手動エレベーターにのったら、呪いが解けました。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:吉池優海(ライティング・ゼミ 日曜コース)
真っ白な壁をみて、ふと訳もなくフラッシュバックする。
「お前ケツでけぇな」
ちょうど今から1年前、バイト先の彼氏でもない社員の男性に言われた一言。
自分のデカい尻が嫌いだ。
貧乳のなかでもトップクラスの薄い乳が嫌いだ。
上半身は骨が浮き出ているのに余分に肉がついた大根脚が嫌いだ。
左右のバランスとパーツのバランス、どちらも悪い顔面も嫌いだ。
誉めるところがひとつもない。チャームポイントと言えるようなところもない。
痩せるときは胸から脂肪が落ちていき、太るときは太腿から脂肪がついていく。
いくら痩せても「私はデブ」という固定観念が消えず、太ることへの恐怖でしばらく食べたものを全て吐いていた時期もある。
「お前ケツでけぇな」
ありとあらゆるコンプレックスが津波のように頭のなかに押し寄せた。
私は、余すところなく自分の身体が大嫌いだ。
「吉池さんこんばんわ! 今日はありがとうございます」
明るい声に一気に現実に引き戻された。
見知ったスタッフ、山本さんの屈託のない笑顔に救われた気持ちになりながら挨拶を返した。
今日はこんなこと考えたらダメだ。
出かけた無表情を封印し、久しぶりに山本さんに会えた喜びを素直に前に押し出した。
手動のエレベーターを見たことがあるだろうか。
外側は一般的に見るエレベーターの扉に取っ手がついたような見た目。それを引いて開けると中にもう1枚、同じく取っ手のついた格子扉がある。
エレベーターがついた音を確認したら扉を自分で2枚開けて乗り込み、また扉を2枚閉めて階数ボタンを押す。
そうすると内側の格子扉にロックがかかり、指定の階数まで運んでくれる。
指定階数までついて音を確認したら、また2枚扉を開けて降りる。
産まれて初めて見た手動のエレベーターを、おっかなびっくりで操作した。
扉に手をかけた時に、15年前にエレベーターで閉じ込められた記憶が蘇った。
エレベーターの脇には「よければ階段をお使いください」と書いた張り紙があったのも見えていたが、好奇心が勝り階段を使う選択肢はなかった。
扉は2枚とも重く、ガタン、という無機質な音が恐怖心を煽り、隙間だらけの格子扉のすぐ先の冷たいコンクリートの壁は、手を出したら指先を持っていかれそうだった。
しかし、恐怖は一瞬だった。
恐怖の手動エレベーターを使って向かった先は、天狼院書店が構えるスタジオだった。
「秘めフォト」
天狼院書店が自信を持って女性に勧めるイベントに、初めて参加した。
「裸撮るってやばいな……モデルじゃあるまいし……」
秘めフォトのチラシを見てまず思ったことだ。
どちらかというと、というより完全に否定的な印象。
グラビアモデルならまだしも一般人がヌードって。
参加する気なんて0だった。
それなのになぜ私が秘めフォトに参加したか。
簡単である。私は押しに弱いからだ。
秘めフォトを受けた天狼院書店女性スタッフの方の実際の声が聞けたのが大きい。
「定期的に参加してます」
「受講して後悔している人見たことないです」
「めちゃくちゃ楽しいですよ」
怒濤のオススメワードを並べられたらこう思ってしまう。
「そんな楽しいの? 受けてない私、もしかして損してるんじゃないの? 他の人だけ楽しいの、狡くない?」
こうして、勧められるがままに秘めフォトを予約してしまった。
当日のメンバーが集まってから撮影までは、恥ずかしがる暇もなく本当にあれよあれよという間に進んだ。
真っ白な壁にこれでもかというくらい明るい照明、その中に鎮座するソファに堂々と向かう勇気はどうしても出ず、汚い部屋の隅を走るゴキブリを思い出し、勝手にシンパシーを感じていた。
だが、そう思っていたのもいつまでだっただろう。
カメラマンの三浦さんの魔法は凄まじかった。
恥ずかしがっていた自分がどこへやら、本当に不思議なことに、自分が自分ではないような感覚。学芸会で何かの役をやったとか、そういうレベルではなく、完全に自分を忘れて別のなにかになっていた。
時おり見せてくれる写真に写るのは確かに自分だが、「見たことのない自分」だった。
これが「秘めフォト」か……。
自分の撮影が終わって他の参加メンバーが撮られている時に我に返り、終始そんなことを考えていた。
普通とは違う撮影に一般人である自分が挑むには、コンプレックスを一旦棚にあげて置いておかねばならない。
コンプレックスは常に自分について回る鬱陶しいものだが、それを越えてしかみられない自分の姿と、感情が、そこにはあった。
未知のものに乗り込んでいく好奇心、過る不安を忘れる勇気、重い扉を何回も開けたからこそ辿り着いた場所。
そうだ、秘めフォトが始まる直前に同じ経験を私はしていたのだ。
手動のエレベーター。
4階まで階段を上がるのが億劫だった訳ではない。
ただ見たことのないエレベーターに乗りたい好奇心が、閉じ込められた恐怖の記憶に勝った。
不安に勝る好奇心ほど有意義な好奇心はない。
自分の中の引き気味な気持ちを凌駕するほどの興味は、必ずその先の経験がとんでもないものであることを確約してくれる。
本当に、秘めフォトはとんでもないものだった。
「あと3キロ乗せた方がいいね」
3キロ? 乗せる?
落とすの間違いではなくて?
撮影後、三浦さんに言われた一言に耳を疑った。
あんなに痩せなきゃと思っていたのに。
具体的な数字で「太れ」でもなく「乗せた方がいい」と言われたのははじめての経験だった。
いや、今日私は何回「初めて」を経験しただろうか。
身体の関係がない男性の前で裸になるのなんて初めてだった。
カメラで本格的に撮られるのも初めてだった。
ノーブラでスリップを着たのも初めてだった。
「見られている」意識をするのも初めてだった。
もちろん、手動のエレベーターに乗ったのも初めてだったし、私と同じように裸体を撮られている女性を見るのも初めてだった。
「痩せなくてもいいんだ」
初めて、そう思えた。
16歳の頃から今までのほぼ8年間、自分にかけていた呪いを解いてもらったような気がした。
人間は、誰でもコンプレックスをどこかに持っている。
容姿、性格、話し方、性癖。
すべてが完璧な人間はどこにもいない。
「秘めフォト」は、文字通り、コンプレックスのせいで内に秘めていたものを解放してくれる場所だ。
容姿に悩みがない人でも、必ず自分の中の何かが変わる経験になる。
たったの2時間で私にとって長い8年間の呪いを解いてくれた経験はきっと、いや、必ず今後の私の大きな糧になる。
自分で自分に呪いをかけてしまって悩んでいる女性がいたらすぐに、魔法が使えるカメラマンのいる「秘めフォト」を予約してほしい。
呪いが解けるきっかけは、勇気を出して少し手を伸ばせば必ず掴めるはずだ。
▼秘めフォトについてはこちらから▼
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