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百貨店で「カモ」になるススメ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:安井美貴子(ライテイング・ゼミ特講)

 
 

インターネットショッピング、オンラインカウンセリング、動画配信ヨガ……
インターネットを繋げれば何でもできる時代。大きなストレスなく、リアルタイムで双方向コミュニケーションも実現している。これまで対面での享受が当たり前だったサービスにも、インターネットを介しての提供に、違和感なく対価を支払うようになった。
わたし自身も、朝はYoutubeのエクササイズ動画を再生しながらストレッチをし、日中は自宅でノートパソコンを開き、チャットやZOOMの機能をつかって、社内とコミュニケーション。仕事を終えるとAmazonを開き、好きなYoutuberがオススメしていたコスメやスナック菓子を購入しながら、友人とオンライン飲み会を楽しむ。日々の暮らしにおいて、わざわざ外に出なければならない用事はほとんどなく、インターネットを介したやり取りで十分完結している。
 

しかし、そんな時代だからこそ改めて良さを実感するのが、直接接触することで更なる効果を発揮する対面サービスだ。魔法使いのような専門家の知識で、わたしだけの問題を根っこから解決してくれる。そんなスーパーパーソナルなサービスには、自由にお金を使える大人ならではの楽しさがあり、自分の価値をちょっとだけ高めてくれる良さがあると思う。

 

最初のきっかけは、某百貨店のシューフィッティングだった。幼馴染に連れられ、1時間ごとの完全予約制だと言うカウンセリングを受けるために、自宅から2時間かけて、遥々出向いた。「どうせ買わなきゃならないんでしょ……」と内心気が重くもあったが、同時に、悩み多きわたしの足の救世主になってくれるのではという期待もあった。小学生の頃から革靴で長距離通学をしたことによるひどい外反母趾と、高さのある足の甲、そして、1本1本の指が長く、足の先端が細い宇宙人のような足形のせいで、これまでの人生、1度も自分に合う靴に出会ったことがなかった。
期待半分で向かった靴売り場の一角で、足の長さだけでなく、幅や高さなど、複数面のサイズを測る。計測だけでなく、販売員さんはわたしの足を触りながら、歩き方の癖を見て、やや苦笑。そして、「これはなかなか問題有りですね」と評価。自己評価通り、わたしの足には、赤点ぎりぎりの点数を付けられてしまった。
 

かつて足の形に悩むわたしに、祖母が矯正用の分厚い中敷きやごつごつしたスニーカータイプの靴を買ってくれたことがあった。しかし、わたしの中でのつまらないポリシーにより、やむを得ない場合を除き、基本的にヒールのあるパンプスで過ごしていたいため、祖母には申し訳ないことに、お世辞にもスタイリッシュさは無い矯正用のアイテムは、ほとんど使用することがなかった。販売員さんから足に対して赤点評価を付けられ、頭の中は、ごつごつした靴たちの思い出でいっぱいに。どう断るか、言い訳を考え始めていたときだった。販売員さんが奥から持ってきたのは、先端が細身で、立体的な美しいグレーのパンプスだった。「たぶん、このメーカーのものなら合うと思うんです」、差し出されたパンプスは、わたしの宇宙人足にもぴったり合った。靴の足先部分にスペースが余ることが当たり前だと思っていたわたしにとって、心地よい着圧感で足全体を包んでくれるパンプスは魔法の靴のようだった。3足即決で購入。1足3万円もしたのに。大丈夫、気にしない。

 

その靴を履き始めてから、長時間の通勤が苦でなくなった。靴のヒールが高い日は、会社に着くと、ヒールの低いパンプスに履き替えて仕事をしていたが、魔法の靴で出社した日は、1日中その靴で社内を駆けずり回っても、足の疲れは最小限だった。何より、ハイヒールを履いて、高揚した気持ちで仕事をしている自分のことが、とても好きになった。

 

こうして、わたしだけの身体の悩みを言い当てて、根本的な解決へと導いてくれるプロのサービスに夢中になった。企業の偉いひとたちがホテルやクレジットカード会社のコンシェルジュサービスを利用する理由がなんとなく分かった。お金をかけずに自分で考えることでも、当然最低限欲しいものは手に入る。しかし、その道のプロフェッショナルによる知恵と時間をお金で買うことによって、得られる結果は、何十倍にもなるのだ。

 

次に利用したのは、骨格タイプを見極めたうえで、似合う服装を見つけるために、プロが一緒に百貨店へお買い物に行ってくださるサービス。人間の骨格は、ストレートタイプ、ウェーブタイプ、ナチュラルタイプの三通りに分類できるとのことで、プロが自分の骨格に合う組み合わせを選んでくれる。当然、自分に似合う服装、似合わない服装は、なんとなく鏡を見れば分かるし、ある程度1人で買い物に行く年齢にもなれば、試着をするまでもなく、似合う服の傾向は分かるものだ。わたしも半信半疑ではあったが、お勧めされた服を試着して鏡の前に立ち、お世辞抜きで大変感動した。たしかにその服は、普段ならあまり選ばないサイズ感の服だった。上半身に厚みがない一方で、下半身ががっしりしたウェーブタイプのため、服装を間違えると、がっしり存在感のある体形に見えるが、鏡の中のわたしは、全体的にまるで華奢な女の子のように見えた。コンプレックスだった体形を魔法使いが変えてくれた気分だった。そこでも、トップスとスカートを2セット購入。1セット4万円以上したのに。大丈夫、気にしない。

 

分かっている。百貨店にとっては、良いカモだろう。しかしこちらからすると、魔法使いにわたしだけの魔法をかけてもらえたことで、それ以上に、こんなにもハッピーにお買い物ができた。自分のことがもっと好きになった。

 

商品の購入だけでなく、対面で接することで、前後で魔法をかけてもらえるサービスはほかにも。
百貨店の低層階フロアによくある化粧品売り場で、ブランドの美容部員さんにメイクをしてもらえるタッチアップサービス。胸やお尻を綺麗な形に育てるために、形や成長具合を見極めて、段階に合わせた下着を提案してくれる下着のカウンセラーサービス……
化粧品を買うのも、下着を買うのも、わざわざ店舗に行かなくても、インターネットで簡単に手に入る。しかしそれでは物足りない。直接対面し、身体に触れ、コミュニケーションを取り、悩みを解決する提案とともに、買い物をすることこそ醍醐味だと言える。クレジットカードの引き落とし日前後は、少しばかりドキドキするが、手元には、自分を最高に幸せな気分にさせてくれる魔法のアイテムたちが残っているから、大丈夫、気にしない。
 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、外出自粛の日々がつづいている。オンラインで受けらえるサービスが次々と生まれ、自宅にこもる中でも何不自由なく過ごすことができている。それでもやはり物足りない。状況が落ち着いた暁には、是非お財布を握りしめて、外へ出て、楽しんでほしい。数カ月後のクレジットカードの請求に怯えながらも、悩みをまるごと解決してくれる魔法にかかり、対面ならではの付加価値のあるお買い物を。

 

この暗闇が晴れたら、また魔法をかけてもらいに行こう。

 
 
 
 

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2020-04-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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