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メディアグランプリ

学びは普段の生活の中につねに潜んでいた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡辺まほ (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ねえ、宿題ってこれだけ?」
「うん」
マジですか……。
 
息子の小学校は3月から休校中。
そんな中4月13日にあった登校日。
クラス発表もされ、休校中の過ごし方も指導してくれるとのこと。
宿題も出してくれると助かるなーなんて思っていた。
が、その期待は裏切られた。
帰ってきて確認したところ、音読と漢字練習、数枚のプリントのみ。
音読と漢字練習は毎日コツコツできるが、プリントなんて1日でできる量だ。
休校期間はあと3週間以上。
あとは自習を頑張れという厳しい内容だった。
動物園の動物に1日分だけエサを与えて、あとは自分でエサを探せといっているようなものだ。
 
幸いにして、新学年の教科書は持って帰ってきていた。
私が教えるしかないな……
息子はこの4月から小学三年生。
学習内容は生活の基礎となる知識が主で、大人にとっては難しい単元ではない。
これが中高生ともなると、教えるのが難しいことであろう。
まだ子どもが小さくてよかったよ、ほんと。
などと思いながら、子どもが寝静まった夜に教科書を一気読みした。
 
小学生の授業は1コマ45分。だいたいそれが、毎日5~6コマ。
音楽・図工・体育などもあるが、学校では毎日4時間程度は勉強していることになる。
4時間……
休みを入れつつも、机にずっと向かっていられるか?
学校にはないテレビやゲーム、おもちゃなどの誘惑が家には目につくところにある。
ひとり部屋はないし、幼稚園児の娘がぐちゃぐちゃつきまとってくるし、集中できる環境からは程遠い。
休み時間に、友達とバカ話して息抜きなんてこともできない。
 
はてさて、どうしたものか?
 
助けになるものはないかと、友達のSNSを検索。
「毎日料理を娘に仕込んでいる」
「昼食の後は掃除の時間を設けた」
など書いてある。
 
体を使う実習か……
正直、面倒くさい。
が、机と椅子に見えない鎖で縛り付けておく方が難しいかもしれない。
 
理科の教科書に「種を植えて成長を観察する」単元があった。
私は毎年ベランダでミニトマトを育てることにしているが、今年はまだ取り掛かっていなかった。
仕方ない、まずはそれを子供と一緒にやってみることにした。
夫が在宅勤務の日、ひとりホームセンターへ出かけ、ミニトマトの苗と、ヒマワリの種、いくつかの花苗を購入した。
 
「はい、今から理科の授業はじめまーす」
「理科?」
「そう、理科。ミニトマトとヒマワリ植えるよ!」
息子は少々面倒くさそうに、しぶしぶ頷く。
 
まずは種の観察から。
私だけならすっ飛ばすところだが、教科書に書いてあったのでやることに。
ヒマワリの種は白い筋が入った平たく長細い楕円形というイメージだったが、私が買ってきたヒマワリは『モネのヒマワリ』というヒマワリ。
種は真っ黒で1cmくらい、長細い四角錐の形をしていた。
これは私にも発見だった。
どこからか虫眼鏡を持ってくる息子、拡大してはノートに記録している。
 
その間に、私はベランダに設置してあるミニ物置から、用具を出しておいた。
子供たちもエプロンと軍手をつけて準備完了。
 
最初に植えるのはミニトマト。
苗ポットから娘が苗を取り出したいという。
「こうやるんだよ」
息子が教科書を見ながら、土に手をそえてポットを逆さまにして取り出す動作を娘に教えていた。
「僕が土を入れるよ」
率先して、空の鉢に土を入れていく。
その土の上に苗をそっと入れて、鉢と苗の隙間にさらに土を丁寧に埋めていった。
最初、しぶい顔をしていた息子が、積極的に関わろうとするのをみて驚いた。
 
次に、空いた苗ポットに土をいれ、観察が終了したヒマワリの種を植える。
「小指のさきっぽくらいの穴を2cmくらいの間隔であけて、そこに種を1つずつ入れてください。そうしたら土をかぶせてね」
「さっき見たから、ぼくわかるよ」
息子は自分で穴をあけて種をそっと入れ、土をかぶせて完了。
他の鉢にも一緒に買ってきた花を植えた。
 
「はい、このあとは何をするでしょうか?」
「水をあげる?」
息子が自信なさそうに言う。
「正解、ではお任せします。土を流さないようにそーっとやってね」
水を張ったじょうろを、ほっとした顔をした息子に渡す。娘とともに水やりを任せた。
 
私は片付け。ついでに、サボっていたベランダの掃き掃除も済ませて完了。
 
水やりを終えた子供たちは、部屋の中で何やら作業を始めていた。
「何してるの?」
「感想書いてるの」
「ミニトマト植えた感想?」
「そう」
息子が一生懸命、ノートになにか書いている。
『なえポットから、なえを取り出すところがむずかしかった』
へえー、感心。私が言う前に自分から進んで感想を記録するなんて思わなかった。
息子の目はらんらんとしていて、その後もひたすらにノートに鉛筆を走らせていた。
 
「おかあさん、みてー」
私が兄ばかり見ていると思うと、娘はきまってかまって攻撃をしてくる。
「どれどれ。『えめしやわ、いいかおりがして、おうしそうなにおうしそうなによいがするはな』?」
別に買ってきたネメシアという花苗について、『ネメシアは、いい香りがして、美味しそうな匂いがする花』と書きたかったようだ。
「ギャハハハ、ちょっとお母さん、笑わせないでよ! ぼく、書けなくなるじゃん!」
「だって、アキちゃんがそう書いてるんだもの」
 
3人で大笑いした。
久しぶりに、腹の底から笑った。
 
子どもが進んで何かをする姿を見るのは、頼もしくみえる。
鎖で繋がれていた犬が、ドッグランに放たれれば自由に駆け巡るように。
苗を植える活動に、息子は自ら関わろうとしていた。
始める前と、終わった後で、表情が変わっていた。
私もそんな子供の姿を見られて、宿題やドリルをただ終わらせること以上に達成感を得られた。
準備の面倒臭さより、子供と深く関わり合う楽しさが勝った。
姿勢良く机に向かって問題を解くことだけが勉強じゃない、と改めて感じた。
 
休校という環境の変化がなければ、苗植えは私一人でやっていたことだろう。
以前の生活は学校と習い事の時間に追われていて、工夫して何かを子どもに教えるなんてこと考えもしていなかった。
普段の生活の中に学びがある。そこかしこに学びの種は潜んでいたのだ。
他の人にとっては、そんなことは分かりきったことだったのかもしれない。
でも、私にはこの環境の変化が教えてくれたことだった。
 
次は子供と一緒に何をしよう?
今、すごくワクワクしている。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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