メディアグランプリ

四十肩は冬眠の合図


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中伸明(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ぐぅっ、痛っ!」
肩に激痛が走り、私は思わず歯を食いしばった。すれ違う人と肩が触れたためだ。連日眠れなくてボーっとしていたところに不意打ちを食らった。
 
ここは地下鉄の通路。ラッシュ時だから行き交う人で混雑している。
右側通行だから真ん中付近は逆方向に歩いてくる人とすれ違う。私は前から近づいてくる人に気づかず、軽く肩が触れてしまったのだ。
 
普通ならはそんなに痛くはないところだ。でも私は四十肩なのだ。
この痛みは、鋭くて重かった。まるでヘビメタの衣装にある、尖った鋲で思いっきりぶつかってこられたかのようだ。
相手に悪気はない。だから堪えるしかない。
 
四十肩という名前は聞いたことがあったが、こんなに辛いとは思わなかった。
 
3か月前、私は無知だった。
 
これまで何も意識しなくても真上に上げられた左腕が、肩の高さまでしか上がらなくなっていた。
肩こりがひどくなっているから、肩が上がらなくなったのだと思っていた。
 
四十肩。
 
その言葉を聞いて、おっさんの仲間入りを果たしてしまった、くらいにしか思っていなかった。
肩をほぐせばすぐに治ると思っていた。
 
しかし日が経つにつれ、痛みが増してきた。
 
「四十肩ならここでは施術できません」
いつも通っているマッサージ店で、そう告げられてようやく事の大きさを感じるようになった。
専門の治療院や、整形外科に行かなくてはいけないことを知った。
 
そこで近くの整形外科に行ってみた。
「1年くらいは覚悟した方がいいよ」
あっけらかんとそこの先生は言う。そんなことあるか!と私は心の中で反発していた。1か月で治してやる、と意気込んでいたが、その反発はすぐに崩れた。
 
2か月前、マズイと思ってきた。
治るどころか、痛みはどんどん強くなる。じわっとした痛みを常に感じるようになった。どんな痛みかというと、正座を長時間した後にくる、痺れのような痛み。アレに似た痛みが、左肩から腕にかけておこる。しかもそれがずっと続く。
 
とうとう左腕は30度も動かせなくなった。つまりほとんど動かせない。高いところにあるものは痛みのない右手で取る。服は左腕からまず通す。寝ているときは寝返りをうてない。左腕で右肩を触れようとしても届かない。
 
ある時食事をしていて、ご飯が口からこぼれてしまった。右胸のところでキャッチしようと、とっさに左手を使ったところ、左肩に激痛が走った。しばらく悶えてしまう。
 
そのうちに夜も眠れなくなった。ヂクヂクした痛みが肩から腕まで広がり、落ち着いて眠りにつくことができなかったのだ。何かの病気ではないか。その病気で死ぬんじゃないか。そう思うこともあったくらいだ。
 
我慢ができず、治療院を探した。選んだのは「少ない回数で痛みを緩和させます」と宣伝しているところ。施術代は高いが、ワラをもつかむ想いでドアを開けてみた。
 
しかし、そこで冷たいことを告げられた。ここで施術するにはもう手遅れだという。理学療法士さんのいる整形外科で受診することを勧めてもらった。
理学療法士。
この時に通っていた整形外科には、そんな人はいない。リハビリでは肩に電気を流してもらっていたが、その間、アシスタントのおばちゃんは仲間と世間話をしているだけだった。
 
1か月前、ここではダメだと思った。
 
私は次の整形外科を探すことにした。理学療法士さんのいる整形外科。
 
ようやく見つけたところは、まったく次元が違った。レントゲンだけでなく、MRIという装置を使って、筋肉の状態の断層写真を撮って検査してくれた。その写真から肩の筋肉に炎症を起こしていることを指摘してもらった。
 
おかげで治療方針が明確になった。いま、自分は拘縮期(こうしゅくき)にあり、とにかく肩や腕は安静にしなければいけない。炎症を抑える貼り薬や塗り薬で痛みを和らげながら、炎症が引くのをひたすらじっと待つ。炎症が治まりかけたら、徐々に身体を動かしてゆくことになった。まるで春が来るまで冬眠をする動物ようだ。
 
痛みは和らぐことはないが、治療方針が決まったことで気持ちは落ち着いた。じっくり取り組むしかない。
 
また四十肩がなぜ起こるのか、その理由についても教えてもらえた。
 
人間は40代になると、代謝が落ちてくる。代謝が落ちて筋肉と筋肉との間がくっついてしまうところができてしまうという。そうなると、これまで何の不自由もなく動かしていた腕の可動範囲が狭くなってしまう。それが四十肩なのだ。
 
だから四十肩にならないようにするには、代謝を上げるしかない。代謝を上げるには毎日運動をすることだ。健康のために運動しなければ、と頭では理解しているが、私はしてこなかった。実際にこうやって痛い思いをして、やっと気づいた。
 
四十肩の痛みが治まってきたら、運動をしよう。
そうだ、ジムが近くにあったから行ってみようかな。
 
そう思いながら、身体が動かせるようになる「春」の到来を私は待つことにした。
 
 
 
 
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2020-03-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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