せっかくの“ありがとう”が伝わらない、残念な地雷ワードに出合った
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記事:カラノ(ライティング・ゼミGW集中コース)
「地味」という言葉に、どんなイメージを持ちますか? 華がない、暗い、陰気くさい、目立たない……。通夜・告別式、就職活動といったシーンでは、“地味”はマナーの一環。でも日常生活においては、地味な色、地味な性格、地味な服装など、地味という言葉が付くと、あまりいい印象を受けません。もし、他人から「あなたは地味ですね」と言われたら、たとえ自分が地味だったとしても、私なら「え、やっぱりそうですか?」と微笑みながら、心の中では友好断絶です。あまりに直球で、これはもう、地雷ではなく“爆弾ワード”です。
この「地味」を含みながら、直球の爆弾ほど大きなダメージは受けないけれど、“なんだかなぁ”と思う言葉を友人から受けました。地雷を踏んだその言葉は「地味にうれしい」。地味とは対極にある、キラキラワード“うれしい”がセットになったこの言葉を、なぜ地雷ワードに認定したか。先日の出来事をお話ししたいと思います。
「地味にうれしい」が含む上から目線
新型コロナ対策の流れにのって、私が勤める会社でもテレワークが導入されました。噂には聞いていたけれど、通勤がなくなると日常生活の運動量がこんなにも減るとは! もともと運動不足なのに、このまま家に引きこもるのは危険! そんな思いから、仕事の後、運動という名の散歩を始めることにしました。とはいえ、日ごろ運動習慣がないので、散歩に出るために、1日1枚ハガキを書くというミッションを設定。ちょっと遠くのポストまで歩くことにしたのです。
コミュニケーションの主流がLINEをはじめとするSNSになり、友人からハガキといえば年賀状くらいしか受け取ることがない昨今。こちらが一方的に(それも散歩のミッションとして)出したハガキなのに、「手書きのあたたかさ、やさしさにホッコリしたよ」「私も友人に、ハガキを書くことにした」など、友人たちからのメッセージがSNSに届き、ハガキを送って良かったと思っていたとき、友人からそのLINEは届きました。
「カラノさん、昨日ハガキが届きました。ありがとう。郵便って地味にうれしい」
久しぶりに聞いたよ、「地味にうれしい」って! おそらく友人は “しみじみ、うれしかった”というニュアンスを伝えたかったのだと思います。ただ、言うまでもなくLINEは文字として目に入ってきます。地味という字面が持つネガティブな印象がメッセージの中で際立ち、小骨が刺さったような感覚が残りました。「ありがとう」の言葉があっても、「ありがとう」のかわいいスタンプが一緒だったとしても(今回スタンプはなかったけれど)、この「地味にうれしい」の一言のせいで、残念なメッセージになった気がするのです。
そして、「地味にうれしい」を地雷ワードに認定したもう一つの理由は、上から目線を感じたこと。地味にうれしいを言い換えると「華はないけれど、うれしい」。たしかにハガキは地味です。おまけに今回は、私の散歩のミッションがからんだ一方的もので、「コロナに負けずに生き延びて、乾杯しようね」と、内容までも地味です。それでも、そのハガキは友人のために書いた一枚。それを「地味にうれしい」と言われると、“えっ、何様なん?”と思ってしまったのです(私の心が狭いのか!?)。
たとえば、予約をしてレストランに行き、名前入りのウエルカムプレートがテーブルに置かれていたとします。そのとき、同席の人が「こういうのって、地味にうれしいよね」と言ったら、それはまだ聞き流せると思うのです。ただ、プレートを書いてくれたレストランの人に「名前入りのプレート、地味にうれしいです」と伝えたら、話し言葉でもモヤッとする。感謝しているのに、“地味”によって“ハレ”の感覚が薄れ、その好意を提供してくれた人を下げている気がするのは、考えすぎでしょうか。
“ちょっとしたこと”へのお礼は、何が正解なのか
今回の「ハガキをありがとう」のように、日常生活でも、“ちょっとしたこと”にお礼を伝える機会は意外とあります。「コーヒーをおごってくれて、ありがとう」「予定の時間を変更してくれて、ありがとう」。そんな“ちょっとしたこと”へのお礼は、何が正解なのか。これはもう、シンプルに「ありがとう」でいい気がするんです。付箋に「ありがとう」と一言だけ書いて、ペタッと貼るくらいのイメージ。
一方で、好意の提供者が“ちょっとしたこと”と思っても、受け取る方の喜びは“ちょっと以上”の場合もあります。「コーヒーを飲みたいタイミングだったから、ありがたい」「予定の時間が変更になって、ほかの用事が片付くから助かった」。私からのハガキだって「年賀状以外に郵便なんてないから、うれしかった」と喜んでくれる友人がいるかもしれません。そのときは、具体的に言う方が、気持ちが伝わる気がします。
言葉を飾ることで、本来の気持ちが伝わらなくなる、文字だとなおさら。そんなことを“地味に”学んだ友人からのLINEでした。
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