将来が不安な人に読んでほしい本
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記事:武田かおる(リーディング倶楽部)
「今の働き方でいいのだろうか?」
AI技術やコンピューター化の導入で、今まで存在していた仕事がなくなり、日本社会は少子高齢化が進み、人生100年時代が訪れると言われている。雇用の面では終身雇用制の崩壊など、収入面や先行きについて不安を煽るニュースばかりである。
このように、未来が予測できない今日、働き方が大きく問われる時代になった。そんな中で将来に不安を抱く人は私だけではないと思う。
さらに、輪をかけるように、新型コロナウイルス禍は、現在起こっている社会の問題を直視せずに、このまま会社で定年まで働き続ければ大丈夫だろうと思っている人々にも、大なり小なり冒頭の質問を突きつけたのではないだろうか。
私も会社勤めではなくフリーランスで働く身だが、先の見えない将来、自分の働き方がこれでいいのか、2、3年前から自問自答する日が続いていた。
そんな中で、今年の2月末に出版されたばかりの、「なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?」を読んだ。著者の大西益央さんは、私の住むアメリカの東海岸の都市ボストン近郊で、マイナス10℃の真冬でも行列が途切れないラーメン店「Tsurumen Davis」を経営されている。その経営の特徴は、営業は1000日間のみに限定、また1日夜2時間しか営業しないということだ。行列ができるほどお店が流行っているのに、閉店の日を決めて1000日しか営業しないのだ。その独自の経営理念が注目を集め、昨年2月、大西さんはテレビ番組の「情熱大陸」でも紹介された。
「情熱大陸」の放送も拝見して、もっと番組で紹介されていない部分があるのではないだろうかと、私は本のページを次々にめくった。
まず驚いたのが、1000日しか営業しないと聞くと、素人的に、「今のうちに行かないと」と顧客を思わせて来店させる方法で、マーケティングの手法なのだろうかと思っていたのだが、それは違った。その理由は本書を読んでほしいが、あくまでも大西さん主体の考えから設定している終わりの日であり、話題作りなどではない。(1)
経営論と聞くと、マーケティングやビジネスの専門用語などが出てきて、経営等はド素人の私が理解できるのだろうかと心配したが、本書はすごく読みやすい。
それは、大西さんが実際に経験した「どん底」からどうやって今の成功を導き出したかが知れるサクセスストーリーをわかりやすく紹介しながら、経営論や人生論と結びつけているからだろう。そして、本書を通じて、経営に関してだけではなく、将来が不透明なこの時代の生き方へのヒントを見つけながら読み進むことができたからではないだろうか。
ストーリが進むにつれて、大西さんの文章とともに共感したり、目からウロコが落ちたり、胸が熱くなったりしながら、最後には不確かな未来へ一歩踏み出そうという気にさせてくれる本でもある。
その中でも一番心に残っているのは、次の文章だ。
「未来のことは、成長しているであろう未来の自分に託して、今は今の自分に神経を集
中させなければいけないのです。
将来を心配するのではなく、今の成長にフォーカスすることこそがいちばんの『リス
クヘッジ』になります」(2)
新型コロナウイルス禍で、ビジネスも働き方も生活にも制限がかかり、今までと全く同じでは通用しない世の中になってしまった今、計画を立てようにも難しくなってしまった。また、将来、新型コロナウイルス禍が収束した後も、今までと全く同じように行えるのかさえもわからない。
だが、今から先の見えない将来に対して心配することや不安になることに「今」という時間を費やすのではなく、自分が今置かれた状況で何ができるか考えて、昨日の自分よりも少しでも成長できるように、「今」を努力することが、将来のためのリスク回避になるという風に私には受け取れた。
この本は、経営や人生論のバイブルとなるのかもしれない。なぜなら、時代によって経営論は変わるだろうし、日々多くの書籍が発売されているが、それらがこの先もずっと通用するかどうかはわからない。しかし、この本に書かれている内容は、シンプルでありながら幸福論にも言及していて、時代やそのときの顧客の動向に左右されるものではなく、自分主体で考えるものが多く、いつの時代にも応用できそうだからだ。
「今」という時間は平等に誰しもに与えられた時間だ。それを不安に過ごすのか、あるいは、より効果的に使うのか。
まず、あたなの「今」を本書を読むことから始めてみることをおすすめする。
そうすることで、今目の前にある不安は徐々に形を変えて、よりよい未来へとつながっていくことになるかもしれない。
《参考図書》
大西益夫(2020)『なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?』光文社
《引用文献》
脚注
1)大西益夫『なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?』(光文社、2020)
11ページ
2)大西益央 前掲書 30〜31ページ
***
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