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メディアグランプリ

ヌードモデル、はじめました。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:あにか(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 

ヌードモデルの仕事は、脱ぐ。そして静止する。それだけである。
いたってシンプルな仕事であるが、これがかなりの体力勝負なのである。

 

私がアート教室でヌードモデルを始めたのは2019年5月のことである。

 

仕事を始めた動機はいたってシンプル。ドイツ人の友人に誘われたのだ。友人は日本に来る前に自国でヌードモデルの経験があり、ヌーディストである彼にとって、ヌードモデルをしている時間は、この社会の中で唯一の人前で自然体になれる時間だということを教えてくれた。

 

自分は「百聞は一見に如かず」というモットーをもとに生きているような人間である。それゆえに自分が人生の中で挑戦したことがないものに出会ったときには、後先考えずに挑戦してしまうという性格を持っている。

 

アート教室のアトリエでヌードモデルを始めたキッカケも、自分が出会ったことのない新しい世界に入り込み、新しい何かをするいいチャンスだと考えたからであった。

 

自分がヌードモデルをしていることを友人や初対面の人に言うと、必ず「は?」という反応がニヤケ顔とともに返ってくる。

 

その「は?」には、ヌードモデルって人前で裸になるのか? という普段私たちが属することのない世界に対する好奇心と、こいつは怪しいやつなのか? という警戒心が含まれているのではないかと個人的に感じる。

 

普段よく聞かれる質問としては「何分止まってるの?」「しんどくないの?」「よくずっと止まってられるね。モデル中何考えてるの?」「人前で裸になるの恥ずかしくない?」というものがある。今回はこれらの質問に対して答え、そして個人的な意見を述べていきたい。

 

まず、基本的なことから説明したい。私が経験したことがあるのは、固定ポーズのモデルとクロッキーのモデルである。どちらも人体デッサンのモデルである。

 

固定ポーズでは、20分間同じポーズを取り続け、7分間の休憩、この繰り返しを5セットすることになる。つまりトータルで100分間同じポーズで静止していることになる。これを1日に1セットだけの場合もあれば、間に休憩を挟み、1日数セットすることもある。また、5日間連続で毎日1セットずつという場合もある。

 

この固定ポーズでは、同じポーズで長い時間止まっていることを要されるので、ポーズ自体はそこまで難しくない場合が多い。ただ椅子に座り、手を腿の上に左右非対称に置き、視線はどこか遠くを1点集中するのだ。

 

それに比べてクロッキーは、1ポーズが2分から20分と時間に幅がある。5分ポーズを休憩なしで4本連続とることもあれば、20分ポーズ1本で休憩に入るということもある。これもまた20分ごとに少しの休憩が入る。同じポーズを続ける訳ではないので、ダイナミックな動きのあるポーズもできるようになってくる。

 

ポーズはモデル側が決めるため、たくさんのポーズのアイデアがモデル自身の頭の中に必要になってくる。体の疲れ具合を見極めながらポーズを変えることができるために、体の一部分が極端に痛くなることはない。自分の好きなポーズができるため、クロッキーのモデル中には、自身のテンションが上がってくるのを感じる。テンションが上がりすぎた結果、たまにダイナミックすぎるポーズを取る場合がある。するとポーズのキツさに自身の体の限界を感じ、ポーズの最中に冷や汗をかきはじめることになるのだ。

 

ヌードモデルとして働くことに関して、「よく止まってられるね。モデルの時に何考えてるの?」と聞かれることがある。私個人的には、自分の世界に入り込むいい機会になっていると考えている。まあクロッキーの際には、次のポーズを何にするかということをひたすら考えているのだが、固定ポーズの場合はひたすら自分と問答しているか、瞑想をして(迷う方の迷走ではない)呼吸を楽しんでいる。

 

頭の中の状況としては「今日の晩御飯何にしようかな。冷蔵庫に豆腐と玉ねぎあったしな」という日常生活について考えていたり、「自分にとっての幸せってなんなんだろう?」というような哲学的なことに関して脳内議論を繰り広げていたりする。そして何かを考えるということに飽きたら、声に出さずに自分の心の中で歌ってみたり、頭の中でダンスを踊ってみたりする。「あと何分かなー?」「1・2・3……」と残り時間をカウントし、自分の時間感覚が実際の時間とどれだけズレているのかを試していたりする。また、脳内一人会話を繰り広げ、ひとり英会話教室をくり広げていることもある。

 

ここからみてわかるように、そんなにたいしたことは考えていないし、そこまで20分間止まっていることは苦痛でもない。まあ、これが苦痛かそうでないかは、人によると思うし、慣れというものであると思う。

 

人前で裸になることは恥ずかしくないのかとも聞かれるが、個人的には恥ずかしいと思わない。

 

ヌードモデルを始める前までは、自分が人前で裸になれるのか、もしくはなりたいのか、よく分からなかったのだが、始めてみるととても気持ちのいいことであると気づいた。人前で裸になるという社会でよろしくないとされている行為を、堂々としても怒られることはないのだから。

 

人間の体は人それぞれ特徴があるが、全ての人間が持っているものである。
それをなぜ隠す必要があるのだろうか。

 

見られても減るものではないし、自分に不利益が被るわけでもない。

 

むしろ、私の体という、他の誰も持っていない体を見てもらい、それがアーティストたちの役に立つのなら、是非という感じである。

 

また、自分の体が人にどう見られているのかを知ることはとても面白い。
鏡の前に立って自分の体を見ても、コンプレックスや自信のある体のパーツばかりに視線がいってしまう。しかし、他人が見る私自身の体というのは、自分が見ているものとは違い、その視点を知れるのがまた面白い。

 

某ウイルスの影響で最近はモデルをできていない。

 

はやく私のモデルの時間帰ってこい。

 
 
 
 

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2020-04-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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