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メディアグランプリ

心に響く、「心のこもった贈り物」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:yuko (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「……ちょっと苦いかもしれない」
 
遠慮ぎみにそう言い残し、彼はいそいそと仕事に向かった。
 
今年のホワイトデーは土曜日だ。
「彼」とは職場の上司にあたる人だ。
当日には渡せないから、前倒しの金曜日に、ホワイトデーのお返しをくれたのだ。
 
それが、なんと、『手作りクッキー』!!
金曜日が夜勤入りだった彼は、出勤前までクッキー作りに勤しんでいたという。
料理が得意な訳ではない。
彼は3児の男の子のパパであるが、普段の会話から、それはイメージできる。
頑張って努力してくれたはずだ。
 
……実は、男性からの手作りが、こんなに嬉しいとは思わなかった。
 
ホワイデーのお返しなんて、義理であればある程、「良いモノ」が喜ばれる。
普段買わないような有名店のお菓子や、いくつあっても困らない某ブランドのハンドクリーム、
ボディクリーム……。
そういったものが、ひっそりと男性陣の男気に格付けされているのだ。
 
クッキーをくれた彼も、昨年まではその一員だった。毎年、有名店のチョコレートや、私の大好きなマカロンなどを用意してくれた。
もちろん、とても嬉しかったし、有難く頂戴した。
 
それが、今年は手作りクッキー。
これには、少々理由がある。
 
数日前、彼は私に、「金曜日は休みじゃないよね?」と尋ねてきた。毎年バレンタインとホワイトデーの贈り合いをしている間柄。私はその返事ともに、ニヤついて見せた。
彼もまた、笑いながら、「今年は手作りクッキーにしようかな~」と、あくまで冗談で言った(はずだ)。
冗談とは思いつつも、「楽しみにしてますねっ♪」と割と押し気味に伝えてしまったのだ。
 
彼は下手なことを言ってしまったかと、焦ったかもしれない。
もしくは、手作りでも許されるのか、探りを入れたのかもしれない。
 
結果、彼は手作りすることを選んだ。
綺麗にラッピングされ、プレーンと紅茶の2種類という気合いの入れようだ。
 
これが、妙に嬉しかったのだ。
男性からの「手作り」の嬉しさを、ここまで感じることなかったかもしれない。
きっと、「私の為に頑張ってくれた」背景がそれを倍増させた。
 
実は、これまでにも職場の義理返しで、「手作り」を頂いたことがある。
ガトーショコラを4等分した1つで、タッパーに入れられたものだ。4人にお返ししたのだろう。
手作りしてくれたこと自体には感動したが、「嬉しかったか」というと、正直即答はできない。
あくまで当時の私の意見だが、そこには何となく、「適当感」が否めなかったからだと思う。
1/4にカットされていたことも、タッパーに入っていたことも。
今思えば、本当に失礼な感情だ。申し訳なかった。
その彼だって、不慣れなことに頑張ってくれたはずなのに……。
 
女とは、本当にワガママな生き物だ。
バレンタインには個数を確保する為に安いものをばら撒くくせに、お返しはきちんとして欲しいと思っている。
「お返し、いらないですからね~」なんて、本音と建前もいいところである。
 
この、バレンタイン商戦にも、ホワイトデーの互いの気遣いにも疲れ、私はついに白旗をあげた。
今年、義理チョコを配るのを辞めたのだ。
それでも唯一、彼には「今年で最後にします」と宣言しつつ、渡していた。
彼にはバレンタインに対する思い入れがあったからだ。
 
ある年のバレンタインに、お子さん向けにと思い、トミカの車の形をした立体チョコを贈ったことがあった。
思いのほか、そのお子さんが喜んだようで、スマホでお礼の動画まで撮ってくれていた。
パパも鼻が高かったようだ。
調子に乗った私は、それから毎年、お子さんに喜んで貰えるようなチョコを探し贈り続けた。
今では私は、子供達から「チョコレートのお姉さん(おばさん)」と言われている。
ただ、お子さんも大きくなり、興味を無くす頃。そろそろ引き際だとも感じていた。
彼も、最後の締めくくりみたいなもので「手作り」に挑戦してくれたのかもしれない。
 
ここで明かすが、実をいうと、私は多少潔癖症なところがある。
どんなキッチンで、どんな状況で作られたものか分からないものは、口にするのに勇気がいる。
ただ、今回はその考えが薄れていた。
嬉しさの方が勝ったのだろうか。
 
私はとても嬉しかったのだ。
 
「気持ちのこもったもの」が心に響くのは、私が歳を重ねたせいかもしれない。
1/4サイズのガトーショコラの時には感じられなかった喜びは、20代の私にはまだ早かった。
アラフォーになった今、心が温かく満たされるものになる。
 
傲慢だった若い自分より、今の自分の方が好きだなと思った。
 
肝心の手作りクッキーは、美味しかった。
プレーンはクッキー好きな甥っ子と一緒に食べたが、紅茶の方は自宅で味わって頂いた。
彼が、「ちょっと苦いかもしれない」と言ったのは、少し焼きすぎたものがあったからだろう。
 
日曜日、私も触発され、クッキーを作った。
バターを撹拌するのも割と腕が疲れるし、地味に面倒だ。この工程を、夜勤の仕事前にしてくれたのかと思うと、本当に有難いなと思った。
 
明日の月曜日、彼に会ったら、再度お礼を言おう。
とても美味しかったと伝えよう。
 
そして、わたしも贈り物をする際は「心を込めて……」を大事にしよう。
 
彼に、「今年で最後にします」と宣言したことを、私は少し後悔した。
 
 
 
 
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2020-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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