自分活動史の“総集編”の勧め
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山田由美子(ライティング・ゼミ平日コース)
2020年3月9日。在宅勤務が始まった日だ。
かれこれ3カ月、1年間の4分の1。カレンダーを見返し、あまりにも長い期間、巣ごもりをしていたことに気づき、愕然とした。緊急事態宣言の解除まで、あと一息。まもなく明けると思うと感慨深い気持ちすら湧いてくる。そこでこの期間、夢に向けて、ライフワークに向けて、出来たことと出来なかったことを振り返ってみることにした。
私はシンガーソングライターとしての活動と、会社員の仕事の二足のわらじ生活を送っている。生活の基盤は会社仕事でもらう給料だ。なので、仕事で多くの時間が取られ、音楽活動が思うように進まないことも多い。
在宅勤務が始まった頃は、浮いた通勤時間を曲作りに充てたり、在宅勤務の合間にギターや歌の練習をするなど、日頃の遅れを取り戻せることを密かに期待していた。
ところが、実際に始まってみると、在宅勤務は予想以上に忙しいものだった。同じ業務をこなすのに、通常の倍の手間がかかる印象だ。ダイニングの椅子に長時間座ってパソコン仕事をするため、運動不足と腰痛にも悩まされた。
今年は初のCDアルバムをリリースし、例年以上にライブを増やしていく予定で、やる気に満ちた年明けだった。ところが、CDアルバムは2月末に完成したものの、その後は3月、4月、5月と月日を追うごとに、ひとつまたひとつとライブはキャンセルになり、ついには6月のライブも延期となった。緊急事態宣言が解除されても、まだお客さんが安心してライブに来られる状況ではないだろう、というのが理由だ。
スタジオも休業となり、声や音を出す練習場所すらなくなった。当初は楽しかったテレビの音楽番組やウェブ上のステイホーム音楽配信も、日が経つにつれ、心に重くのしかかるものとなっていった。
そんな中、落ち込んでいても何も変わらない。知名度の高い有名ミュージシャンでもないのだから、自分が歩みを止めてしまえばそれまでだ。夢でありライフワークでもあるこの活動を継続かつ拡大させるために、何ができただろうか。自分なりに立てていた計画を思い返してみた。
計画①
「“ライブ以外でも”自分の曲を発信する場を探す」
偶然ではあるが、知人の紹介でラジオ番組を担当することになり、毎月、自分のCD曲を流せることになった。ただ、生演奏はできていない。
インターネット配信には踏み切れなかった。マンションで音が出せないこともあるが、そもそも配信のために何をどうしてよいか、一人で途方に暮れている。
計画②
「最悪の状況になっても自己完結できるよう、毎日、ギター弾き語りの練習をする」
週に1〜2回程度にとどまった。サボっても誰にもバレないため、ついつい後回しとなってしまった。
計画③
「幅広いミュージシャンと演奏ができるよう、初めての共演者にもひと目で曲を理解してもらえる楽譜を作る」
コロナ前からの自分の弱点だったが、忙しさを理由に着手してこなかった。この機会にやってしまおうと友人にサポートを依頼したら、協力してくれることに。それが支えとなり、1曲また1曲と作り上げ、残すところ2曲となった。そして今は、新曲の楽譜をサポートなしで書き始めている。
客観的に書き出してみると、伴走してくれる人がいたもの、ラジオのようにルーティーンに落とし込めたものはそれなりに達成できたが、一人でやるものは腰が重くサボったことがわかる。結局はステイホームをしていても、人との繋がりに救われていたことになる。
そして何より驚いたのが、掲げた3つの計画は、すでにコロナ以前からの自分の課題だったことだ。そう考えると、コロナにお尻を叩かれて、汗をかいたり落ち込んだりしているだけなのだなと気づいた。
まもなく緊急事態宣言は解除になるだろう。しかし完全に収束したとはいえず、いつまた逆戻りするかわからない。冬から春は巣ごもりで、ライブ開催は春夏だけになるのかな、だとしたら冬は何をしよう、などと考えたりもする。
新しい生活様式に移行する中でどうやって活動を展開していくか、あちこちで手探りが始まっている。悩んでいるのは自分だけではない。
今回の新型コロナで多くのものを失った。だけど同時に、惰性やしがらみ、知らないうちに固執してきた習慣も、流されていったように思う。そしてこの期間、友人たちと口々に交わしたことは「本当に大切なものが何かわかった」ということだった。
コロナという大きなふるいにかけられて残った、大切なもの。もう一度、本当にやりたいことを見つめ直し、少し気が重く、少し辛いけれど、再出発をしたい。
そしてその時に、苦しくなったら時々足を止め、自分なりの振り返り、いわゆる自分活動史の総集編をつくるとよいかなと思う。文字でも映像でも、友人との座談会形式でも、どんな形でもよいと思う。そうすることで、自分の本当に大切なことの手綱をしっかりと握り続けていたい。
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