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メディアグランプリ

拝啓 岡本太郎様


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森真由子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
拝啓
 
まだ6月というのに地上では夏に近い暑さが続いております、岡本太郎様がいらっしゃるあの世の天気はいかがでしょうか。
 
こんな手紙を書いていること自体、貴方様は嫌がられるかもしれませんが、どうしても私自身のことと岡本様への感謝の気持ちを表現せずにはいられませんでした。
あくまでこちらは勝手に書いていることですので、貴方様も読むに値しないと思われましたら早々に閉じていただいて構いません。なんとも人間らしい自己満足の塊ではありますが、それを受け入れてくださるようでしたら最後まで読んでいただけますと幸甚に存じます。
 
あるなんでもない平日の昼間に、とんでもなく仕事が手につかない日がありました。ええ、サラリーマンにはよくあることだとおっしゃればその通りなのでありますが、それでも私はできるだけコツコツと働いている部類であったと自負しておりました。そんな私が、どうしても机の上のパソコンに向かうことができなかったのです。
それなりに慣れてきていた仕事でしたので、死ぬほど辛いという時期は通り越し、それなりに淡々とやるべきことができていました。しかしながら、ふと、自分はどこにも向かっていないふわふわした物体になったような気分になってしまいました。なんだか不安定で、落ち着かない。そんな感覚でした。
 
一度仕事から離れて、気分転換の散歩がてら、本屋さんへ立ち寄りました。さらっと各本棚を眺め、店内を一周し終える頃、私は出会いました。まさに人の注意を引くような真っ赤な表紙がはっきりと目に飛び込んできました。貴方様の『自分の中に毒を持て』という本に出会ったのです。近年新装版が出版されまして、貴方様のお顔写真のカバーの上に、文字だけの真っ赤なカバーもかけられるようになりました。その毒々しいほどの赤が私を惹きつけました。
一度、目に飛び込んできたものは頭から離れず、書店をまた半周してから戻ってきて、貴方様の本を購入しました。
 
自宅に持ち帰り、その晩に早速読み始めました。正直本を開く前、心臓がばくばくと鳴り、少々緊張しておりました。大変失礼ながら、私の中の岡本様はあまりにも「芸術は爆発だ」というイメージが強く、ふわふわしている自分にはパンチが強すぎるのではないかと心配をしておったのです。力強すぎて、途中で読んでいる私が力尽きてしまうのではないか、と。しかし、いざ読み始めると想像に反して貴方様の言葉はすっと自分の中に入ってきました。嫌になってしまうような激しさはありませんでした。
 
「よく世間一般では完成された人は素晴らしいというが、この世の中には、完成なんてことは存在しないんだ。完成なんてことは他人が勝手にそう思うだけだ。世の中を支配している”基準”という、意味のない目安で他人が勝手に判断しているだけだ。
ほんとうに生きるということは、いつも自分は未熟なんだという前提のもとに平気で生きることだ。それを忘れちゃいけないと思う。」
 
あー、そうか、そうだったのですね。私は岡本様の言葉で改めてなぜ自分が浮遊しているような状態になっているのか分かるような気がしました。仕事に慣れてこんなもんかなと、自分は完成しつつあると思うようになっていたのです。それがなんだかつまらなく、けれども潜んでいたやる気には行くあてがなく、ぼーっとしていたのでした。そもそも完成するという考え自体が誤っていたのでしたね。ここまででいいや、となんとなく考えてしまっていた自分をそろそろ次の段階へ持っていかなくてはいけないようです。そう思いました。
 
このように、貴方様の本には私自身と対峙できるような言葉がいくつもありました。心に残った言葉は全てノートに書き溜めています。今ではそれを定期的に見直し、私は未熟であることを振り返っています。卑屈な意味では決してなく、むしろ貴方様は未熟であることを人間らしく、素晴らしいことであると断言されています。未熟であるからこそ人は学び、前へ進み続けるのだと。それが救いなのです、私は未熟であるが故にきっとこれからも生きていくんだろうと思えました。
 
時に、己の人生と「闘いつづけることが、生きがいなんだ」というように、闘いという強い言葉も使われていました。どう感じるかは個人差があると存じますが、私にとってはそこまで激しい言葉ではなく、なんともすんなりと受け入れてしまえるような内容でございました。
 
貴方様の言葉は爆風のようなものだと思い込んでいましたが、案外そっと背中を押してくれるようなものでした。まるで後ろから吹いてくる優しいそよ風のように。
こんなことを申し上げると嫌がられるでしょうか。でもそう感じてしまったのも私という人間なのです。それも含めて人間らしいと思ってくだされば、本望でございます。
 
さて、ふわふわしていた私とは正反対に、できない自分という現実に直面してとても苦しそうにしている友がおります。未熟と感じてしまう友が自分自身を傷付けすぎず、むしろそんな己を許せるように、今度は私から友へ貴方様のそよ風を送りたいと思います。
 
それでは、天から未熟な人間たちの輝きを見てくださっていると信じて、略儀ながら書中をもちましてお礼とさせていただきます。
 
敬具
 
 
 
 
***
 
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2020-06-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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