歴史が教えてくれたこと
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記事:佐々木 慶(ライティングゼミ・日曜コース)
「もっと勉強しないとだめだよ」
大学の日本史ゼミの教授が発したその声は、私の頭の中を何度もこだました。
え、まさか、自分がこんなことを言われるなんて。
耳を疑った。
思えば、幼い頃から歴史が好きだった。
きっかけはたぶん父だ。
幼いころの私は、父と一緒にお風呂に入ることが多かった。そして、その度に父は私にクイズを出題してきた。
しかし、ただのクイズではなかった。
出されるクイズは、「鎌倉幕府を開いたのは誰か?」、「金閣寺を建てたのは誰か?」、「関ヶ原の戦いが起こったのはいつか?」といった日本の歴史に関わるものばかり。
父は、自身が子どもの頃から歴史、特に日本史が好きだった。
そして、子である私にも日本史に興味を持ってもらいたくて、私に日本史クイズを出していたらしい。
当時の私は、父のそんな思惑を全く知らなかったし、そして無邪気だった。
一つでも正解して、父に褒めてもらいたい。そんな一心だった。
はじめこそ問題の意味が分からなくて外れてばかりだったが、何度も同じクイズを出されることもあって、だんだんクイズに正解するようになってきた。
むしろ、気付いたら、私が父に対して日本史クイズを出題するようになった。
私がクイズを出題したときの父の笑顔が今でも忘れられない。
そんな父は、ある年のクリスマス、私にプレゼントをしてくれた。
プレゼントの中身は『小学館版学習まんが 少年少女日本の歴史』。
日本のいろいろな時代の出来事や人物について、漫画形式で紹介されている本だった。
日本史クイズの影響で、既に日本史に興味を持っていた私にとって、このプレゼントはまさに宝物だった。
次の日から、私はこの宝物をむさぼるように読みまくった。
こうして、私は日本史が大好きになった。
そんなこともあってか、小学生の私は教科の中でも一番得意な教科は「社会」だった。
この当時、クラスの友人からつけられたあだ名は、「歴史博士」。
卒業アルバムの撮影の時は、日本史の本を片手に持った姿を写真に撮ってもらったくらいだ。
中学生、そして高校生の時には日本史好きにさらに拍車がかかった。
中学生の時は、家にあった父の持っていた日本史の本や、学校の図書館にあった日本史に関する本を読みあさった。
高校生になると、それでは飽き足らず、日本史に関する本を買うようになった。
高校の近くにあった本屋に定期的に通っては、気になる本を少ないお小遣いをやりくりし、片っ端から購入した。漫画、新書、小説、ジャンルは特に問わなかった。
高校へは、電車で一時間くらいかかったので、その間は購入した本を読む時間に充てた。
高校三年生になって、いよいよ志望校を決める時がやって来た。
私は担任に先生にこんなことを言っていた。
「大好きな日本史を勉強できる学部がある大学に入りたいです」
そして、受験勉強の結果、無事に志望していた大学に合格。
これで、日本史を専門的に学べる。一体どんなに楽しいんだろう。
私の心は希望に満ちあふれていた。
そして、私が所属したのは、日本研究専攻という学科。
名前が示すとおり、この学科は地理学、歴史学、経済学、社会学といった様々な分野から日本について学べるのが特徴だった。
入学してまもなく、希望する分野の調査が行われたが、選んだのはもちろん歴史学。
日本史をさらに勉強したかったから、迷いなんてなかった。
ここからが、私にとって苦難の始まりとなるとは夢にも思わなかった。
歴史学の授業は、確かに面白かった。知っていたはずの歴史上の出来事や人物に対して、高校の時よりも詳しく知ることができた。
知識がさらに深まっていくのが楽しかった。
しかし、ある壁にぶち当たったのだ。
ゼミという授業形式だ。
これは、授業や講義のように教授の講釈を一方的に聞く形式と異なり、ある一定のテーマに関して報告、そして議論を行う形式のものだ。
クラスメートが積極的に自分の意見を発言する中で、私は意見を発することができなかった。
「もっと勉強しないとだめだよ」
そんな状況を見ていた、ゼミの教授が私にこんなことを言ってきた。
「いやいや、勉強はしております。そのテーマについては授業の前に予習していますし」
小学生の頃からずっと日本史が好きで勉強をしてきたというプライドが私を食い下がらせた。
そんな風にムキになっている私に対して、教授はさらにこんなことを言った。
「高校までと違って、大学では自分の意見を持って学ばないとだめなんだよ」
「それに、研究の結果、今までの学説から変わったりすることもよくあるんだよ。だから、意見には間違いなんてないんだ。自由に討論していいんだよ」と。
私ははっとした。
今までの私は、教科書や本に書いてあることをただ覚えれば良いと思っていた。
知識さえ頭にたたき込めばいい点数も取れるし、先生からの評価も高くなるだろうと思っていた。
たしかに、知識を頭に入れることが大事だ。知識がある程度なければ意見を言うことはできない。
しかし、それだけではだめなのだ。
今分かっている情報は一方向から見たものに過ぎないのだ。今分かっている知識から何を学べるか、どんなことが考えられるかが大事なのだということを教えてもらった。
それからというもの、ただ書いてあることを盲進することはなくなった。
どんなに自分の意見が稚拙な意見であっても、積極的に発言するようになった。
すると自然と、クラスメートの意見も素直に聞けるようになった。
これは歴史に限らず、普段の生活でも言える。
世の中に溢れているいろいろな情報。
その情報は、情報のうちが正しいのか、そこから自分はどう考えるかが大事ということを教えてもらった。
こんな大事なことを教えてくれた歴史というもの。
きっと、一生の付き合いになるだろうな。
***
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