メディアグランプリ

面接に落ちて自分の成長を感じた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:楢原 直人(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「正直に言って、迷ってます」
 
3月の最初の土曜日、最終面接を受けるため京都に行った。
新幹線を降りて駅の南側を覗いてみると、学生時代の記憶とはどこか違っていて、やたらホテルが増えている気がしたけど、それでもやっぱり懐かしかった。
地下鉄で五条駅に行き、そこから東に歩いて10分くらい、面接会場のビルについた。まだ少し時間があったから、近くの鴨川沿いを四条に向かってゆっくり散歩して時間を潰した。途中のブロックに腰を下ろして、東京とは違う空気感、すれ違う人たちの様子、1本足で水面に立っている名前の良くわからない大きな鳥、そんな景色をどことなく感じながら、とてもリラックスした気持ちで面接までの時間を過ごすことができた。
 
新卒で今のI T企業に入社し、早いものでもうすぐ丸5年が経つ。
とても優秀な人たちと一緒にいろんな仕事に取り組ませてもらい、思えばこの5年間、退屈な仕事は1つもなかったように思う。
仕事の内容も、その時の自分では難しいチャレンジングなものが多いし、給料も福利厚生も悪くない、素晴らしい会社だと思う。
けれど、いつからか、仕事へのモチベーションが湧いてこない自分に気づいた。
 
半年から1年程度のプロジェクトが終わると、次のプロジェクトが始まる。そのプロジェクトが終わると、また次のプロジェクトが始まる。
I Tは今や社会のインフラで、それは電気やガス、水道と同じように、人々の生活になくてはならないものになっている。スマホでもP Cでも、スクリーンを見ない日は1日もない。
入社当時、そんなI Tという観点からこの社会に関わっていくことはとても意味のあることだと思ったし、その考えは今も変わらない。
だけど、いつからか、この仕事をこれから先も続けていくことを想像すると、何とも言えない暗い気持ちを感じるようになっていた。
 
何のために仕事をするのか。
なぜ、この仕事をするのか。
仕事を通して、何を成したいのか。
 
そんなことを考えてみたけど、まったく、何も出てこなかった。
 
これまで僕は、いわゆる「良い子」 な人間で、学校や社会で「良い」 とされていることを軸に生きてきたように思う。失敗することや怒られること、馬鹿にされることを極端に避けて、自分の考えや好き・嫌いを表現することを恐れ、空気を読むことに必死で、当たり障りのない生き方をしてきた。
そのせいで気がつけば、自分で自分の考えや好き・嫌いが分からない人間になっていたのかもしれない。
 
本を読み、Youtubeの動画を見て、色々な人の話を聞き、自分の心に目を向ける時間を大切にしていったら、少しずつ、自分の考えや好き・嫌いがわかるようになっていった。
いま僕は、自分に正直にいることを大切にしたいと思うし、そう思う自分の価値観に気づけたことを、とても幸せに感じている。
そして、他にも同じように自分の価値観に気づけず悩んでいる人がいるなら、その人が自分の価値観・モチベーションを見つける手助けをしたいと思っている。人がやりがいを感じるモノを見つけ、そのために生きていく手助けという観点で、この社会に関わっていきたい。それが僕のモチベーションになる。
 
そして人事コンサル業界への転職を目指し活動を始めたけど、全くの未経験ということもあり、そもそもの求人が多くなかった。
未経験可の企業を探して、書類応募を出し、適性検査を受け、一次・二次面接を経て、土曜日、最終面接を受けるため京都に行ってきた。
 
転職活動をする中で分かったことだけど、一口に人事コンサルと言っても、いろんなアプローチの仕方がある。そしてこの企業のアプローチは、僕がいま一番興味のあるアプローチとは少し違っていた。けれど、将来的には幅広い知識・経験が必要になるから色んなアプローチを経験することが大切だろうし、その企業でもいつかは僕の興味の方向に幅を広げられそうだったから、かなり迷っていた。他の企業と比較して、志望順位をつけるなら1位か2位くらい。
 
「他の企業も受けてると思うけど、状況はどんな感じですか?」
「正直に言って、迷ってます」
 
この時に、「御社が第一希望です」と言っていたら、結果は違っていたのかもしれないし、どっちにしても同じ結果だったのかもしれない。
それは分からないけど、「他の企業と迷われているようだったため」というコメントの付いたお祈りメールが届いた時は、後悔した。あの時こう言ってたら…、という考えが無限に湧いてきた。
 
けれど一通り落ち込んだ後、あの時「御社が第一希望です」 と言いたくなる気持ちは、昔の「良い子」 な僕の考え方だなと思えた。
僕は自分の心に正直にいたいと思い、その気持ちからスタートして転職活動を始めた。もしあの時自分の正直な気持ちを隠して「御社が第一希望です」 と答えていたら…。仮に面接に通ったとしても、本当の意味では、何も進んでいないんじゃないか?相手が「良い」 と思うであろう答えを探す僕から変わっていない。
それよりも、面接には落ちたけど、失敗を恐れがちな状況でも自分の正直な考えを伝えられたことは、本当の意味で「良い子」 の自分から変わっている証拠なのかもしれない。
 
人によっては都合の良い現実逃避だと言うかもしれない。
だけど、誰かにそう言われたとしても、僕にとっては意味のある気づきで、もしまた同じ状況がきても、僕は正直に答えると思う。
 
転職活動は振り出しに戻り、懐かしの京都に住む未来はいったん無くなってしまったけれど、思い描く未来に向けて僕は一歩前進している。
 
 
 
 
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2020-03-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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