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メディアグランプリ

逆立ちが教えてくれること


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松本初穂子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
最近、ストレスを感じていた。移動は制限され、人と顔を合わすのは画面越し、という生活が続いて早1ヶ月。この淡々とした日々に飽きていた。思い出を振り返ることに疲れ、未来は何も描けない。満たされない気持ちがずっと続いているけれど、何が足りないのかわからない。同居する祖父母にもイライラしてしまう。
 
そんな自分の疲れに気づいたわたしは、どんなことで満足感を得ていたのだろう、と考えてみた。するといままで新しいものを見たり体験したりして刺激を受け、満たされていたことに気づいた。そうだ、見たことのないものをみたいのだ。それも画面越しではなくて、自分の目で見て生で感じたい。外出できないなか、どうしたらこの欲求を満たせるのだろうか。
 
ふと、世界を逆から見てみればいいんじゃないか、と思いついた。そこですぐさまYoutubeを開き「逆立ち 方法」で検索してみる。最初にあがってきた動画をみてみると「まずは壁に足を立てかけて練習する」「手は逆八の字、首を突き出すようにすると足は軽やかにあがる」という。なんとなく、できそうだと思った。
 
いざやってみようとするも最初の難関に出会う。いつ逆立ちをするか、だ。祖父母には絶対に気づかれたくない。祖母はいつも「この家は築60年だからいつ床が抜けてもおかしくない」と心配しているから、壁を蹴ったり床に倒れたりする逆立ちを見られたら絶対に怒られる。一方、祖父にも気づかれたくない。人をからかうことが大好きなひとだから、必ず邪魔してくるだろう。これらのリスクを計算し、祖父母がまだ眠っている早朝に練習をすることにした。
 
ようやく環境を整え、いざやってみる。脳内では足がすっと上にあがり、頭からつまさきまでピシッとのび、身体が空に向かっている。そんなイメージとともに、壁に向かい足をふりあげようとする……怖い。自分に迫ってくる壁の圧迫感を恐れて全然足をあげることができない。「できそう」という自信は0.5秒で打ち砕かれた。わたしは自分の無力さを痛感した。
 
ここでやめては意味がない。いつもと違う世界を見たいのだ。今度は「逆立ち 初心者 簡単 方法」と検索してみると「手は壁と反対につき、足を壁に立てかける。そして手を壁の方向に歩かせると初心者にも逆立ちできる」らしい。これだ。これならできそうだ。気を取り戻し、足を壁にかけ、ゆっくりと壁にそって歩かしてみる。足が伸びきった。よし、次は手を足のほうに……行かない。手が全く動かない。畳が滑り、腕の筋肉がこれ以上身体を支えきれなかった。悔しい。できそうなのにできないもどかしさに襲われた。絶対に逆立ちしてやる、という目標がこのとき生まれた。
 
それからわたしの逆立ちチャレンジが始まった。毎朝、壁に足を立てかけて時間を測る。1分間保つことができればだんだんと出来るようになるという。初日は10秒も持たなかったが、3日目は20秒までキープできるようになった。また、恐怖に打ち勝つため、イメージトレーニングも行っている。壁に向かって手をつき、しゃがみ姿勢で足を軽く浮かせるというものだ。「これ以上足を浮かせるのが怖い」と思うたび、自分がいかに臆病でちっぽけか感じている。
 
逆立ちは生活に変化をもたらした。まず、毎日の筋トレに意義を見出すようになった。これまでなんとなくやっていた筋トレだが、いまは身体を支えられる筋肉と体幹を養うために必要なことだ。目標があると全力で取り組めるから、筋トレもやりがいがある。祖父母へのイライラもなくなった。「わたしは自分の身体すら思い通りに動かせない」と認めると、他人に「こうしてほしい」と思うことがなくなった。壁に飛び込むのが怖いと思うたびに、自分はまだまだ未熟だと思い出すため、何か注意をされても素直に受け入れるようになった。
 
とはいえ、本来の目的だった「世界を逆から見る」ことはまだ達成できてない。しかしわたしは着実に自分の成長を感じている。ある本で「人はできそうでできないことを目標にすると成長する」という文言を読んだが、逆立ちはわたしにとってまさしくそれだ。日々の練習と失敗で自分を見つめ直し、少しずつ身体を持ち上げられるようになることで自分の成長を感じている。いま目標になっていることがあるから、過去を懐かしんだり未来を不安に思ったりする必要もない。逆立ちという、できそうでできない逆立ちのおかげで、わたしは毎日「いまを生きる」ことができている。
 
 
 
 
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2020-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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