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日本の夏に氷点下近くになる唯一の場所


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記事:石川祥一郎(ライティング・ラボ)

 

「先輩決断早すぎますよ(汗)」

気温の上がり出した大学4年の7月、4つ年下の後輩とメールのやり取りをしていた。
浪人を経て大学生になった彼に「大学どう?」といった趣旨のやり取りをしている途中に、私の学生最後の夏休みは大きく変わることになる。

非常に些細な小さなことが様々な要因を引き起こし、だんだんと大きな現象へと変化することをバタフライエフェクトと言のだが、後輩とのメールのやり取りという些細な日常がのちの大きな非日常のきっかけとなり、まさに私にとってのバタフライエフェクトとなるのだった。

メールの途中に1枚の写真が送られてくる。
なにやら山登りの格好をしている人が大勢映っている。

写真の次に「この前友達と富士山登ったんですよ」とニコニコマークの顔文字と共にメールが来た。
大学1年目にしてはアクティブな休日だなーと思っていると、私の頭の中でなにかが弾けた。
(それだ!)

私は、富士登山の話を後輩にメールのやり取りのなかで色々と聞くことと同時進行で

東京にいる姉に

「富士登山にいこう」とメールを送っていた。

姉もけっこう前から富士登山したいけど一緒にいく人がいないとぼやいていたので丁度よかった。

元々8月から上京して東京見学をする予定だったこともあり、滞在期間にお互い日程の会う日に山小屋を予約した。

後輩から富士登山の話を聞いて、山小屋の予約までにかかった時間は半日もかからないくらいだった。

そういう状況もあってメールのやり取りの途中で「山小屋予約した。富士登山してくる」と
メールを送ってからの返事は当たり前だが

「先輩決断早すぎますよ(汗)」

だった。(当然か)

こうして、ほぼノープランで東京の珍しいところを見て回ろうくらいのテンションだった私の夏休みの上京プランに、日本一の山に挑戦するという企画が加わってしまった。

 

富士登山当日、転がり込んでいる姉のマンションから電車に乗り、富士山へ向かう。

電車を乗り継ぎ、バスを使えば5合目まで行くことができて、
5合目から山頂まで登るのがノーマルな富士登山のやり方らしい。

バスで5合目まで向かうまでは周りに緑が多くいのだが、5合目から先は緑がほとんどなくなる。
バスを降りると、東京の街の灼熱の暑さがウソのように涼しさを感じる。

5合目は登山客が多く、観光地としてお土産屋さんや、食堂のようなものもある。
どことなく賑やかな城下町のような雰囲気を感じる。

少し休んで移動の疲れを取り、登山道へ向かう。

ここから山頂まで長い旅路が始まる。

5合目から8合目までは昼間ということもあり、気温の変化も緩やかで、比較的に登りやすかった。

6合目くらいから目線が雲と同じ高さになるので、目に映る風景はどこか幻想的に感じる。
7・8合目と高くなるにつれて、雲が自分の下に見えるようになってくる。

幼稚園や小学生の時に見たアニメなどで雲の上に乗ったり、雲で綿菓子をつくるという表現が多かった記憶があるが、実際は上に乗る事も、食べることもできない。

それでも実際に雲と同じ目線に立ったり、雲を上から見るという体験や風景は当時見ていたアニメが抱かせてくれた雲へのイメージ以上の物を与えてくれる。

山小屋に夕方に到着する必要があったので、時間を気にしながら登っていたが、ロスは無く山小屋まで行くことができた。
山小屋は、夕方にチェックインして、仮眠を取り、夜中に登山を再開するというのがポピュラーな利用方法だ。
これは日の出の時間を山頂で迎えるためだ。

人によっては夕方くらいから登り始め、ノンストップで山頂まで行き、日の出を見る人もいるが、たいていの登山ガイドは高山病等のリスクを抑えるためにも山小屋でワンクッション入れることを勧めている。

割り振られた部屋で仮眠を取ろうとするが、なかなか寝ることができず、登山を再開することになった。

ここから段々過酷になっていく。

気温が一気に下がり、真っ暗になっているのでライトが必要になる。

登山の疲れ、急変する気温や酸素濃度に対応することの疲れ、冷たく強い風、色々なものが山頂に近付くことに比例して襲ってくる。

水分補給や、こまめなエネルギー補給、休憩を挟みながら二人で登山を続けていく。

そして、深夜早朝4時半ごろだっただろうか、ついに山頂に到達する。

まだ暗く、気温は氷点下に近い。

登って終わりでなく、日の出まで20分ほど待つ必要があり、氷点下の中20分じっと待っているという最後の試練が残っていた。

震えながら待つこと20分。

空がだんだん明るくなっていく。

山頂にいた多くの登山客の目が東の空に集まる。

光が雲の上に出る。

日の出だ!

今までの疲れが吹き飛ぶような高揚感が湧きあがる。

自分と同じ目線の高さに太陽がある。
こんな非日常は今までなかっただろう。しばらく日の出に心を奪われ、うっとりとしていた。
数時間のことであるが、苦しかった道中のことを思い出す。

日の出を写真に収め、山頂での記念撮影を姉とした後に帰路についた。

日の出の写真を最初に送ったのは、今回のきっかけをくれた後輩だった。

一緒に登った姉は、富士登山後に仕事運が上がったと連絡をくれた。
おそらくその富士パワーは今でも続いている。

 

私も富士登山後からしばらく経つが、良いことは色々あったように感じる。

もし天狼院の旅部で富士登山が今後あるようなことがあれば、
私は2度目の富士登山挑戦を決心しようと思う。

 

***
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