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男子の心の澱をかき回す「合気道」の魅力


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記事:ひろり(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
日本には、「道」が付くジャンルのものがいくつかある。
 
「茶道」だったらお茶の道。
 
「華道」だったら生花の道。
 
「弓道」だったら弓の道。
 
どれもそれぞれの技術、考え方、心がけなど独自のものを持ち、中には国際的に認知され、世界中で愛好されているものもある。柔道や剣道はその代表格みたいなものだ。
 
では、「合気道」はどうだろうか?
 
合気道のことを人に聞くと、大体の人が「あいきどう? ああ、護身術でしょ?」と答える。
 
護身術という人はまだマシで、ひどい人になると「ああ、あの触れずに人を吹き飛ばすヤツでしょ?」とか少年漫画雑誌の一番うしろに載ってる怪しげな広告の様な事を言う人もいる。
 
僕が合気道を始めてもう5年になる。
合気道の魅力にどっぷりと取り憑かれてしまったのだ。
 
男子が一度は考えるであろう「強くなりたい」を実現すべく、僕はこれまでの人生の中でいくつか格闘系の習い事をしてきた。
 
でも、どれも中途半端な状態で投げ出してしまった。
 
小学生の時に、近所に住んでいたガキ大将に誘われて始めてみた空手は、師範代が怖すぎて途中で行けなくなってしまい、わずか2ヶ月で辞めてしまった。
 
大学生の時に先輩に紹介してもらったテコンドーは、体力的にしんどかったのをアルバイトが忙しいせいにして、1年程度で行かなくなってしまった。
 
他にも、中国拳法をやってみたりもしたけども、結果は同じ様に数年程度で終わってしまった。
 
強くなりたいという思いがあるものの、生来の気の弱さと怠け癖のせいで、どれも中途半端に終わってしまい、結局何も身になっていなかった。
 
「ああ、俺って結局武道に向いていなかったんだな……」と諦めて、就職して、結婚して、子供ができて、ごくごく普通のサラリーマン生活を送っていた。
 
でも、心の底の方には、やっぱり武道に対する憧れのような気持ちがワインの澱のように残っていて、テレビなどで柔道の試合や格闘技を見ると、その澱をかき混ぜられるような感じがしていた。
 
子供がちょっと大きくなって、幼稚園に入ろうかという頃に、何か習い事をさせようという話になった。僕は迷わず妻に「何か武道系のものをさせたい」と打ち明けた。
 
自分では身に着けられなかったけど、せめて息子には武道の技術や精神を身に着けさせてあげたい。そう思ったのだ。
 
そうしてインターネットで近所に何か武道系の道場は無いかと検索したところ、
自宅からわずか5分の公民館で「合気道」をやっていることを発見した。
 
「合気道か、そう言えば昔憧れたよな……」と僕は思い返していた。
それは、当時少年漫画で連載されていたSFものだった。
主人公は祖父から合気道の手ほどきを受けていて、次から次に現れる敵を合気道と不思議な力を使って撃退していく……、そんな感じの設定だったように記憶している。
 
当時の僕も、合気道については全く知識が無く、前述の「触れずに相手を吹き飛ばす」
みたいな事を考えていた。
 
近所にあるなら是非観てみなければ! そう思った僕は早速息子と一緒に合気道を体験することになった。
 
迎えてくれたのは、後に僕の師匠になる道場長だった。
簡単に体験の説明を受けて、早速合気道の技を受けることになった。
 
合気道は簡単に言うと、「自分の最小限の力で、相手の最大の弱点を突き、無力化させる」ための技術だ。
 
僕は、道場長にヒョイと片手を持たれただけで、その場に崩れ落ちた。
別に力を入れられたり、体重を掛けられた訳ではない。
本当に軽く手を持たれただけだったのだ。
 
実に不思議だったが、「痛くもないのに、力が入らない」状態だった。
僕の頭の中は「?????」で一杯になった。
これこそが「相手を無力化する」技術だったのだ。
 
その後、後ろからしがみつかれた時や、胸ぐらを掴まれた時などの状況から脱する技を紹介してもらったが、どれも同じ様に、気がついたら逆に自分が抑え込まれていた。
 
僕は、あっという間に合気道に引き込まれた。
こんなすごいものが、この世の中にあったとは、と心底感動した。
 
体験が終わって、妻に相談した上で、入会することに決めた。
息子に武道を身に着けされるというのが当初の目的だったが、気がつけば自分が夢中になっていた。
 
稽古を続けていくうちに、合気道の魅力にますます引き込まれた。
 
合気道は、人間の筋肉や関節の動きの特徴を踏まえて、効率的に相手の動きを封じるように技ができている。いわば「人間工学」なのだ。だから、手順さえ間違えなければ、誰でも片手で相手を取り押さえることができる。それに自分は全く力を加える必要が無い。
 
もう、これだけでも、男子のハートを鷲掴みだ。
 
取り押さえるだけでなく、相手を投げ飛ばす技や関節を極める技など、ゆうに200を超える技のラインナップがあり、どれも人間工学の粋を集めたような技ばかりだ。
 
更に何より僕が惹かれたのは、合気道が持つ精神性だった。
 
合気道は他の武道と違い「和合」の精神を持っている。
和合とは、「相手と仲良くなる」ということ。
 
通常、格闘技や武道は「相手を負かす」事が目的になるけれど、合気道はそれよりも「相手と仲良くなるため」のものだ。
 
今も昔もセルフディフェンスは必要だけれども、もし相手を間違って殺傷してしまったら、結局自分が罪に問われてしまう。
 
合気道は基本的に自分からは攻撃しない。あくまで受けのための技術だ。
だから、よほど使い方を誤らない限りは過剰防衛にはならない。
 
稽古もお互いで技を掛け合うが、決して優劣は競わない。
だから「一緒に稽古してお互い高め合う」事が可能なのだ。
 
いい事ずくめの合気道なのに、何でこんなに認知されないのか。
 
それは、「試合」が無いためだ。
 
空手も柔道も、試合があって優劣が決まる。
だから世界選手権やオリンピックで注目される。
 
合気道には試合がない。だからメディアに取り上げられにくい。
そのような状態が数十年以上続いているため、いわば「知る人ぞ知る」ような武道に
なってしまった。
 
合気道の良さが、却ってその存在を目立たなくさせてしまっているのは、ちょっと残念である。
 
だけど、目立たないからと言って悪いわけではない。
こんな時代だからこそ、セルフディフェンスとしても、考え方、気持ちの持ち方にしても、合気道はとても向いていると思う。
 
もし、近所に合気道の道場があるのなら、是非体験してみて欲しい。
きっと不思議な感覚を得られるだろう。
 
僕と同じ様に「強くなりたい」という心の澱をかき回されて、合気道の虜になる人が、一人でも増えることを願ってやまない。
 
 
 
 
***

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2020-06-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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