メディアグランプリ

2度目の恋が教えてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:加藤有加里(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
彼と最初に会ったのは、私がまだセーラー服を着ていた高校1年生だったとき。友人がたまたま手に入れたライブチケットでその彼と初めて会った。マイクを持ち、ステージを走り回りながら歌うその姿に私は雷に打たれたような気持ちになった。
「かっこいい!」
二人組ロックバンドのボーカリストの彼の姿は、私の目に焼き付いて離れなかった。
それまで、特に趣味もなく、寄り道することもなく、学校と家を往復していた私だったが、学校帰りに中古CDショップへ行って、欲しいCDがないか確認するのが日課になった。
 
半年後には、野外ライブがあるということで、新幹線に乗るお金がなかった私は電車を乗り継ぎ3時間以上かけてその会場へとたどり着いた。
さすが日本でのCD売り上げ枚数1位とあって、会場には数万人が集まっていた。屋台もたくさんあり、さながらお祭り気分。知らない人とも同じライブを見に来たという共通点ですぐに仲良くなった。太陽が照り付ける中、友人と一緒にライブが始まるのをおしゃべりしながら待っていたのを覚えている。約6時間芝生の上で待って、やっとライブ開始。熱気に包まれたとても広い会場で、彼は米粒くらいにしか見えない距離だったが、こんなに楽しい時間なら、終わりが来なければいいのになんて思ったりもした。
 
高校3年生になると、私も受験生。まわりは受験勉強でそわそわしていたけど、模擬試験とライブが重なったときは、迷わずライブに行くことを選んだ。
志望校を選ぶときには、彼が通っていた横浜の大学を受けてみようと思い、よし頑張るぞと思ったが、偏差値の高さにあえなく撃沈。おとなしく地元の大学に進むことにした。
 
彼といっても、相手はロックバンドのボーカリスト。一度も会話をしたことはないし、友達でもない。でも歌を聴いていると、彼がとても近くにいるように感じて、その歌詞にいつも元気づけられていた。
 
大学を卒業したあと私は就職をし、いつの間にかライブからも遠ざかっていた。とくに理由はないのだが、彼の歌を聴くことも少なくなっていった。
 
それから10年以上がたったころ、友人からライブのチケットが手に入ったから、一緒に行かないかと誘いが来た。
 
そういえば最後にライブに行ってから10年も経ったんだ。時が経つ速さに驚きつつも、私はライブに行くことにした。
 
ライブ直前、私は昔聴いていたCDを出してきて、また聴くことにした。一瞬で当時の自分がよみがえってきた。曲って、聴いていた当時の自分にタイムスリップする、そんな力がある。高校生の頃の私、少し色褪せてはいるが、その時の自分がはっきりと浮かんでくる。ちょっと照れくさいような、せつないようなそんな気分。いつの間にか夢中で聴いていた。
 
ライブ当日。まるで昔の恋人に会うような気分でとてもドキドキしている。ライブグッズのタオルマフラーを購入して、開演を待った。
 
会場が暗くなり、大きな音とともにライブが始まった。私も年を取ったから、彼も年を取っている。そう思っていたら、全く違った。彼は年を取ったのではなく、年を重ねてさらにかっこよくなっていた。ステージ上で行われるパフォーマンスは、昔と全く変わらない。いや大人のかっこよさが加わって、むしろもっと良くなっている。
 
高校生だった当時は、ただ見た目やその姿かっこいいと思っていたが、今度は違う意味でかっこいいことに気づいたのだ。
 
一つは、ステージで最高のパフォーマンスを出すために、努力し続けていること。2時間のステージを全力で駆け抜けるには、相当な筋力トレーニングをしているはずだ。ライブを聴きに行っているだけの私でも息切れしそうなのに、彼は大きなステージを走り回り、息も切らさずに歌い続けている。そして、あの歌声を保つために喉のケアもかなりしているそうだ。
 
そして、もう一つは集まってくれたファンの皆への感謝の気持ち。ライブも終焉になると、MCで彼はこれまでのこと、そして集まってくれたファンへのメッセージを話し始めた。いろんなことがあったけど、聴いてくれる皆がいたから、ここまで続けることができた。皆には本当に感謝している。ありがとう! そんな謙虚な言葉に音楽に対する真摯な姿勢が伝わってきた。
 
「プロ」ってこういうことなんだ。
あの輝かしい姿は、たくさんの努力や感謝の積み重ねで成り立っているんだ。
だから何年経っても、聴きに来る人をいつも感動させることができるんだ。
 
目に見えるかっこよさばかりに気を取られていた自分が恥ずかしくなった。
 
仕事の内容は全く違うけど、私も働いてお給料をもらう立場、つまり「プロ」と同じ。
ならば、もっと仕事に対してもっと真剣に取り組み、そして周りへの感謝の気持ちを持たないといけないのに、全然できていなかった。だから、私も彼のような「プロ」に少しでも近づけるよう頑張ってみよう、そんな気持ちにさせられた。
 
一度恋した人でも、年数が経ってもう一度恋すると見えるものが違ってくる。
当時は見えなかったことが見えてくる。
何度恋しても、その分だけ自分も成長できる。
また次に会うときはもっと素晴らしいことに気づかせてもらえるかもしれない。
これからもどんな恋ができるかとても楽しみになった。
 
 
 
 
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2020-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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