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メディアグランプリ

人生についたバツがもたらしてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:SAYO(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「何それ! 子どものことどうするの?!」
「楽になりたい! ってどういうこと?!」
身勝手な相手の発言。怒りとともに涙が込み上げてきた。
 
こうなるまでの半年間、いろいろ伏線みたいなものはあった。
挨拶をしても相手からは返事はなく、ほぼ家庭内別居状態。当時6歳の息子と3歳の娘といる時は、子どもを通して会話をする感じ。とても息の詰まる日々が続いていた。
 
私は自分が結婚するまで、離婚や交際破局の原因が『価値観の不一致』と聞いても、あまりピンとくることがなかった。
 
相手からは「あなたと一緒にいることが苦痛で」と言われ、この言葉をなかなか受け入れることができなかった。「そんなことが理由で別れて、子どもたちがかわいそうじゃない!」そう返した。
でも相手には“そんなこと”ではなかったようだ。「子どもを犠牲にしてでも、あなたと離れて楽になりたい」そう返された。
 
もう自分がとんでもなくダメな人間なんだとレッテルを貼られ、頭に大きな石が落ちてきたような衝撃を受けた。
要約すれば価値観の不一致。私も相手に感じることはあったが、そこまでの考えには及ばなかった。相手からの言葉で価値観が合わないとこうなるのか……と思い知らされた。
 
この半年前、息子が幼稚園の年長の3学期頃だった。「行きたくない」と言って行き渋ることが度々あり、息子が納得して離れるまで私も一緒に付き添っていることが増えた頃だった。小学校に入学してからもそれは続き、朝から一緒に登校し5時間目まで付き添うなんてことはしょっちゅうだった。さらに息子と入れ替わりで下の娘が幼稚園に入園したので、毎日毎日子どものことばかり考えていた。今考えると相手のことを思いやるような隙がなかったのかもしれない。
 
私は自分が納得しないと前に進めない性格。だから自分の気持ちに折り合いがつくまでにそれから1年もかかってしまった。
 
結婚して8年目に切り出された話だったが、振り返るとそれまでの結婚生活では自分の気持ちを抑えることが多かった。何かを決めるにしても必ず相手に確認していたし、自分で考え判断することがあまりなかった。だから私は「子どものため」と言いつつ、自分のこれからについて考える勇気がなかった。いや考えることから逃げていたのかもしれない。親戚、ご近所、友人たちの目を気にしてばかりで踏み出すのが怖かったのだ。
 
相手の気持ちをどうこうしようとしても無駄であるということだけは十分理解できたので、自分が納得できる情報を集め、相談できる人には相談し、少しずつ気持ちを固めていった。
 
そしてついにその日がやってきた。
印鑑を押した離婚届を相手に渡した。泣けるものなのかと思ったが妙に落ち着いていた。
不登校の息子もいるし、この先の不安を考えたらキリがなかったが、なぜか心がスッと軽くなった瞬間だった。
 
しばらくは娘が寂しくて泣くことがあり、その度にこの決断で良かったのかと罪悪感にさいなまれることがあったが、徐々にその自分の気持ちも受け入れることができるようになった。
 
相手が家を出て、子どもと私は住み慣れた家に残してもらった。生活の環境が変わらなかったのが幸いだった。近所の人や友人たちも気にかけてくれ、それまで以上に人の温かさを感じられるようになった。
 
”シングルマザー“だからいろいろと我慢しなくてはいけない……。そんな風に最初は思っていた。でも何かが吹っ切れたのか、そんなことはどうでもいい! と思うようになってきた。
自分で考える、決断するといった訓練を長い間してこなかったので、踏み出すまでのエネルギーがものすごくいる。先の見えない事をあれこれ考えるのは脳みそがとても疲れる作業。
でもやってみてダメならまた考えればいいか! 散々脳みそをぐにゅぐにゅと使ってきたので、だいぶん柔らかくなってきたようだ。
 
『人生はイス取りゲームのようなもの』
 
空いた席にはちゃんと新しい何かが入ってくるから。
 
私の人生にはバツがひとつ付いてしまったけど、そのおかげで、過去も含めて良いも悪いも自分を認めてあげられるようになってきた。周りの目を気にした遠慮、我慢というのは無駄なことだとわかってきた。
 
負の気持ちを捨てることで、チャレンジできることも増えた。
私は写真を撮っている時間が好き。子育てなど日々のあれこれをしばし忘れ、自分の感情に浸れるからだ。その時間を過ごすことで、また気持ちをリセットして子どもたちとも向き合える。写真で自分を表現できるようになり、子どもたちにも私が生き生きしている姿を見せられる。くよくよ悩んだり、自分を抑えてイライラしたりするよりも、母がやりたい事をやって笑っていられる方が、子どもたちにもいいようだ。
 
ある時、数年ぶりに会った友人に言われた。
「前より表情が柔らかくなったね!何か抜けた?」
 
これか!!
人生にバツがついて失った物もあるけれど、それ以上に得たものが大きかった。
 
印鑑を押してから今年で3年。
「あなたと一緒にいることが苦痛で」と言わせてしまった相手とは、今も2人の子どもの親として繋がりがある。面会の日には子どもの面倒も良く見てくれる。本当にありがたい。
そしてなぜか前よりも会話が増えている。
「子どものことでいろいろやってくれてありがとう」と言ってもらえることが素直に嬉しい。人生をずっと一緒に歩むことはできなかったけど、距離を置いたことで見え方が変わったのだろうか。こんな家族の形もありなのかもしれない。
 
子どもたちと一緒に、心から笑える自分がいる……
私はこれまでの人生の中で今が一番幸せだ。
だからバツではなく、マルだと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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