メディアグランプリ

「推し」の目に留まる文章の書き方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡邊千尋(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
この文章は「推し」に向けて書いています。
とは言っても、広いインターネットの海でこの記事が推しの目に留まることはないでしょう。本当に読んでもらいたいという訳ではなく、そういうつもりで書いている、という意味です。
 
私は今、人を楽しませる文章を書くという壁にぶち当たっています。
 
読み切ったあとに「読んで良かった」と思ってもらえる文章とはどんな内容だろうと、考えれば考えるほどわからなくなってしまい、何を書いてもしっくりこないのです。
よし、タメになる話を書こう! と思っても、そもそも読者がどういう人間なのかがわからないから、何がタメになるのか、何を伝えれば喜んでもらえるのかがはっきりとしないままぐるぐると考えがまとまりません。
 
自慢できるような特技もタメになるようなライフハックも、驚くような人生経験もない。
ライティングゼミに通っているくせに、文章を書く目的が決まらず一文字も進まないまま数時間が経つなんてこともしばしば。
 
でも、そんな私にもひとつだけすらすらと書ける文章があります。それが、”推し”への手紙です。
 
ここで言う”推し”とは、私が今応援している実在するとある俳優さんを指しています。
応援し始めてから早二年ほど。ほぼ毎月一通以上のペースで書いていて、多いときには月に十通ほど書いたことすらあります。
 
記事のテーマに悩む私が、どうして手紙ならこんなにもたくさん書けるのか。それは、書く目的がはっきりしているからです。
 
この推しへの手紙は、「相手に喜んでもらいたい」その一心だけで成り立っている文章です。利益は出ないし、明確に何かの役に立つものでもない。いわば自己満の文章。それでも書き続けるのは、伝えたいことが明確だから。
 
いわゆるファンレターの中身に正解はなく、人によってそれぞれ書く内容は違うと思います。私は主に感想を書くことを目的としていて、あのときどう思ったかや、こういう感情になったなどを伝えることにしています。
「格好良い」や「可愛い」の言葉はきっと見飽きるほどに見ているかもしれないので、同じことを伝えるにしてもちょっと言い回しを変えてみたり、違う視点からの感想を投げてみたりしています。
 
また、一日におそらく何十通もの手紙を読むだろうことを想像すると、出来るだけ読みやすい、読んでいて疲れない文章を書くようにしなきゃと思うようにもなりました。
元々、手書きの文字を書くことがあまり得意な方ではなかったのですが、綺麗に読みやすい字を書くように心がけたり、行間にも気を使って、出来るだけ読みやすい改行の位置はどこだろうと工夫をしたりもしています。
 
例え一方通行の自己満の文章でも、読み終わった後にこれ面白かったな~と思ってもらいたいので、途中でちょっと笑える話題を入れておくようにしたりもします。
せっかく文章を書くのだから、読んだという事実だけじゃなく、その結果何かしらの気持ちや思いを残してもらいたいという気持ちが図々しくもあるのです。記憶に残りたいと思うのは、物書きを趣味とするサガなのかもしれません。
 
こうして私が推しへの手紙で行っているひとつひとつの取り組みを思い返すと、自己満の文章だけれど、そこには「相手に喜んでもらう」ための工夫と努力が詰まっていました。”推し”という読者のために、一生懸命あらゆる努力をして文章を書いている。
その努力も、突き詰めれば結局は自分のための努力でしかありません。伝えたいことをきちんと伝えたい、自分の想いをわかってもらいたいという気持ちが基礎になっています。伝えたいことが無ければこんなにも努力はしていないと思います。知らず知らずのうちに、相手のためにやっていることが自分のためになっているのです。
 
まだ見ぬ誰かのための文章を書くのは、どうしたって難しい。けれど、そのまだ見ぬ誰かを”推し”だと思って書くようにすればどうだろうか。自然と伝えたい想いや、文章を書く目的が浮かんできてこの壁を乗り越えることが出来るのではないか。
 
自慢できるような特技もタメになるようなライフハックも驚くような人生経験もない私ですが、推しのための努力=自分のための努力を忘れずに文章を書くこと。それを忘れなければ、いつかどこかの”推し”の目に留まり、「読んで良かった」と思ってもらえる文章を書くことが出来る気がします。
 
 
 
 
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2020-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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