メディアグランプリ

嫉妬は畑であるが畑でしかない

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:近藤頌(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
できないことがある。
叶わないがある。
 
いつからか、そんなことに出会ったときに尻込みしてしまうようになった。いや。尻込みしかしてこなかった。いつだって新しい何かに挑戦しようという時、もしくは自分にとって必要そうな試練にいきなり打ちあったときなんかは尻込みどころか後退りなんかして、何も言えずに背を向けてしまうなんてことばかりだった。
 
なんでもできてしまうような人はどこに行っても一人はいた。
ぼくはいつもそういう人は見ないようにしてきた。
どうせ見たって妬んでしまうだけだから。
妬みは精神の衛生を著しく損なう。
だからはじめから出会わなければ自分としては気が楽だろうと思っていた。
しかしそれは今自分でいった通り、楽、なことでしかなかった。
当然といえば当然だったのだけれど、その人が今年でもできるように見えているのは、それまでにいろいろとやってきたからだった。
それがわかってからはなるべく人と関わるようにして、その人が今の状態になるまでにどんなことをしてきたのかのヒントが得られないか注意深く接するようになった。
でもどうしたことか。
話を聞けば聞くほど、すごく単純なことしか発掘はされてこなかった。
毎日やっている地道なこと。
その地道なことの内容も知りたくて、粘ってもみたけれどそこまで教えてくれる人はおらず、そしてどうしようもなく、もやもやしたものしか残らなかった。
 
手元に何も残らない。
人の話ばかり聞くようになって、そう思うようになった。
けれどそれは、その焦りは、ぼくを別の行動をするように諭してくれもしていたように思う。
まずは種を探した。
自分が将来得たいもの。そのことについて考え始めた。
種について考えながら、その種を育てられ得る土壌づくりも同時に行った。
いわばそれは精神状態の混乱を落ち着けること、頭の回転を出来る限り早くしておくこと、といったそんな類の行動だった。
で、種が見つかって、今度は種まきと水やりやら雑草との格闘である。
畑を準備しておくと、今まで尻込みしかしていなかったのに自然と行動することができる。それをするのが当然という気持ちさえ自然と持つことができるようになっている。
でも大変なのはまさにここからである。
毎日、毎日、水やりと雑草に栄養が行かないようにする重労働が待っている。
一日でも手をぬけば次の日には2倍の重しになって体に負担がかかってくる。
でも不思議と調子に乗れてくると、そのワンパターンといっていい、自分の体から出てきたルーティンが楽しいものに思えてくる。
これが嫉妬が畑である理由か。
手入れをしないと自分が困る。
嫉妬は手入れをして活用してなんぼ。
嫉妬を放置していれば、困るのは自分だけ。
自分が手に入れたかった野菜なり、果実なりを育てられないと困るのは自分だけ。それなのに、上手く育てられず飢餓状態に陥ってしまうとどうしようもなく忘れてしまう。どうして育てられなかったかの原因について。
そのうち嫉妬がまたぶり返してくる
嫉妬というより自己嫌悪だろうか。
どうして自分はうまくいかないんだろう。
うまく行っていた頃の自分に対しても嫉妬するようになる。
あの頃は何がどうして毎日を楽しく過ごせていたのだろう。
あのときと同じことを繰り返していれば同じような気分になれるのだろうか。
もはや不毛な問いかけの繰り返し。
しまいには畑に火を放ってリセットを試みるが焦土となってしまった土が作物を育てられるだけの蓄えができるまでには、それこそ時間と幸運が必要になるだろう。
お腹が空いて何もする気が起きない。
そうしてまた何かしらお腹の膨れそうなものをその場しのぎ的に求めて、自分を顧みずに世の中を歩き回ったりする。
 
嫉妬は畑であるけれでも畑でしかない。
嫉妬は手入れすれば作物を作り出してはくれるけれど、嫉妬そのものが作物になるわけではない。
そんな当たり前のことが空腹感のせいか分からなくなってしまうことがある。
そして実際の畑同様、天気や気候にも左右される作物である。
ずっと曇りっぱなしであったり、冷たい状態でい続けていたら、育つものも育たなくなる。はじめから畑ばかり見ていたのが間違いだったようだ。
視野を広く持てとはそういうことだった。
どうしようもないと思っていたのは本当にどうしようもなかった。
ただどうしようもないこの今の現状をひとまず、捨てるのではない方向で考えを進めていければ、なにかまた実るかな、なんて考えている。
 
 
 
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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