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家族になった胡蝶蘭

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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栗林 弘志(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 

一年前に知り合いから貰った胡蝶蘭。もう花が終わりかけだった。

寄せ植えの中から二つ頂いた。家の中で白くて可憐な花が、家族の心を癒してくれた。でも一週間たったところで花が次々と落ちていった。

 

最後に残ったのはただ細長い茎だけ。あの華やかさはどこにいってしまったのかと思うほど寂しい姿だった。これで終わりかなと思った。

 

みんな貰った胡蝶蘭はどうしているんだろう。処分の仕方をネットで調べてみた。なんとやり方によってはもう一度咲かせることができるらしい!

 

よく読むと茎を途中でバチンと切り落とすと書いてある。うーん、本当に大丈夫かな。かわいそうだ。不安な思いがよぎる。他のサイトも手あたり次第に調べる。みんな同じようなことが書いてある。

 

よし、やってみよう! 思い切って茎をバチン!

 

厚いレースのかかった出窓に置いた。心配だが様子を見るしかない。毎日どうなっているか見てみるが何の変化も起きない。家族に手入れを任せているうちに、胡蝶蘭のことはすっかり忘れてしまった。

 

それから数ヶ月たったある日、ふと目をやると、切った茎から横向きに新しい茎がひょろりと長く伸びている。なんだか不格好だなと思った。

 

さらに一ヶ月たった。伸びた茎に、なんと小さな花芽がついている! それも九つ!

 

これはもしかしたら咲くのかな? これからどうしたら良いんだ? まさか花芽を間引きしたりしないよな? すごく気になりだした。

 

毎日チェックする。やはりすぐに変化は起きない。そして二月になり、世間は新型コロナ一色になった。暗い話、不安な話ばかりが報道される。

 

そんなある日、我が家の胡蝶蘭は、突然一番奥の花芽が大きく膨らみ始めた。

そしてついに咲いた。朝から開き始め、途中の姿はかわいい足れ耳ウサギの顔にように見える。

 

そして翌朝、見事な大輪が開いていた。小さな花芽からは想像できないくらい大きな花だ。

 

胡蝶蘭の花言葉を調べた。
「清純」
「幸福が飛んでくる」。
 

白い胡蝶蘭の花言葉は
「純粋」。
 

世間の新型コロナがどんどん悪い方向に進んでいく中で、九つのつぼみは順々に咲いていく。あっまた開いた! 今日は、この子が開きそうだ! 本当に毎日幸せを感じることができた。

 

とうとう四月に入って最後の一つが咲いた。この子たちのおかげで、我が家には幸せが飛んできた! ありがとう!

 

いつ散ってしまうか心配だけど、今は九つの見事な花に心を癒され、ストレスも溶けていく。まだ、大変な時期は続くけれど、九つの白い癒しのおかげでゴールデンウィークも家の中で過ごすことができそうだ。

 

偶然もらった胡蝶蘭。きっとよその家でも、同じように花をもらった人たちは幸せを感じているに違いない。一時は寂しい姿になったけれど、それも次の命をつなぐためには必要な事なんだと感じる。今は、世界中の誰もが大変な思いをしながら不安の中で過ごしている。これも次の成長の糧にしていかなくてはいけない。

 

そう思うと、少し元気が湧いてくる。胡蝶蘭みたいに幸せを運んでくる存在になりたい。花にこんなにパワーがあるとは思わなかった。

 

胡蝶蘭が咲いてから、家族の心がまとまってきた。怒ることが少なくなった。代わりに笑顔が多くなった。家の空気が一層柔らかくなった。

 

これまで辛いニュースは、すぐにチャンネルを切り替えていたけれど、今は状況を冷静に受け止められるようになった。どんな状況でも、前に進む勇気が出てきた。

 

たった一鉢の花。それを丁寧に守ってくれた家族に感謝。

 

サイトをみたら、胡蝶蘭は長生きで中には60年も生きるものもあると書いてある。それじゃあこっちが先に逝ってしまうじゃないか。そう思ったが、まあそれもいいか。枕元にこの子がいたら、それはそれで幸せかもしれない。

 

一時は、枯れてしまったかと思った花。しかし、その生命力は逞しい。清楚で可憐な中に秘められた逞しい生命力。この魅力に人は惹きつけられるんだろう。魅入られた人々に、元気と勇気を与えてくれる。

 

これまで胡蝶蘭は、お店の開店や会社の移転などで良く見かける花で、綺麗な花だなとしか思っていなかった。今は、もっと身近にその生命力を感じることができる。

 

これから新型コロナの終息に合わせるように、可憐な花も散っていくのだろう。この大変な時期を乗り越えるために、この時を選んで咲いてくれたのかもしれない。花を落として、また力を蓄えて、来年もその翌年もずっと花を咲かせてくれるだろう。

 

一年前に我が家に来たこの胡蝶蘭は、いつの間にかかけがえのない家族になっていた。

 
 
 
 

***
 
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2020-04-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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