これから怖いのは反動かも知れない
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記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ書塾)
このところ、新型コロナウイルス蔓延の影響で、自粛ムードが拡がっている。
実際、3月最終週末には、東京で外出自粛要請が出されるに至った。普段は誰かに指示されることを極端に嫌う私も、今回ばかりは小池百合子知事に従うことにした。何故なら、これ以上蔓延が続き、都の“要請”が“指示”に変わったりしたら大変だからだ。
日本では、法体系上の人権問題で、罰則を伴う“自粛命令”というものが出し辛い。従って、お上が御願いしますという“要請”が、○○しなさいという“指示”となった場合は、パニック寸前ということに他ならないからだ。
一方、海外では行政が結構な強権を発動している。例えば、英国やイタリアの首相は、テレビを通じたメッセージで、
「伝えたいことは簡単だ。家にこもって外へ出るな!」
と、強い言葉で国民に命じている。イタリアの或る市長に至っては、外で卒業パーティをしている大学生に、
「早く止めないと、火炎放射器を持った民兵を派遣するぞ!」
とか、また別の市長は自ら街角に立ち警備し、外出している住人に対し、
「何の用が有ってウロついているのだ? 家に帰って、プレステでもしていろ!」
と、警告して追い返している。これがもし日本だったら、マスメディアが、とんでもない騒ぎ立てをするところだろう。
日本人の従順さは、世界でも稀(まれ)なのだろう。
これはアメリカの話だが、トランプ大統領がいつもの口調で外出自粛命令を発している。しかし、行政の言うことに反発が多いアメリカでのこと、春休みに入った大学生が、マイアミのビーチに集まり騒いでいる報道を見た。上半身裸の男子学生が言うには、
「俺達は、この時の為に勉強して来たんだ! コロナなんかにゃ止められないぜ!」
と、息巻いていた。どうやら、楽しみにしていたバカンスを我慢しきれず、大統領命令に従うことを拒否している様だった。その後、それらアメリカの学生がどうなったのか私は知らない。
しかし、本日(3月30日)になって日本の大学生には、新たな新型コロナウイルス感染に陽性反応を示した者が出たそうだ。なんでも、今月に入り卒業旅行でスペイン(イタリアに次いで、欧州で感染者が多い)へ行っていたらしい。タカを括(くく)っての行動だろうが、マイアミの大学生と大差ない気がしてしまう。
しかし、若い方にとって、それが例え病気の感染リスクがあるとはいえ、外出の自粛は、“要請”であろうが“命令”であろうが、また、誰から命じられようが、閉塞感が有り息苦しいものだと思う。また、こうした閉塞感の中で聞く指令は、どこかに忖度しているようにも感じられるものだ。
まるで、戦時中の大本営発表みたいで、にわかに信じ切るには、説得力に欠けるのももっともだ。
私の感じでは、このままでは外出禁止が解けた時の反動が何だか怖い。多分、それまでの閉塞感が、外出した際の行動を暴走させそうな気がするのだ。例えば、久々の飲酒が過度になり、余計ないざこざが増えそうな気がしてならない。
しかも、そうして暴走してしまう輩(やから)に対しても、自らも受けた閉塞感を鑑(かんが)みると、一方的に責められないと考えたりする。
今、最も気配りをしなければならいのは、外出自粛明けの“自制”だと思う。
この“自制”こそは、日本人が古来持ち合わせている、『恥の文化』に代表される“侘び寂び(わびさび)”の思考に基づき、日本人なら誰でもDNAに刷り込まれていると思うのだ。
だから私は、外出自粛明けでも日本だけは大丈夫と信じることにしている。
昔から、西洋ではこんな笑い話が有名だ。
《タイタニック号が沈もうとする時、女性の乗客に救命ボートを譲らせる為に海へ飛び込ませる方法》
英国人には『紳士なら、海へ飛び込むべきだ』。
イタリア人には『飛び込んだら女性にモテますよ』
アメリカ人には『ヒーローになる為に飛び込みなさい』
ドイツ人には『規則なので飛び込んで下さい』
フランス人には『危険ですから、飛び込まないで下さい』
そして、日本人には『みんな飛び込んでいますよ』
と、いうものだ。
今回の、新型コロナウイルス感染にまつわる各国民の行動意識が、まるでこの笑い話の様で、私は何だかこそばゆい。
ともあれ、日本人の規律正しさは、例え笑われようと間違ってはいない筈だ。
何故なら、日本では何等の暴動も起こっていないからだ。
ここは一つ、自粛の解禁後も、日本人の“自制”を世界に見せ付けてもらいたいものだ。
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