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メディアグランプリ

菜園は季節を告げる暦である


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:杉本 知隆(ライティング・ゼミ特講)
 
 
その昔、渋川春海という一人の天文学者がいました。
彼が生きた江戸時代に、彼は日本で初めての和暦づくりに挑戦し、成功しました。
その活躍は、映画「天地明察」の中でも描かれています。
 
太陽や月の動きから、季節の移り変わりを計算し、カレンダーに落とし込む。
これが映画の中でも描かれた暦づくりです。
暦があるおかげで、今が何月何日かを知ることができ、次の予定を立てることができるのです。
 
私は、現在貸し農園を借り、週一回畑作業をしています。
毎回、畑の野菜たちの成長の様子をみながら、次の作業を考えます。
自然と向き合う畑仕事は、まるでオリジナルの暦づくりだと感じています。
 
「ソラマメの花が咲いている。」
つい先日も、一緒に畑に行った子どもたちが声をあげました。
白をベースに、黒の差し色が入ったソラマメの花は、野菜の緑が多い畑の中で、一際目立っています。
ネギにもネギ坊主がつきました。ネギ坊主は、花が咲く手前のつぼみの状態です。
畑の片隅で育っていたチンゲンサイにもつぼみがついています。
普段、スーパーでは見ることのできない、チンゲンサイの花を見ることができるのは、菜園を借りている者の特権です。
 
菜園にも、すでに春が訪れたようです。
 
春の訪れを感じさせるのは、野菜たちだけではありませんでした。
冬の間は、菜園には閑古鳥が嗚いています。いつもなら、他の利用者たちで、菜園はにぎわっています。毎日のように見かけるおじさん、おばさんも、1月、2月の間は、姿をほとんどみかけなくなるのです。
寒さで野菜が成長しないので、畑作業がないからです。
私は作業が無くても、様子を見るのに週一回は菜園に足を運んでいました。畑作業は、ちょうど子どもたちの退屈しのぎにもなります。
でも、ソラマメの花が咲いたその日は、違いました。いつもの顔ぶれが姿を見せたのです。
それはまるで、春の訪れに気づいた動物たちが、冬眠から目を覚ますかのように、ポツリポツリと菜園にやってきたのです。これから、ぼちぽちと夏野菜に向けての作業がはじまります。こころなしか菜園に訪れる人たちもにこやかです。
菜園は季節を告げるカレンダーです。
私たちが日常,カレンダーをめくって月日が経つのを確認するように、畑は季節の変化を教えてくれます。
「暖かくなりましたね。」
「今朝は寒いですね。」
もちろん、日常菜園で交わされるこんな会話の中でも、季節の変化は感じることはできます。
本物のカレンダーでも、春分の日、秋分の日、文字情報として季節の変わり目を教えてくれます。
でも、自然のカレンダーは、もっと雄弁に自然を語るのです。
 
撒いたホウレンソウの種が芽を出した。
冬の間、しなっていた玉ねぎの葉っばが、暖かくなって,ピンと上を向いた。
ネギは寒さに耐えるために、菓っばの中にとろみをつくり、甘さを増す。
自然のカレンダーは,気温や日の長さの変化に敏感です。
環境の変化を、野菜は全身で表現するのです。
 
そんな野菜たちの自己表現に、我々は応えます。
冬場は、寒さに耐えてか、じっとして成長しなかったほうれんそうや春菊。 3月になって暖かくなると、ぐっと伸びたので、収穫しました。
葉っぱを食べるネギやチンゲンサイに花が咲いてしまうと、栽培している人にとっては、あまり嬉しくありません。固くなるからです。ですから、こちらも慌てて収穫しました。
花が咲いたソラマメも、急に大きくなって体が倒れてきたので、支柱を立てて支えてあげました。
花が咲くのは、悪いことばかりでもありません。ネギ坊主自体も天ぷらにするとおいしいのだとか。何よりネギ坊主のような普段見かけないネギの姿を子供に見せることができます。
野菜たちの様子を見て、お世話をし、自然の恵みをいただくのが畑仕事なのです。
 
自然のカレンダーは、季節の訪れを伝えるだけではありません。
カレンダーなので、次の予定を知らせてくれます。
野菜の育て方の本を開けると、実を収穫する野菜の多くは、花がついてから収穫するまでの日数が決まっていることが分かります。
ソラマメは花が咲くと、40日から50日かけて実が膨らみ、収穫できるようになります。花が咲いたことで、次の収穫の予定を確認することが出来るのです。
ほうれんそうも、大きさに合わせて収穫の予測が立ちます。来週には収穫ができそうかな、とか。さらに、収穫が終わったら次は、そろそろトマトやナスの出番だから、畑をふかふかにする準備を整えよう。
野菜たちの変化が、次の予定をどんどんと生み出していくのです。
「○○さん、次は何を植える?」
本当のカレンダーは、誰もが同じ暦を過ごしますが、畑のカレンダーでは、人によって違います。
畑の姿はその人が植える作物によって変わるからです。菜園では、変わり種の野菜ばかりを作る人もいれば、区画一面にブロッコリーを植えている人もいます。
作物の種類によって、どんな暦を刻むかは変わってきます。
それぞれ菜園を借りている人たちが、自分の野菜たちの成長の姿にあわせてカレンダーをつくりあげていくのです。それは、自分だけの暦になります。
私の菜園でソラマメの花が咲いた日は、他の人にとっては、大根が収穫を迎えた日かもしれない。 そうやってオリジナルのカレンダーづくりを畑作業では楽しめるのです。
渋川春海と私たちのカレンダーづくりでは目的は少し違います。
でも、自然を観察するそのプロセスは同じだと思っています。
太陽や月の動き、日の長い、短いを感じながら、渋川春海も季節の流れを感じていたに違いありません。そして和暦という日本オリジナルの暦づくりに成功したのです。
次はどんな暦を刻むのか、楽しみに今週も菜園に向かうのです。
 
 
 
 
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2020-03-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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