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引っ越しで発見! ラブホテルの底力

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ヨシオカ ユーコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ダンボールとホコリとゴミ袋まみれの部屋で、私たち夫婦は力尽きかけていた。
 
私は退職を機に住んでいた社宅を引き払い、離れて暮らしていた夫の家に引っ越すことになった。
引っ越し業者は使わず、家財は自家用車で自力で運ぶことにした。
 
というのもまず、社宅を出る理由が退職なので、会社から引っ越し代が出ない。3月末の引っ越しということで、引っ越し業界はハイシーズンで、料金も高い。
社宅から夫の家までは、高速を飛ばして1時間半。むちゃくちゃ遠いわけでもない。荷物も私1人分の量なので、自家用車で運べなくもない。
 
それに、夫が数年前に同じ社宅に暮らしていたとき(夫と私は同じ職場)も、彼は自分の車のみで引っ越ししたという。
「俺の引っ越しもやり切った、大丈夫だ」
そう言い切る夫を信じ、私たちは自力での引っ越しに取り掛かった。
 
さて、業者に頼まず自力で引っ越しを行う際の、主な作業は下記のとおりだ。
 
・ダンボールや衣装ケースの運搬
社宅にはエレベーターがなかったので、4階の部屋と地上の駐車場とを、階段で何往復も昇り降り。
 
・家具の解体と処分
引っ越し先の夫の家には家具家電がすでに揃っていた。そのため、布団やベッドやテーブルなど、たくさんの家具が不要になった。量が多いので、解体して車に積んで、自治体の処理場に直接持ち込むことにした。
 
・退去時の清掃
社宅なので、業者の清掃は入らない。また、冷蔵庫や洗濯機を次の入居者に設置したまま譲ることにしたので、その掃除もあった。
 
実際やってみると、夕方には全身グッタリ。特に、重たい荷物や解体した家具を担いで階段で何往復もしたことが、30代の衰え気味の肉体には大ダメージだった。
 
しかし、引っ越しは1日では終わらなかった。
荷物の積込みや家具の処分はほぼ終わった。しかし、電器屋さんによるエアコンの訪問処分と、部屋の掃除が翌日に残っていた。1日目の時点で布団を捨ててしまっていた私たちは、次の日のために、社宅以外の場所に泊まる必要があった。
 
もともと日頃から運動不足で体力のない夫に、高速で1時間半かかる家まで車を運転する気力は、もはや残っていなかった。私は運転ができない。
 
ダンボールとホコリとゴミ袋まみれの部屋で、力尽きかけた夫が言った。
「近くに綺麗なラブホあったよね……今晩、あそこで、いい?」
私は力なく頷いた。
 
いくら夫婦とはいえ、この時2人の間に、一切の性的な気持ちはなかった。
あったのは
 
「一刻も早く布団で横になりたい」
 
という一心だけだった。
 
というわけで、引っ越しでボロボロになった身体を引きずってラブホテルを訪れた私たちだったが、この選択が正解だった。
 
1:広いお風呂が貸切
引っ越しはとにかく、肉体的に疲れる。
そこでゆったり湯船に使って疲れを取ろうと思ったとき、ラブホテルのお風呂は最適だった。
家庭のお風呂より浴槽が広いので、ゆったり手足を伸ばしながら入ることが出来る。
 
広いお風呂というだけならば、スーパー銭湯でも良いかもしれない。
だが、なにせ疲れている時には、他のお客さんに気を遣わず、貸切状態でゆっくりできるホテルのお風呂が良い。ジャグジーもついているし。
 
難点は、場所が場所だけに、やたらとセクシーな色や触感の入浴剤が置いてあることだろうか。
この広いお風呂を、純粋に疲労回復のために使うなら、「疲れに効く」と謳ってある入浴剤をコンビニで買って持参するのがベストだろう。
 
2:ベッドが大きい
ラブホテルのベッドは、キングサイズでふかふかだ。おかげで夫婦2人でも、ベッドでゆったりと眠ることができた。
ビジネスホテルだと、2人部屋はせいぜいダブルベッドだが、ラブホテルならビジネスホテルのダブルと同等もしくはそれより安い値段で、キングサイズのベッドで寝ることが出来る。
 
広くてふかふかのベッドで、のびのび眠る。疲れた身体には、たまらない。
 
3:アメニティやルームサービスが充実している
寝巻きも化粧水も、もう全部ダンボールに詰めてしまった……という状況でも、ラブホテルではそれらが一式用意されている。ビジネスホテルだと、化粧水などのスキンケア系のアメニティの用意が、あるところとないところがある。
疲れて食べに行く元気がないときも、飲み物や簡単な食事が、ルームサービスで手軽にオーダーできる。
 
何の支度無しに身一つで行ってもなんとかなる。それがラブホテルだ。
 
こうして広い貸切のお風呂、大きくてフカフカのベッド、充実のルームサービスを堪能し、ぐっすり熟睡した翌朝、私たち夫婦は驚いた。
 
昨日のあの疲れが、残っていない。
 
むしろ、引っ越し1日目よりも元気かもしれない。
 
「ラブホテル、すごく疲れが取れるな」
「この設備で、ビジネスホテルと同等かそれより安いなんて、お得じゃないか」
私たちはラブホテルを大絶賛した。
 
ラブホテルは、たしかに大人のためのホテルだ。だがまさか、重労働で疲れた大人の肉体に嬉しいホテルだとは、思いもよらなかった。
一緒に行っても差し支えのない者同士であれば、友人同士でちょっとしたリフレッシュに利用するのもありかもしれない。ホテルによっては、「女子会プラン」などグループ利用のプランもあるようで、ホテル側も利用者をカップルには限定していない。
 
ラブホテルは、けして愛を確かめ合うカップルのためだけにあるのではない。
あの充実した設備は、すべての疲れた大人を歓迎してくれる。
 
 
 
 
***

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2020-06-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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