打ちを受けなければならないんだろう。なぜぼくの身にだけ、こんな不幸が起こるんだろう。この辛さを分かってくれる人なんて、誰もいない。)
 
どこへどう進んで行ったらいいのか、霧の中をさ迷っているような感覚でした。何もやる気がしなくなり、65前後だった偏差値は急落。高校3年生の始めには37となっていました。これは100点満点のテストを10教科近く受けて、最高得点が30点にも満たないような状況でした。
 
そうしたぼくが、高校1年生の時から指導をしてくださっていた先生から「指導室へ来るように」と告げられたのは高校3年生の春、桜の花が散りかけていた頃でした。そして冒頭の一言を聞くこととなったのです。
 
(ぼくが今こうして苦しんでいるのは環境のせいではなく……、自分の弱さ、甘えからだったのか……)
 
このままだと人生が終わると大上段から切り捨てられたショックは本当に大きく、他責にして日々の積み重ねを捨てた、自分の未熟なあり方に絶望を感じました。
 
ですが、
 
(ぼくはなんて浅はかで愚かだったのだろう)
 
という感情を味わい続けているうち
 
(今ならまだ取り返せるかもしれない……。いや、きっとできる……!)
 
という闘争心が沸々と湧いて来たのです。「陰極まれば陽に転ずる」という言葉がありますが、自分の至らなさを正面から見つめ、深く味わい切ったことで、長く眠っていた意欲が、またグルグルと回り始めました。
 
それからぼくは、朝は7時過ぎから、夜は25時頃まで机に向かう日々を8カ月ほど過ごし、国語、英語、日本史の3教科だけ、なんとか偏差値を65まで戻すことができました。そうして宮城県立宮城大学に入学することができたのです。おかげさまで、大学では素晴らしい先生と友達に恵まれ、妻とも出会うことができました。
 
あの日、先生からの一言が無かったら、ぼくの人生は一体どうなってしまっていたのか。想像するとぞっとします。
 
世の中には「人生は急には変わらない。だからコツコツ積み重ねなさい」というメッセージが溢れています。それはぼくも、間違いではないと思います。
 
ただ、ぼくは「人生とは山の天気のようだなあ」とも、感じています。登山をしていると、それまでは霧がかかっていて何も見えなかった稜線へ陽光が降り注ぎ、一瞬にして美しい光景が浮かび上がって来るということが度々あるように、人生においても、大きな力によって閉塞感がぱっと吹き飛び、視界がクリアになる瞬間が潜んでいると思うのです。
 
そうした転機が、いつかあなたの前にも現れるかもしれません。その時はちょっと恐怖を感じたとしても、ぜひ流れに乗ってみることをおススメします! 苦境の中で開かれたドアは、きっとあなたを思いもよらない世界へ連れて行ってくれると、ぼくは自分の人生を通じて確信しているからです。
 
余談ですが、ぼくはこの体験を通じて、人が自分の意図に沿って自由に前進できる世界を実現したいと思い、自分自身と出会うワークショップを、年に40~50回ほど提供することを仕事にしています。
 
ところがコロナウィルスの影響で、実施を予定していたワークショップが軒並み中止になっており、直近の収入がほぼ無くなりそうです。文字通り、大ピンチです(笑)
 
ただ、この窮地を味わい切った先にどんな新しい世界が待っているのか、ワクワクしている自分もいます。空に浮かぶ雲や、水の流れのように、自然の成り行きに身を委ねて、楽しみながら進んでみようと思っています。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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