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高い山に登ることを迷うなら、おもしろそうなところへ一歩踏み出せ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:長尾創真(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「長尾くんは、どんな人生にしていきたいの?」
 
最近の就活は、企業と学生をつなぐ仲介会社の担当アドバイザーが、アドバイスをくれることが多くある。
自分から求めれば、惜しげもなく情報をいただける。本当にありがたい。
 
僕のアドバイザーの男性は、東京で働いていた。
その日は、オンラインで面談をした。
 
「今日は、長尾くんのためになりたい! と思って、気合い入れてきたよ!」
 
最初の挨拶でそう言われた。
25歳位の若くて、イケメンで、黄金色に焼けた笑顔がいい人だった。
 
面談の時間は、1時間ほどあった。
僕は、就職活動での悩みを話した。
 
聞き上手なアドバイザーを前に、あれよあれよと話した。
 
「どんな企業を受けたらいいでしょうか……」
「自分の軸が定まらなくて……」
「やりたい仕事が定まらなくて……」
 
それぞれの質問に、すごく親身に、僕の話を引き出しながら、アドバイスしてくださった。
 
充実した時間はあっという間で、いつの間にか残り10分になっていた。時間も迫る中で、ぼくはこんな話をした。
 
「ぼくは、ずっと憧れている人がいるんです。
その人が仕事にしていることを仕事にしたいと思っています。
その人は、山口でお仕事されています。
ぼくも将来的に山口に戻ってきたいと思ってます_____。」
 
アドバイザーは、今までどおり、「うんうん、良いね」と話を聞いてくれた。
それにつられて、なぜ自分がその人に憧れているか話し続けた。そして、自分がそんな人になりたいということを話した。
 
ずっと聞いてくれた。
 
すべてを聞き終わった後に、アドバイザーはこう言った。
「長尾くんの憧れは、すごくよく分かった。でも、一旦、憧れを置いてみて。」
 
「長尾くんは、どんな人生にしていきたいの?」
 
その瞬間、ぼくは、固まった。
 
僕はこれまで憧れを追う人生だった。
 
小学1年の時、サッカーを始めたのは、憧れだ。
入学してすぐ6年生と一緒に校内を散策する授業があった。その時に一緒に回ってくれた6年生の翼くんがサッカーをしていて、すごく格好良く見えて、サッカーを始めた。
 
中学生の時、サッカー部で、全国を目指そうと思ったのは、教頭への憧れだった。教頭は、ハンドボールで何度も全国大会に連れていっている名監督だった。教頭の話を聞いて、自分たちも全国に行きたいと思った。
 
高校で、文武両道を目指したのも、憧れだ。
入学してすぐ、担任の先生から
「4つ上の先輩は、センター試験2週間前に開催されるサッカーの全国大会に出場しながら、大阪大学に現役合格したんだ」と聞いた。
その瞬間、「そんな人になりたい!」と、思った。
 
大学で、ヨット部に入り、日本一を目指したことも憧れだ。
日本一という夢を目指している先輩たちが格好良くて、自分もそんな人になりたいと思って入部を決めた。
 
これまでの人生は、憧れを追い続けてきた。
 
「憧れではなくて、長尾くんは、どんな人生にしたいの?」
と、聞かれると、わからない。
 
目の前のことを一生懸命頑張ってきた。
憧れの人になれるように、頑張ってきた。
 
でも、急に「どんな人生にしたいの?」と言われても、わからない。
その質問には、あたりさわりのない回答をしてしまい、面談は終わった。
 
それからは、ことあるごとに「どんな人生にしたい?」という言葉が頭に浮かんでいた。
 
これまでの人生は自分の人生を生きていなかったような気がして。
これから自分の人生を決めないと、何か後悔するような気がした。
 
そうして過ごしている日々は、目の前のことに集中できない日々だった。
 
目の前のやらなきゃいけないことよりも、未来のことを決めることが大事な気がして。
未来のことをやりたいことを決めれば、逆算して、今やるべきことが見える気がして。
 
卒業論文や、バイトの仕事など、目の前にやるべきことは沢山あるのに、目の前にあることを棚に上げて、未来のことを考えた。
自己啓発本を大量に読み漁った。未来の立て方を勉強しようと思った。
 
しかし、一向に自分の人生の計画は立てられない。
 
「未来が決まれば、何か熱中できるような気がする」
「もうちょっとで決まりそうな気がする」
 
そう言って、フラフラと未来のことばかり考えるようになった。
 
何も手につかなかった。
その自分があまり格好良くないこともなんとなく自覚していた。
 
もうどうすればいいか分からなくなっていた。
 
そんなある日、ぼくは、アカデミー賞に選ばれた映画を見に行った。
 
この映画は、幸せをつかもうとすると、途中まで順風満帆だが、突然起こる想定外な事件で、計画が台無しになる話だった。残酷だった。
 
その映画で、こんな言葉に出会った。
 
「絶対に失敗しない計画は、無計画だ」
 
この言葉を聞いた時、嬉しくなった。
 
先を読むことのできない、この世の中で、計画的に生きようとするから、失敗する。
計画がなければ、失敗しない。
 
そんな意味が含まれていたように感じた。
 
これまでの僕は、計画的に生きてきては無い。
 
「長尾くんは、どんな人生にしたいの?」
そう言われてから、これまでの人生を否定することが多かった。
 
計画的に生きないと駄目なんじゃないか。
もっと長期的な夢を持って、高い山を登らないといけないんじゃないか。
そう思っていた。
 
しかし、そんなことはない。
 
今までの人生は、これ以上無いほどに幸せだった。
 
中でも大学でヨット部に入ったことは、素晴らしい選択だった。
 
もし、自分がサッカー小僧の時に、何か未来について計画を立てていたら、ヨット部に入るという選択をすることができただろうか。
もし、高校生の時に、将来のキャリアプランを明確に立てて、進んだら、ヨット部に入ることができただろうか。
 
いや、できない。
 
もしかしたら、もっと計画的に道を選んだら、もっと成功しているかもしれない。
そちらの道も幸せかもしれない。
 
でも、ヨット部の素晴らしさは味わうことができなかっただろう。
 
自分は、今までの自分の選択を誇りに思う。
近い夢を追いかける中で、素敵な人に囲まれて、親友が沢山できた。
自分の知らない世界も沢山知ることができた。
 
それは、遠い未来を決めてなかったからだ。
 
「絶対に失敗しない計画は、無計画だ」
 
この言葉が胸に響く。
これまでの人生の生き方を認めても良いんじゃないか。
そう思った。
 
それからは、遠い未来を決めることはやめた。
 
目の前のこと、今の自分が心揺れるもの、今の自分が一生懸命になれるものを思う存分楽しむことにした。
 
文章を書くこともそうだ。ずっと文章を勉強したいと思っていた。
写真も撮っている。自分の感情や、空の天気によって写真の雰囲気が変わることが面白い。
ハンドドリップコーヒーも始めた。少しコーヒー豆の量を変えるだけで劇的に味が変わるのが面白い。
 
この3つ、「文章」「写真」「コーヒー」は、ある男への「憧れ」だ。
 
自分を出すことが苦手だけれど、一生懸命表現していて。誰にでも優しい笑顔で。もがき苦しみながらも、前に進み続けていて。
 
そんな友人に、憧れて始めた。
 
今、自分は最高にワクワクしている。
この、文章が、写真が、コーヒーが自分をどこに連れて行ってくれるんだろう。
 
「長尾くんは、どんな人生にしたいの?」
 
その質問に対する今の答えは、
「分からない。だけど、ワクワクする今を一生懸命生きる」だ。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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