ムダ話の効力
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:須磨浦普賢象(ライティング・ゼミ通信限定コース)
コロナの混乱でたくさんの繋がりが断たれたと言われている。繋がりが断たれたことで、今最も不足しているのは雑談だと思う。
私はこの春職場が変わった。こんな時期なので、当然歓迎会も同期顔合わせもない。もちろん仕事で関係する人とは話すので、毎日たくさん話してはいる。でも中身は仕事のことばかりだ。在宅勤務や休業になった人は、仕事の話すらも少なくなったのではないかと思う。
シリーズケアをひらくの『居るのはつらいよ』という、心理士さんが書かれたケアとセラピーについての本がある。
「本当の自己」とは、ぼーっとしていて無防備な自分のことだ。…何かに完全に身を委ねているとき、「本当の自己」が現れる。…そうすると、「いる」が可能になる。…環境に身をあずけることができないときに、僕らは何かを「する」ことで、偽りの自己をつくり出し、なんとかそこに「いる」ことを可能にしようとする。
新入社員、新入部員、あるいはパートナーの実家に帰省したときなど、ただぼーっと座っているのが心苦しくて、気をまわしてあれこれ雑用をして歩いたことは、誰しもあるのではないか。実家や、気心しれた仲間うちで居る時は、何もせず座っているなんて簡単にできてしまうのに。
だから、新入りが来たら歓迎会やレクをするのだ。
遊びは自己と他者が重なるところで行われる。それはすなわち、人は誰かに依存して、身を預けることができたときに、遊ぶことができるということを意味している。…しかし、同時にここには逆説がある。……遊ぶことによって、自己と他者を重ねることができる、という逆説だ。
子供は、お母さんが後ろで見ている、と思っているから安心して遊ぶことができる。新人も、安心できる環境だとわかってから初めて、ちょっと手を抜いたり素を出したりすることができる。しかし、逆に先に遊ぶ(仕事と関係ないことをする)ことによって、他者に身を預けることができるようにもなるのだ。それが、仕事以外の一面を知るとコミュニケーションがスムーズになる、ということの理由の一つだろう。
大人の遊びの最も手軽なものは雑談だ。ちょっとすれ違った時の立ち話、事務作業をしながらの何気ない会話、いわゆるおば様たちの井戸端会議は「ムダ話」と言われもするが、実は情報交換よりも、もっとずっと大事な生きるための栄養剤だ。「ムダ話」をすることで自分がここに「いる」ことが承認され、しかも「うちも〜」「わかるわ〜」という共感まであるから、存在だけでなく感情まで承認され、「こう感じてしまっている自分がおかしいわけじゃないんだ」と、メンタルケアにさえもなる。
今、最も不足しているのは雑談だ。「不要不急」の自粛は、要は用事がないことはするな、ということだ。しかし皮肉なことに、人生の豊かさには「必要必急」よりも「不要不急」の方が大事だ。コロナ禍でオンライン化が進んでいるが、オンラインは用事がある時には非常に有用な一方、ないときのコミュニケーション手段としてはまだまだ弱い。ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』に「用事があるくらいで来たりしない。用事がないから来たんだよ」という名台詞があるが、恋人と付き合い立ての時に、用事もないのに頻繁に会ったり連絡を取ったりした時の気持ちを思い出して欲しい。人間関係において不要不急がいかに大事かがわかるはずだ。
家族がいる人は、まず家族の話をいつも以上にじっくり聞くことが大事だ。いない人にはラジオがオススメだ。音楽も人の声もあり、しかもTVより雑談内容が多い。会えない友人とは、あえて用事のない電話やオンライン飲み会をやってみよう。とりあえずZOOMを繋いでおいて、お互いに全く別のことをするのもいい。ラインやメールでもいいが、実際に発声したり、相手の顔や立てる物音もわかる方が気分が明るくなる。風通しのいい公園を散歩して、すれ違った人に挨拶してみるのもいい。
「ちょっと近くまで来たから会おう」そんな風に用事がなくても会いたい人と会える日が、1日も早く戻ってくるよう願うばかりだ。だが元通りにならなくても、人生の豊かさは失わない私たちでありたいと思う。
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