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メディアグランプリ

コインランドリーで、ショートショートを。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:石野敬祐(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ねぇ、ちょっと洗濯機みてくれない?」
 
同居している母から声をかけられ、洗濯機の前に向かう。見てみると「U-5」というエラーコードが表示されている。画面の横の説明を見ると洗濯機の内蓋が閉まっていないというエラーだった。スタートしたのは結構前。途中まで洗濯できていたはずなのにおかしいな。蓋を開けて、締めなおして見ても同じ。説明書を探して調べてみてもわからない。電源を入れ直してみたり、接触などを疑い、蓋周りを掃除してみたりしてもエラーは解消しなかった。
 
どうも最近エラーがよく起こっていたらしいし、もうこの洗濯機も15年近く使っている。調べてみると洗濯機の寿命は毎日洗うとして平均6~8年。2日に1回ぐらいのペースで洗濯していたと考えると、もう十分働いてもらった感じだろう。これだけ働いてくれた洗濯機に感謝。その後すぐに電器屋さんで新しい洗濯機を購入。ただ洗濯機がくるまでは、コインランドリー生活で確定だ。
 
早速出来上がっているはずだった洗濯物を洗い直すため、徒歩10分のコインランドリーへ向かう。
 
僕がついたときに1人、グラデーションがかった茶髪の若い男性が机でスマホをいじって待っていた。そう、こういうなんとなく待つのが苦手だよなと思いながら。
洗濯物を入れ、お金を入れて洗濯スタート。乾燥まで含め、完了まで50分と表示された。
 
さぁ終わるまでの時間どうするか。若者のようにスマホで時間をつぶすこともできるけれど、おっさんがスマホで50分いじっているのもかっこ悪いかな。ゲームばっかりやってしまいそうだし、スマホ以外の選択肢を考えないと。家から読みかけているあの本を持ってくれば良かった。でも取りに帰ると往復20分だし、単行本だからかさばるし……
 
まもなく、はたと思いつき、家に帰るより圧倒的に近い本屋へ向かった。数日前、NHKのSwitchインタビューという番組の一人の対談者がショートショート作家だった。ショートショートはやり方さえ学べば誰にでも書けるという話をしていた、彼の作品が気になるなと思いながらその番組を見ていたことを思い出したのだ。
 
スマホで誰だったかなと調べると、田丸雅智という人だったことがわかった。
 
書店についてまもなく、田丸雅智の文庫を見つけた。棚に2冊並ぶうちの1冊を手に取り、パラパラとページをめくった。あ、読みやすい。早速レジで購入しコインランドリーへ戻る。まだ同じ姿勢でスマホを眺める茶髪の若者の斜向いの椅子に座り、その本を読み始めた。
 
最近、小説を読むことは集中力が続かずなかなか読めていなかった。そんな僕にも読みやすい。いいテンポでページが進む。ちょうどいい余韻で面白い。1話読み終わっては時計を眺める。まだ5分ぐらいしか経っていない。大きな洗濯機はガタガタ音を立てている。また1話読む。まだ洗濯物はぐるぐる回っている。読むスピードがいい感じに乗ってきて「もうしばらく洗濯・乾燥していていいよ」と思った時、残念ながら洗濯が終わった。
 
その夜、その本の表紙をぼんやりと眺めながら、昔のことを思い出していた。
 
そう、あれはまだ僕が小学生の頃。親父が読んでいた文庫本に興味を持った時期があった。
当時の僕は「文庫本は大人が読むもの」と思いこんでいた。親父がよく読んでいた司馬遼太郎を、ちょっと見せてと覗き込んだことがあった。さっぱりわからなかった。そのイメージで文庫が遠い存在に感じていたのかもしれない。
 
そんな時、同じように親父が読んでいた星新一のショートショートに興味を持った。きっかけは、文庫なのに表紙に書かれたロボットの絵だった。(今調べてみるとおそらく「きまぐれロボット」だったと思われる)
 
「これなら、けいすけでもよみやすいかもしれへんな、読んでみるか?」
 
親父から差し出されたその本は、話も短く、中身も難しくない。その時の僕でも読めそうと思えた。すぐ借りて読み始めた。正直ストーリーは全く覚えていない。そんなの想像の世界だと思いながらも、なんだか読んだことのない不思議な感じが面白かった。そして文庫を読んでいるという自分がなんだか大人になったように誇らしく思えたことを覚えている。
 
あれから20年以上が経ち、偶然ショートショートに再会した。改めてショートショートを読んでみると、また違った面白さを感じた。単なる短い空想・フィクションというだけではなく、短い中にも世の中への皮肉とか、言葉遊び的なものとかも含まれているように感じられる。ライティング・ゼミで学んでいること、テレビ番組で筆者自身が語っていた話も繋げて考えてみると、どうもいろんな企みが見えそうで、そういう観点でも勉強になりそうだと感じている。
 
洗濯機が届くまでのコインランドリー生活、待ち時間のお供はショートショートにしてみようと思う。たまには、いつもと違う場所で、いつもと違う本を読んでみたら、何か違う世界も見えてくるかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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