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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:神本崇聖(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「現在の時刻は、午後8:59です。 ピ、ピ、ピ、ピー、9時です」
 
実家で暮らしていた学生時代、いつも父さんの車の中ではラジオが流れていた。
 
僕の実家の車は、もう15年以上前に買った日産のキャラバン。ちなみに、内装は父さんの希望で全国の道の駅やキャンプ場でも寝泊りができるようにとキャンピングカーのように改装されている。
 
家族で旅行に行ったり、どこかに遊びに行くときは必ず、このキャラバンが僕らを色んな場所に連れて行ってくれていた。
 
後部座席の方はいつでも寝っ転がることができるし、水道や冷蔵庫、電子レンジ、コンセントの差し込み口もある。設備としては全くの申し分がないほど充実していた。
 
ただ一つの問題を除いて。
 
その問題がラジオだった。
 
当時の僕はウォークマンと呼ばれる音楽プレーヤーを愛用。いつもレンタルショップで借りてきたCDをインストールして聴いていた。毎日毎日、通学のときも走るときもずっと。
 
なのに!! あのキャラバンの中では、流行りの音楽を自由に聴く事が出来なかったのだ。
 
あそこでは、いつも面白くないラジオばかりが流れていた。時には野球中継や正月には箱根駅伝の実況など、少しは自分が興味のある内容もあったが、9割9分と言っていいほど退屈していた。
 
だから、いつもラジオが流れると車中の僕は目的地までの間を眠るという技を利用して、ただただ退屈な時間が早く過ぎるのを待っていた。
 
思い返すと、確か一度だけ、なんでラジオばかりをかけているのか、父さんに聞いてみたことがある。
 
「なんで、CDとかかけたり、iPodとかで最近の曲とか長さんのん?」
 
父さんの答えは、僕の期待したようななにか特別なものではなかった。
 
「ラジオも面白いと思うけどな、たまに音楽も流れるだろ」
 
まぁ、確かにそうだけど。あまりにシンプル過ぎて反論はなかった。
 
たまには好きな流行りの音楽を聴きたいと思っていたけれど、この車を運転してくれてるのも父さんだからいいか、ラジオが好きならそれでいいか。僕は自分にそう思い込ませていた。
 
結局、僕がマイカーを手に入れるまで、このラジオとの生活は続いた。まだラジオの良さは分かっていない。
 
そんなラジオの良さの分からない僕だったが、実は僕自身も知らないうちに、とあるラジオ番組にはまっていた時期があったのだ。
 
それが、夜の22時から始まる「SCHOOL OF LOCK!」というラジオ番組だった。校長、教頭という役割で2人のパーソナリティーが学生の悩みに答えていく番組で、この番組はあれから15年が経った今も続いている。ちょっと言い過ぎかもしれないが、とんでもなく面白い番組だ。
 
どうやら今調べてみて分かったのだが、2005年、当時15歳の僕が聴き始めた時、この番組が始まったらしい。なんだか勝手だが、不思議な縁を感じる。
 
その不思議な縁もそのはず。あれから15年が経ち、大人になった僕は朝晩必ず車の中でラジオを聴きながら通勤しているのだ。
 
あのラジオを聴き、その面白さにはまってから、僕は今何を隠そう、いっちょ前のラジオ野郎になっているのだ。
 
毎朝毎晩、ニュースはもちろん、交通情報、リスナーのリクエスト曲、主婦の小言、旦那の悪口、リスナーの投稿からのパーソナリティーによるお悩み相談、といった様々な内容で楽しませてもらっている。
 
芸能人たちの番組も「radiko」と呼ばれる無料アプリで時間が空いたときに聴いている。
 
「オードリーのオールナイトニッポン」や「JUNK 山里亮太の不毛な議論」は特に聴いているのだが、面白過ぎて1人でも笑ってしまうくらいだ。電車やバスなんかの公共交通機関の中で聴いていたら、ついニヤニヤしてしまう。完全に怪しい人だと思われてしまうくらい、非常に危険な番組だ。
 
今では、あの時に父さんが言っていたラジオの魅力が分かる。
 
「ラジオも面白いと思うけどな」
 
この言葉はとてもシンプルだ。
 
面白い、ただそれだけなのだけれども、これだけで実は僕には十分伝わっていたのだろう。
 
あれだけ退屈だったラジオを、今は最高に面白いってことを胸を張って言えるのだから。
 
そんなラジオとの出会いもあり、退屈なラジオとの時間も過ぎ、親元を離れて12年。まだ幸いなことに、両親はともに健在している。離れているとGW、お盆、正月といった長期の休みでなければ実家に帰ることもない。
 
これから先、あと何回会うことになるのかなんて分からない。「あと何回桜を一緒に見ることができるか」なんて聞いたことのある文だけれども、一緒に見る機会もそれほど多くないはず。
 
ただいつまでも、僕はラジオを聴くことはできる。
 
そして、これからもラジオがあれば、どれだけ離れていても、もしこの世からいなくなっても僕は父さんを、家族を近くに感じていられる。あのキャラバンで聴いていた、ラジオから流れてくる退屈な話を思い出し、どこか家族の暖かさを感じながら。
 
今頃気づいたのだが、ラジオは電波を繋いで、僕らに娯楽を届けてくれるだけの道具じゃなかったみたいだ。ラジオは僕と家族を、そして思い出をいっぺんに繋いでくれる丈夫な糸だったんだな。
 
カーレディオ、今日もよろしく。
 
 
 
***
 
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2020-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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