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スクワットの先にあるもの


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記事:坂田文(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
わたしは、毎日、スクワットをしている。
と言っても、たったの10回。
調子がよければ、もう少し回数を増やすことはあるものの、「4キロのダンベルを持って、10回」が基本である。
 
スクワットを始めたのは、4年ほど前。
わたしは、とにかく身体を動かすことが苦手で、信号が変わりそうな時に走るので精一杯というレベルの身体能力しかない。
そんなわたしが、なぜスクワットを始めたかというと、その当時、とある出来事によってお先真っ暗状態に陥っていただからである。
 
その頃は仕事もしておらず、実家の一室で、
「早くここから出なければ!」という焦りと、
「そんなにすぐ変われるのか?」という不安に挟まれつつ、
それでも身体くらいは丈夫でなければ! と思い、スクワットを始めたのだった。
 
今と同じく10回を目標に始めてみた。
普段、まったく動かないわたしには、たった10回でもかなりきつかった。
それでも、続けていけば、それなりに苦ではなくなってくる。
しかも、めちゃくちゃ太りやすい体質であるわたしでも、太りにくくなっていくのが実感できるほどだった。
 
そうして、ゆるーくではあるが、身体を鍛えることに興味を持ち始め、それ以来、おしりというものに興味がでてきた。
その当時のわたしのおしりは、平らで、丸みのひとつもなく、まったく魅力のないものだった。
 
元来、着飾ることにはあまり興味がなく、お化粧などしなくてもいいものなら、できればしたくないと思っているような人間である。
今まで、おしりに手つかずだったのも、しょうがない話ではある。
 
しかしそこから、わたしのおしり人生が始まったのである。
 
おしりが気になり出すと、インターネットにあがってくるセレブリティの方々のヒップを扱った記事などが目に留まるようになる。
誰のおしりが大きいとか、形がいいとか、小さくてかわいいとかを、比較していたりする。
表現の仕方は様々だけれど、それでも、世におしり好きは一定数いるようだ。
とくに、アメリカのセレブリティの方々の、その尋常ではないように見えるおしりの大きさに、少々度肝をぬかれたりすることもある。
 
わたしには、とうてい想像もできないが、ハリウッドなどでは、整形しておしりを大きくすることもあるそうで、それはすなわち、
「おしりが大きい=魅力的」という価値観なのだろう。
 
大きなおしりといえば、大好きなビヨンセや、わたしが愛してやまない叶姉妹も、そのウエストからは想像もできないほどの、美しく立派なおしりをお持ちである。
 
そうして、おしりが常に頭の片隅にある生活を続けていたある日、自転車に乗ったわたしは、とあるパン屋さんの前を通った。
そこには、お母さんに手をひかれた3才くらいの男の子が、ショーケースを手でぺたぺたと触りながら、その中に丁寧に納められたパンを眺めていた。
 
自転車で走りながら、わたしは思った。
「あー、あのオムツをした、おっきいおしりがかわいいんよねー」
 
……
 
おっきいおしりがかわいい!?
そして、気づいた。
おしりが大きいということは、魅力的なのだということに!
たとえ3才児であったとしても!
 
途端に、
「おしりが大きい=魅力的」
という方程式が、再びわたしの頭の中に浮かび上がった。
3才児も一緒なんだ!
 
ハリウッドのセレブリティの方々のレベルのおしりは、他人から見れば受け入れにくいこともあるけれど、それでも彼女たちは大きなおしりを選ぶ。それは、自分がさらに魅力的になることを求めているからだ。
それに引き換え、子どもは無意識である。それでも、あのオムツでふくれた大きなおしりによって、例えどんな性格をしていようが、愛おしく思わずにはいられないものへと、その存在は昇華される。
 
人々は、その大きなおしりを、魅力的で愛おしいと思ってしまうということなのだ!
 
そう。
わたしは、4年前にスクワットを始めたあの頃、家族であった人と別れることになり、人間関係というものに、非常に自信をなくしていた。
部屋に1人閉じこもり、誰とも話す気になれずに、それでも誰かからの愛情を求めていた。
 
だから、スクワットを始めたのか!
大きいおしりで魅力的になることで、愛情が欲しいとアピールしたかったのか!
そう思うと頭の中はクリアになり、妙に納得したのである。
もちろん、スクワットを始めた当時、意識的にそんなことを考えたことは一度もなかったけれど。
 
おしりが大きくなることで、自分のことを愛おしく思ってくれる存在が現れるかどうかは別として、それでも自分のボディラインが理想に近づけば自信もつく。
すると、積極的に人と関わることもできるようになる。
そして、人と関わる機会が増えれば、愛情に触れられるチャンスも必然的に増えていくだろう。
 
こうして自分の中の、おしりへの情熱を再確認したわたしは、今日もまたスクワットをする。
10回だけ。
 
すべては、理想のおしりのために。
そして、愛情という世界に生きるために。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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